25.セルブルグ市観光
アントギール市を出発した俺たち一行はセルブルグ市に着いた。ここには花の庭園と呼ばれる丘の庭園に四季折々の花が植えられているそうである。しかし、今は3月とてもじゃないが花なんて咲いていない。素通りするのかなと思ったら、商談があるとのことで、ここでも2日間過ごすことになった。
暇である。もう教会や尖塔には登る気がしない。花の都と言っても、花が咲いていないなら見る物がない。宿で寝て過ごそうとしたら、無理やり市内観光に連れ出された。
花の庭園は花だけでなく、美術館や図書館、博物館などがあるとのこと。全然興味がわかない。唯付いて行くだけである。市内を一望する場所に来て、
「いい景色ですね」
「そうですね」
感情のこもっていない返事をしておく。宿で寝ていようとしたら連れ出された。せめてもの抵抗である。
その後俺たちはドラゴンプラス広場に行った。ここは市役所の前の広場である。周りを荘厳な建物が囲っている、見上げると首が痛くなる。その首が痛くなる市役所の塔のてっぺんにはこの広場の名前になったドラゴンの像があるそうである。うーん。すこしちがったか。
「ツェーザル様、何聞いているのですか、ドラゴンの像ではなくて、ドラゴンを倒した英雄の像ですよ」
「おかしいと思ったのだよ、ドラゴンの像なんて始めてだと思って。ドラゴンを祭るなんて、不思議な都市もあるものだと思ったのだけど」
やはり、ドラゴンは倒されるもののようである。そして、ここにも英雄がいたのである。そうしたら、マルテが
「違うぞアライダ、英雄じゃなくて天使の像だ」
「そうなのですか。私もツェーザル様のこと言えませんね」
「そうだ、説明は最後まで聞かないといけない」
「でも、こう高いと、そのてっぺんなんて、よく見えませんね」
「確かに、天使の像かドラゴンの像かなんて、下から見ているとわからない」
「だからと言って、間違えるのはよくない」
「はいはい、わかりました」
ここまで聞いて、ますますわからなくなった。神はアントリーペン市では巨人を倒すのに勇者を召喚し、ここセルブルグ市ではドラゴンを倒すのに天使を差し向けた。天使を差し向けることが出来るのなら勇者を召喚する必要はないのではないか。
俺はやはり、何もしなくてもいいのだ。この世界を旅して気ままに暮らすそんな未来が見えるような気がする。今日はいい日であった。このまま、肉食獣の目を避けて、気ままな旅をする。まかり間違ってもどこかの貴族家に婿に行くようなことはしない。
金なら、明かりの魔道具の収益がある。足らなければポーションも作り放題である。それから、帰ってからの話であるが、今回の旅で作った、リバーシ、五目並べ、ところてん、豆腐、これはいいとして、馬車の振動を軽減する装置、それと一番問題なのは船のスクリューである。ブルヘンジュ伯爵は本気のようである。あれを工場を作って量産化するのは骨の折れる問題である。多分あの魔法陣は俺以外作れない。父に話をするのいやだな。
何となく重い雰囲気で宿に帰った。
「次の日こそは、宿でふて寝だ」
と言ったのだが、
「そんな、爺臭いことでどうする。私たちは若いのだ」
と言って、次の日も出かけることになった。
前世のことは何歳まで生きたかは分からないけど、「前世の年齢も足せば、俺は爺だ」と思ったが、それは言わないことにした。
「もう教会も尖塔もいやだ」
と言ったら、
「名物料理を食べよう」
ということで、市内の食事処巡りをすることになった。しかし、この都市のことはよく知らない。どこへ行けばいいかわからない。
こういう時、商人はすごい、アンナの父親が取引先の商会の人に頼んでくれた。その人の紹介で市内の美味しい食事処へ案内された。
出てきた料理は、ムール〇の〇ワイン蒸し、この地方の名物料理とのこと。あとは、カル〇〇ナード、 牛肉の料理だそうだ。ワッ〇〇、説明は聞いていない。それ以外にも色々あった。すべて美味しかった。満腹である。
「腹が張って動けないから、このまま寝ていたい」
と言ったら、
「次のお客さんに迷惑だから」
と追い出された。
美味しい店にはいっぱい客が来るようである。




