2.入学試験
この国では、貴族は12歳になると3年間学院に通うことになる。王族や上級貴族は無試験で入学できる。ただしクラスは成績順である。また、それ以外の貴族は試験を受けて合格しないと学院には入学できない。この試験は平民にも開放されており、裕福な商人の子弟などは数は少ないが毎年一定数が入学してくる。
家庭教師も付けていないので、心配した公爵は、上の兄や姉たちが使っていたテキストを事前にツェーザルに与えていたが、どうなったのか。とにかく、ツェーザルが何も言ってこないので、どれくらい勉強が進んだのかわからないのである。そして、その時は憶えているのだが、しばらくすると何故かそのことを忘れてしまうのである。そして、ツェーザルが気にならなくなる。不思議である。
そして、ツェーザルが人前で魔法を使うところを見たことがない。これも不思議であった。普通魔法が使えると親に報告してくるものだが、少なくとも上の兄や姉たちは初めて魔法が使えた時は嬉しそうに報告に来た。しかし、ツェーザルは報告に来なかった。スキルが生活魔法だけといっても、簡単な魔法ぐらいは使えるはずであるが、家族の者もこの屋敷のメイドや執事もツェーザルが魔法を使うところを見たことがないというので、魔法は使えないのかなと思ってしまう。そしてこれもすぐに忘れてします。
とにかくツェーザルは不思議な子供であった。
今日はツェーザルの入学試験の日である。公爵家の三男なので、家名を書けば合格できたのだが、将来スローライフを送る予定のツェーザルは家名を書かなかった。平民枠となると学院への寄付金は要らない。その分は将来の餞別に加えてほしいと願書を出すときに強引に父親と交渉したのであった。
父親に
「もし、合格しなったら、どうするのだ」
と言われたので、
「その時は廃嫡にしてくれればいい」
と言った。
いつもぼーっとしている、ツェーザルがあまりにも強引に、そしてしっかりと言うので、父親も思わず引いてしまって、
「そこまで言うのなら好きにしろ」
と思わず言い放ってしまったのである。
学院の試験は2日間にわたって行われる。1日目は午前中が国語、数学、魔法理論、外国語の4教科、午後が地理と歴史、貴族の常識、法律の3教科、2日目が魔法か剣術の実技である。なお、2日目の実技で高得点を出した人は優遇される。
また王族、公爵家、侯爵家、伯爵家の人間は試験の結果によらず入学できる。ただしクラス分けは点数次第なので点数によっては最底辺のクラスになるかもしれないのである。その場合、多額の寄付金を求められる。
ツェーザルは入学の願書に家名をかかなかったので試験会場は平民と同じである。
1日目の午前中の国語はスキル言語理解を用いて、完璧にできた。また、数学も前世の数学からするとやさしすぎる。これも完璧である。魔法理論、これは前世のラノベの知識とスキル鑑定を併用してほぼ完ぺきである。また、外国語、これはこの大陸のほぼ共通語となっている帝国語の試験である。帝国語はツェーザルの生まれたライラント王国の言葉と似ているが、単語や形容詞が少し違っている。帝国語が、元の言葉とするなら、ライラント語はその方言の様な物である。これもスキル言語理解を用いて、完璧にできた。
午後の地理と歴史、貴族の常識、法律についても、時々鑑定を用いればある程度のことは分かる、がそれ以上は無理である。まあ、合格点程度、そんな所である。
1日目が終わって、王都の公爵邸へ戻ってくるとさすがに、いくら昼行燈を全開にしていても、家族の者も気になるようで
「試験はどうだった」
と聞かれたので、
「まあまあの出来だ。たぶん合格はしていると思う」
「それはよかった。家庭教師も付けなったから。心配していたのだが、出来たのならよかった。明日は魔法の試験だな。頑張るのだぞ」
「はいお父様、全力を尽くします」
次の日は実技試験。ツェーザルは魔法と剣術のうち魔法を選択した。剣術は家庭教師を断ったため習っていなかったので自信がない。魔法も同様であったが、魔法は前世のラノベの知識を生かして密かに練習していた。特に昼行燈を絶えず全開にしているので、「魔力を使い切って寝る」そんな生優しいものではなく、ツェーザルの場合、寝ても覚めても魔法を行使しているのである。だから、魔力量がとんでもないことになっていた。もう人外の域である。生活魔法でも込める魔力量が桁違いである。そのため、ツェーザルの生活魔法はもう普通の火魔法や水魔法とそん色がない。むしろそれ以上と言っていい。だから、公爵邸で魔法を練習する時は、誰もいないところで、結界を張ってその中で人に見られないようにして練習した。
魔法の試験は、的に向かって自分の好きな魔法を的に当てる。他の受験生の様子を見ていると、的に当てられれば合格のようである。しかし、ここは平民会場、ここでいい点数を出しても、貴族会場にもっとすごい受験生がいると、貴族優先のこの世界では同じ点数の場合、平民は不合格になる。
そこで、ツェーザルは、ここでは少しだけ、本気を出すことにした。水魔法で氷の矢を作って、それで的を貫いた。これには試験官も驚いていた。的に当てられればいいのに、的を貫いたのである。すぐに「合格」と言われた。
このようにして、ツェーザルの学院の入学試験は終わった。
公爵邸に戻ると試験のことを聞かれたので、「魔法はうまくできた」と答えた。




