22.ブルヘンジュ市観光(4日目海岸の散策)
前日は伯爵様に魔道エンジンのことを色々聞かれた。俺は「たまたまできた、内容は分からない」と言って逃げた。多分あの魔法陣はこの世界の人間が見たら内容が理解できないと思う。魔力をいきなり回転エネルギーに変換しているので、前世のモーターとか電気とかの知識のない人間にはちんぷんかんぷんだと思う。だから、「たまたまできた、内容は分からない」と言ってしまえば、それ以上は詮索できない。
そういうことで、魔道エンジンの話は無理やり切り上げた。伯爵様は、
「あのエンジンを鑑定のできる人に見てもらって研究する」
と言っていた。
「ご自由にどうぞ」
と俺は言った。
しかし、魔道エンジンの魔法陣は新しい魔法陣ということで登録することになった。同様にスクリューや舵と舵輪についても商業ギルドで登録された。特に船底に穴をあけて船を動かす動力を設置するというアイデアは画期的ということで、そこから水が漏れにくくする方法も登録された。
次の日は、造船所に行きたくなかったので、
「海を見てみたい」
と言って、海岸にやってきた。
さすがに春先とはいえ3月の海岸はまだ寒い。海風が吹てくると、身体が縮み上がる。浜辺には海藻が打ち上げられている。打ち上げられた海藻を鑑定をかけながら食べられるものをマジックバッグの中に入れていく。
すると女子が
「ツェーザル様、何をしているのですか」
「食べられる海藻を集めているのさ。明日料理して食べようと思って」
「せっかく海に来たのに、海藻集め以外に何かないのですか」
「そういうことはマリテやアンネリースに聞け。地元の人間なら何か面白い遊びを知っているだろう」
「マルテ様、この時期に海でできることって何ですか」
「この時期にできることは釣りだな。向こうに磯があるので、そこならいろいろな魚が釣れる」
ということで、俺も釣りに付き合わされた。俺だけ、別行動だと護衛が分かれることになるので、危険だとか。仕方がない、付き合うことにした。
素人が釣りをしていきなり大物が釣れるはずがない。大抵は毒のある魚かあまり地元が食べない魚が釣れる。俺は釣りに興味がないのだが、学生さんはそれでも、釣れると面白いようで、何か釣れるとキャッキャ言っている。そうしたら、タコが釣れた。
これを見て俺が、
「おいしそうだ、今晩のおかずにしよう」
「えー。こんな気持ちの悪い物、食べるのですか」
「なあ、マルテ、お前らだって、これ食べるよな」
「そんな気持ちの悪いもの食べませんよ。地元の漁師は罰の代わりに食べさせられる時もあるそうですが」
「じゃやっぱり、食べるのじゃないか。食べても死なないということだ。おいリズ。それ捨てるなよ。俺が食うから」
俺はルンルン気分でタコをもらった。
そうやって、磯で海岸の遊びを堪能していたのだが、いきなり大波が来た。俺は、とっさに結界を張った。ついでに、みんなのところにも結界を張った。それで波を防いだ。それはいいのだが、結界魔法を人に見られた。でも、誰がしたかはわかないはずである。俺はとぼけることにした。
それでなくても、最近は、色々やり過ぎて、俺の株が上がっている。その上、結界魔法まで使えるとわかれば肉食獣の目が怖い。俺はヒーローに憧れて挫折した人間。そして、将来スローライフを送るのだ。こんな所で捕まるわけにはいかない。
「急に、波が来て、急に波が跳ね返ったような気がしたのですが」
「さあ、よくわからない。俺も波はかからなかった」
「マルテ様、波って、急に来たりするんですか」
「そうだな、波はほんとうに急に来て、びっくりすることがある。でも、来た波が跳ね返ることはあまりないかな」
「そうですね、不思議ですよね」
俺を見る目がきついが、俺は何も言わない。言えば墓穴を掘るような気がする。俺の第六感がそう告げている。ここは我慢である。しかし、女子も今回はやけに粘るな。ほとぼりが冷めるのを待つツェーザルであった。




