21.ブルヘンジュ市観光(3日目船の改造)
今日は朝から船の改造である。造船所の一角に船が用意してあった。
用意してもらった船は全長17m幅4.5m深さ1.7mほどの小さな船である。前世の記憶だと、これくらいの船に乗って沖合に魚釣りに行った記憶がある。しかし、船酔いして自分で撒きえをしたように記憶している。
まずスクリューの製作にかかった。スクリューの材質はさびないためには銅がよかったが、近くにある材料では木しかなかったので、木製とすることにした。木を削って、4枚羽のスクリューを作った。しかし、何となく壊れそうな気がする。
スクリューの破損対策として、何かいい方法がないかなと思ったが、中々思いつかない。強化魔法でも付けられればいいのだが、ダメもとで、スクリューに強化魔法をかけた。すると、なぜかスクリューが薄く光って魔法がかかった。鑑定すると「スクリュー、材質強化済み」と出た。さすが異世界。なんでもありだと思った。
さすがに、スクリューの軸は木製では強度が心配なので、鉄にしようと思ったが、やはり、鉄では錆びると思ったので、俺の土魔法でクロムを加えてステンレスにした。
次にスクリューの後ろにつける舵を作った。これも木製である。そして強化魔法をかけた。
船の後方の船底に穴をあけたら。周りに驚かれた。
「船は自由にしていいと、伯爵様の許可はもらっています」
と言ったが納得してくれない。
「船底に穴なんて空けたら、水が入って来る」
と言って、なかなか納得してくれない。
すると、これを見ていたマルテが
「ほんとに大丈夫だろうな」
「大丈夫だ、うまくいかなかったら、俺がこの船を買い取る」
「そこまで言うなら、好きにしていいよ」
やっと納得が得られたので作業再開である。船底にあけた穴にスクリューの軸を通し、その後ろに舵をつけた。
次に船底に入って、船底の穴とスクリューの軸の間の隙間にボールベアリングを設置して、摩擦を少なくすると供に止水のためにグリスを注入していく。
次に俺の土魔法で鉄を加工して作ったギアを軸につけていく。そして、問題の動力部分、そこは回転の魔法陣を幾重にも重ねて作った。魔法陣の重ね掛けで出力を上げていく。これに魔石をつないで魔道エンジンの出来上がり。
魔道エンジンで作った回転を途中のギアで適切な回転数に変換して、スクリューを回す。一度、魔石をつないでスイッチを入れてみた。するとスクリューが回り、心地よい風が吹いてくる。なお、魔道エンジンの出力も操作できるように、重ね掛けしてある魔法陣に流す魔力の量も操作できるようにした。
次に舵をロープでつないで、操縦室の舵に連動させた。ついで、舵も舵輪した。これで、前世の遊漁船に少し近くなった。
ここまでして、水の上に浮かべてみたくなった。
「これを水の上に浮かべてみたいのですが、手伝ってももらえますか」
「本当に沈まないのだな」
「止水はしたので、沈まないと思います。水が入ってきたら僕の魔法で掻き出します」
「わかりました」
ということで、そこにいた作業員が船を動かすのを手伝ってくれた。そして、水に浮かべた。結果から言うと船は沈まなかった。少し水は入ってくるが、問題ないぐらいの量であった。
「だから言ったでしょう。沈まないって」
「でも、明日来たら沈んでいるなんてことはないでしょうね」
「それはないと思うけど、もし不安なら今日帰るときにまた陸へ上げればいい」
「そうします」
早速、試験航海である。これには作業を見ていた学生全員が船に乗った。護衛も乗った。これって定員オーバーじゃないかな。作業を見ていた人も乗りたがったが、学生と護衛だけで17人である。丁重にお断りした。
魔道エンジンを始動してみる。スクリューが回り始めて船が動く。
「船が動いた」
感動の声が聞こえる。晴れやかな気分になる。
「どうだ、俺の実力は。ざっと、こんなものよ」
「スピードを上げるから、ちゃんとつかまっていてよ」
そう言って、魔道エンジンの出力を上げる。すると、最初はゆっくりだった船が段々とスピードを上げ始めた。たぶん時速20ノット、時速37kmぐらい出ていると思う。
マルテが
「こんな早い船は初めてだ」
「普通の帆船はどれくらいのスピードなの」
「普通の帆船は、風向きにもよるが、時速5ノット、時速9kmぐらいだ」
「この船はずいぶん早いね」
その後、造船所に戻って、船を陸に上げて、この船をどうするかが問題になった。こんな早い船、盗まれたら大変なことになる。伯爵様の判断を仰ぐことになった。伯爵家の人間に伯爵様を呼び行ってもらった。しばらくして、伯爵様が来たので、もう一度船を走らせた。
結局、船は、伯爵家の軍艦と一緒に軍が管理することになった。そこにいた作業員には口止めがされた。たぶんこれを作れるのは今ところ俺だけである。伯爵様は伯爵家の軍艦にこれと同じものを設置してほしそうであったが、
「今後の扱いは、伯爵家と公爵家で話をしてほしい」
と俺は逃げた。




