23.ブルヘンジュ市観光(5日目調理実習)
「今日は料理を作る」と言って、料理場にこもることにした。普通貴族は料理はしないそうであるが、将来は平民になって諸国を旅する俺には必須である。ほかの貴族の学生は町へ買い物に行くと言って出かけて行った。俺は伯爵邸から出ないからと、護衛もその連中に付いて行くように言ったが1人だけは残ることになった。
アンナとリズはまた新しいものを作るのではと興味深々で俺の側にいる。
「なあ、お前らも、街へ買い物に行けばよかったのに」
「そんなわけにはいきません。ツェーザル様がまた新しいものを作ったら、ぜひうちの商会で販売させてもらわないといけないのですから」
うっとうしい。女子が近くに来ると手が止まる。そこでいいことを思いついた。まず最初に昨日リズが釣ったタコを料理することにした。タコはあの後、壺に入れて持って帰って来た。ついでに海水も入れてきたので、まだ生きている。タコを取り出して、料理しようとしたら、調理場の調理人が、騒ぎ出した。
「そんな不気味な物、ここで料理しないでほしい。もしこれが伯爵夫人に知れたら、もう料理を食べてくれなくなる」
結局調理場を追い出された。
仕方がないので、庭に行った。そこで、土魔法でかまどと調理台を作った。3月である、さすがに屋外は寒い。周りに壁を作って、風を防いだ。そしてまな板を出して、タコを料理しようとしたら、危機感を覚えたタコが逃げ出した。
アンナとリズに
「逃げ出したタコを捕まえてくれ」
と言ったが、無駄であった。
「いやー、こっちへ来ないで」
アンナとリズは、タコを捕まえるどころか、タコから逃げ出した。
やっとの思いでタコを捕まえた。そして頭にきたので、水で洗って汚れを取って、そのまま鍋の中に入れた。そして、ふたをして下から火であぶった。しばらくしたらゆでだこが出来た。
最初の予定とは少し違ったが、これはこれで良しとした。
酢でもあれはタコの酢の物が出来るのだが、この世界に酢はないようである。そこで、タコを小さく切って、昨日取ったわかめといっしょにタコとわかめのお吸い物にした。これだと塩を適当に入れるだけである。そうして、タコのお吸い物を作ったのだが、アンナもリズも食べようとしない。
「美味しいぞ、どうだ」
「いらない、あんなにグニャグニャ動いていたものを食べるなんて、無理」
仕方がないので、そばで見ていた護衛に
「お前もそんなところで突っ立っていないで、これを食え、美味しいぞ」
しかし、無視である。顔が全力で拒否している。
「美味しいのになあ。誰も食わないのか。仕方がない、残りはマジックバッグに入れて、公爵邸に帰ってからみんなにふるまうとしよう」
次は昨日取った海藻から、ところてんを作ることにした。海藻をゆでて溶かしてできた寒天質の物をそのまま容器に入れて放置。あとは冷めて固まるのを待つだけ。
ところてんが出来るまで、暇なので、次は豆腐を作ることにした。まず、にがりを作ることにした。昨日汲んできた海水をマジックバッグから出して鍋に入れた。それを火であぶって、水分を飛ばしていった。すると塩の結晶が出来てきた。塩の結晶を取り除いて、にがりを作った。
次に、大豆をつぶして火にかけて絞って水分を取った。そして先ほどのにがりを加えて固めた。こうして豆腐の出来上がりである。
豆腐が出来上がるころには、先ほどのところてんも固まってきたので、包丁で細かく切って短冊状にした。ところてんと豆腐はアンナとリズも食べられるようである。ついでに護衛にもあげた。今度は食べてくれた。タコはこの世界の人間には受け入れがたいようである。
このところてんと豆腐も登録することになった。アンナとリズの俺を見る目が何となく、そう何となく不気味な気がする。




