16.市内での買い物
お金が出来たので、次の日は市内で買い物をすることになった。他の人の足らない分は俺が立て替えて、後で返してもらうことになった。公爵令息だからそれぐらいあげたら、そんなことはしない、なんせ俺は将来は平民になるのである。お金は大切にしないといけない。
市内の大通りに行った。どうもここは歴史のある町のようで、古いたたずまいの店が軒を並べている。そのうちの1軒に入った。宝石店である。見るからにいい服を着たいかにも貴族といった感じの少年少女が入ってきた。店主が出てきて
「何をお求めでしょうか」
俺たちは別に鴨葱になる気はない。
「単なる冷やかしだ。見るだけで買う気はない」
すると店主の顔色が変わった。
「買わないのなら出て行ってくれ」
「良いのか。俺たちはまだ子供だけど、親は貴族だぞ、俺の親は公爵だ。アントリーペンの表通りの宝石店では、入っただけで追い出されたと言ってもいいのだぞ」
すると、苦虫を噛み潰したような顔をして
「それなら、商品には手を触れないでくださいよ」
「わかった。どうせ見るだけだから」
そうやって、商品を見ていった。鑑定をかけると商品の良し悪しが分かる。ついでに適正価格もわかる。すると、おかしな商品があった。
「店主、この商品なんでこんなに高いのだ。これただの水晶だろう。宝石じゃないよな。この店では水晶も宝石なのか」
すると、店主がやってきて、まじまじとその水晶を見ていた。そして、顔色が変わった。
「だまされたのか」
ド直球に聞いてやった。さっきのお返しである。
しばらくして、店主が観念したように、
「ほかの商品と一緒に購入したので、気づかなかった。お客さんは宝石の良し悪しが分かるのですね。さすが公爵令息ですね」
褒められた。それから、他にもおかしな物がないか見ていった。すると他にもおかしい物があった。それを指摘して、
「出入りの業者をもう一度選定した方がいいのではないか」
「そうですね、そうします」
かわいそうになったので、宝石を1つ購入した。金貨3枚とのこと。そして、購入した宝石を色々加工していった。
「この宝石だけど、例えば、このようにカットして、台座もこのように丸くして、宝石を留める爪もこのような形状にして、さらに台座の内側に購入者の名前を入れるようにすると、価値が上がるのではないか」
すると店主は感心したようすで、
「公爵家で購入している宝石はそのような形状なのですか」
「そんなところ」
「感服しました。出来ればその宝石をもう一度見せもらえませんか」
「見るだけだよ。もう俺の物だから」
そう言って、加工した宝石を見せてあげた。
この一連のやり取りを見ていた肉食系の女子が
「ツェーザル様は宝石の加工もできるのですね。多彩ですね」
「俺土魔法も使えるから、宝石の加工もできるみたい」
「しかし、いくら土魔法が使えても、どのように加工するかは、出来上がりをイメージできないと出来なと思うのですが」
「そうだね、たまたま、公爵家にそのような宝石があったから、出来たんだよ」
段々墓穴を掘っていく。最後は声が死んでいた。
結局、この店で宝石を買ったのは俺だけだった。人にお金を借りてまで買うようなものではないと思う。
その後、今度は服屋に行った。先ほどの店では何も買わなかったので、今度は買い物をすると言ってほかのみんなは店の中に入っていった。俺は服には興味がない。店の外のベンチで通りを行く人を見ていた。この町は賑やかである。行きかう人も多彩な顔振れである。いろいろな国の人間がやって来るようである。
俺も将来はいここを行き交う人々のように色々な国を巡って、色々なものを食べて、自由に暮らすんだ。何となくワクワクするな。でも、光と影、明るいところには影もあるんだろうな。しかし、ここは表通り、路地裏は見えない。そんなところに行こうものなら、護衛に怒られて、父に報告されて、さらに怒られる。今日はあきらめることにした。
女子の服選びは長い。出てきたときは男子はげっそりしていた。「よかった、付いて行かなくて」と思った。
それから、アクセサリーを売っている店に行った。ここでも女子は長い。今度は男子全員店の前のベンチに座っている。
そうこうしているうちに夕方になったので宿に帰った。




