17.ブルヘンジュ市到着(伯爵邸にて)
それからまた馬車の旅が続いてやっとブルヘンジュ市に到着した。ブルヘンジュ市はマルテの実家のある都市、市の入り口の門でも、マルテが先頭で声をかけると
「坊ちゃん、お帰りなさい」
顔パスである。
しかし、俺は、守衛の言葉をもじって
「坊ちゃん。坊ちゃん」
と呼んでいたら、
「お前らだって、実家に帰れば、こんなものだろう。おれ知っているのだぞ、ツェーザルがミヒャエラ様から、僕ちゃん、と呼ばれているのを」
墓穴を掘った。
あのうざい姉は人前で俺のことをよく「僕」と呼ぶ、その呼び方を聞くたびに俺は背筋に悪寒が走る。マルテの野郎よく観察している。しかたがないので、
「わかった。ここはしばし休戦といこう。お互いにこの呼び方は封印するように。それから俺たち以外の男子も女子も、相手が嫌がるような呼び方はしないように」
「俺たち下級貴族はそんなことはしないよ。公爵令息や伯爵令息をからかったら、家ごとつぶされる」
「私たち平民だから、最初から相手が嫌がるような呼び方はしないわよ」
結局、こんな呼び方をしていたのは俺とマルテの二人だけであったようだ。「下級貴族や平民はつらい」と思った。
その後、俺たちは伯爵邸に行くことになった。アンナの父親も、いつもはブルヘンジュ市の取引先の商会に行くだけなのであるが、今回は伯爵令息と一緒に来たということで、伯爵様に挨拶することになった。
伯爵邸に行くと、当主様と会うことになった。伯爵家の家族も一緒である。マルテの話だとマルテには妹もいるそうである。何となく嫌な予感がする。伯爵夫人なんかに睨まれたら俺は蛇の前のカエルである。
伯爵家の家族が向かいに座った。当主様にその夫人、マルテの上の兄は現在王都の騎士団に入っているそうである。マルテの姉は近くの子爵家に嫁に行ったそうである。そして、マルテ、その妹のアンネリース10歳、俺達より2つ下である。
こちら側は、俺たちは男子4人に女子7人とアンナの父親、どう見ても女子の比率が高い。俺が、メンバーを紹介していく。最後にアンナの父親である。
「アンナの父親の商会がちょうど、ブルヘンジュ地方へ商品の買い付けに行くというので、御同行させてもらいました」
「それは、息子が世話になった」
「滅相もございません。ちょうど、ブルヘンジュ地方へ行く予定があっただけのこと。マルテ様にはいつも学院で娘がよくしてもらっています。それに今回は公爵家から馬車や護衛も出していただいています」
「そうか、公爵家からも馬車や護衛を出してもらったのですか、公爵様にもよろしくお伝えください」
「わかりました、父にもそのように伝えます」
すると、公爵夫人が
「それで、マルテはどの子が気にいっているの」
ド直球である。
これにはマルテも、すぐには言葉が出てこないようである。しばらくして
「母上、そのような話は今は」
「そうなのですか、マルテももう12歳婚約者がいてもおかしくない年ですよ。ところで、ツェーザル様はもう婚約者はいらっしゃるのですか」
これもド直球である。しかし、俺の言葉は決まっている。
「私は学院を卒業したら、家を出て諸国を巡る予定です」
「そうなの、家を出て平民になるのですか」
「はいそうです。だから、婚約者はいません。その旅の途中で気にいった子がいればと思っています」
「そうなの、妹のアンネリースはどうかと思ったのですが」
「その様な話はなしでお願いします」
「そうなの、残念だわ」
あぶない、あぶない。こんなに早く俺の将来を決められたら諸国を巡る旅どころでなくなってしまう。
その後、話題が俺の発明した明かりの魔道具の話になった。伯爵様が
「それはどのような物か」
と聞かれたので、俺はマジックバッグから明かりの魔道を取り出して、スイッチを入れた。すると、眩しいくらいの光が部屋にあふれた。
「ぜひ、伯爵家でもいくつか購入したい」
するとアンナの父親が
「工場の生産が注文に追い付かない状況で、今注文を受けても届けられるのはいつのことか」
「工場は公爵家で運営しているのか」
「はい運営は公爵家です。生産量を増やすのは、敷地や人員のこともあり、なかなか難しいところです」
「そうか、公爵家では、伯爵家から苦情をいう訳にはいかないな」
仕方がないので、
「今私がもっているのであれば、ここで、進呈します。10個あります」
「いいのか、お代は」
「お代は要りません、こちらも伯爵邸にお世話になっていますから」
その後、学院のことやらいろいろ聞かれた、中々開放してくれない。明日から、ブルヘンジュ市の観光名所を案内してもらうことになった。マルテの妹のアンネリースも同行することになった。アンナの父親は商談があるということで、別行動となった。帰りは商談が終わってからということで6日後となった。そのため、俺たちは5日間このブルヘンジュ市を観光して過ごすことになった。
夕食も、一緒のメンバーである。伯爵夫人の俺を見る目が鋭いのは気のせいであろうか。何を食べたのかよくわからない。味もわからない。昼行燈はあまり効いていないようである。ベッドに入った後はそのまま爆睡した。




