24.再び馬車の旅(帰路アントギール市観光)
昨日までで、ブルヘンジュ市への観光は終わり。今日からは伯爵邸を後にしてまた馬車の旅である。行きは北側の街道を通ったが、帰りは南側の街道を通るそうである。そこでも商談があるとのこと。商人は大変である。遊びの俺達とは違う。朝、伯爵邸へアンナの父親の商隊が迎えに来た。
伯爵家の当主様、夫人そしてアンネリースに謝辞を述べた。すると当主様からは
「王都に行ったら、魔道エンジンのことで、公爵家を訪問させてもらいます」
うーん、忘れていなかったのだ。ややっこしいことになったな。
「父にも、伯爵様のことについて話しておきます」
とりあえず、無難な返事を返しておく。
伯爵夫人からは
「ほんとに将来は商人になるの」
「はい、私の夢ですから」
「アンネリースはどう」
「まだ、結婚とかは考えていませんので」
まだ捕まる訳にはいかない。ここは逃げの一手である。
アンネリースからは
「もう少し体を鍛えてね。教会の鐘楼に登っただけで、足が痛くなるなんて」
「気が向いたら、鍛えます」
俺は脳筋ではない。あんな300段以上もあるような階段。無理。前世だとエレベータである。
こうして、別れを惜しんだ後、伯爵邸を後にした。なぜかマルテも一緒である。理由を聞くと
「あのまま、母上と一緒にいたら、今度来た子のうちどの子が本命だとか聞かれて、ほっておくと、知らないうちに婚約してしまっている。とにかく、母上は強引なのだから」
中々良家の子息は大変なようだ。他人事に思っているツェーザルであった。しかし、この会話に聞き耳を立てている女子が7人いることを忘れてはいけないのである。ツェーザルは狙われているのである。
また再び馬車の旅である。そして、一行はアントギール市に着いた。ここはこの地方を治めるアントギール伯爵の居城があるが、俺たちは居城は外から見るだけで終わった。伯爵邸を訪ねると後がややっこしい。
この都市はかなり歴史があるようで石造りの建物が多く、重層な趣がある。そして、厳粛な雰囲気が伝わってくる。アントギール伯爵家はこの国でも名家である。そして歴史がある。
この都市も毛織物工業が盛んであるようだが、ここでは特に花嫁用の織物で有名とのことであった。
ここにも教会の鐘楼があったが俺は登らなかった。みんなが下りてくるまで下で待っていた。その後、大聖堂を見学に行った。ここでは俺は敬虔な信徒である。もう神をけなして罰を受けるようなことはしない。
「ただ、この世界が平穏でありますように。まかり間違っても俺に神の啓示などありませんように」
そう祈った。
なんせ俺はヒーローに憧れて挫折した人間。そして俺のスキルは、昼行燈と甘美の香り、とても戦えるようなスキルは持っていない。
その後は聖堂の絵画を見学したが、俺は絵に興味はない。ただ時間が過ぎていくのを待つだけである。その後は広場で昼食である。やはり昼食は串焼きに限る。その後、近くの広場で市が開かれているというので行ってみることにした。するとそこにも英雄の像があった。
こう至る所に英雄がいると、俺以外にも転生者がいるのであろうか。よくわからん。しかし、重ねて言うが俺は英雄にはなれない。俺は攻撃用のスキルは何一つ持っていない。英雄は転生する時に神に会った人がなるもの、決して俺はなれない。
それはそうと、俺が静かに感慨にふけっていると、周りで注意を引こうとする女学生をどうにかしてほしい。俺の昼行燈が消えそうである。
市で見かける商品を手に取って
「これ私に似合うかしら、ツェーザル様どう思います」
「アライダは美人だから何んでも似合うと思うけど」
「美人だなんて、ツェーザル様はお上手なんだから」
と言って、顔を赤らめている。すると近くで他の女学生が黒いオーラを出している。難しい。一人を誉めれば、他の人に怒られる。こういう時は昼行燈全開、空気になることに尽きる。しかし、一度狙った獲物はあきらめない。肉食獣の猛攻は続くのであった。
いつも「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」をお読みいただいてありがとうございます。
明日から公開時間を18:30から16:00にします。




