14.アントリーペン観光
馬車の旅も飽きてきたころ、俺たちはアントリーペン市に着いた。ここはアントリーペン侯爵領の中心都市である。そしてここはライラント王国でも有名なダイヤモンドをはじめとした各種宝石の取引所がある。また市内にはそれら宝石を加工する職人も多くいる。また、市内には宝石を扱っている店も多くある。アンナの商会もここで宝石の買い付けをするそうで、俺たちは3日ほどこの町で過ごすことになった。
市内には中央を流れる川から引き入れた運河が市内を巡っており、港湾地区には外国から来た船も多数停泊している。着いた日は夕方に着いたこともあり、宿に入って終わりであった。
次の日は市内観光をすることになった。どこへ行くかということで、まず市内に入るときに見えた高い尖塔を有する大聖堂に行くことになった。宿の主人に聞くと尖塔の高さは100m以上とのこと。市民の自慢でもあるらしい。宿屋の主人が誇らしげに語っていた。
宿を出て、護衛と一緒に市内を見て回りたいということで、馬車ではなく歩いて行った。通りを歩いていると、港町ということで、明らかに外国人と思われるような人たちもいて、エキゾチックな感じがしてくる。
「さすが港町、王都とは違うね。店のたたずまいとか、歩いている人とか、ひょっとして俺たち異邦人?」
「何とぼけているのですか。私たちはライラント王国人です。歩いている人が外国人。今すれ違った人はたぶん南の方の国の人だからランド王国人」
「お、さすが、マルテ。港町出身はちがう」
「マルテ様のブルヘンジュ市もこんな感じですか」
「よく似ている」
「そうなんだ、やっぱりいいよな、港町は。外国とつながっているというだけでロマンがある」
「それはありがとうございます」
そんな話をしていたら、大聖堂に着いた。着いたのはいいのだが、尖塔が高すぎる。近くで見ると首が痛くなる。こういうのは遠くで見て初めてちょうどいい高さに見えるようである。愚痴を言っても仕方がないので、大聖堂の中に入ってみることにした。
中に入ると建物もそうだったが天井が高い。その高い天井の側面の壁から光が入ってくる。内部は白を基調としており壁面には絵画が描かれている、これってフレスコ画というのだろうか。そのあたりの知識はあやふやである。とにかくとても荘厳な感じがして、とても神聖な気分になってくる。
俺を転生させてくれた神様もここにいるのだろうか。そんなことを考えてしまう。ラノベの世界だと神に会うというのが定番だけど、俺はそういうのは記憶にない。しかし、甘美の香りはどういう意味があるのだろうか。単なるいたずら、よくわからない。
しばらく考え込んでいたら
「ツェーザル様は敬虔な信徒なんですね」
「そんなこともないけど、この大聖堂がすごいので感心していただけさ」
「そうですね、これだけの聖堂は滅多にないですね」
次に行ったのは市庁舎の前の広場。俺たちは貴族なのだから市庁舎を訪問してもいいのだが、そんなことをしたら、観光旅行が出来なくなる。市庁舎は外から見て終わりにした。市庁舎の前の広場には銅像がある。
「あな、マルテ。この銅像何」
「これは、昔このあたりに悪い巨人がいて、英雄が退治したんだ。その英雄の像」
それを聞いて俺は
「お。さすが、異世界。巨人を退治した勇者がいたんだ。俺が神に会わなかったのは、もう悪い巨人が退治された後だったからか。すると俺はおまけかな」
としょうもないことを思った。
「俺は自由に生きる。怪物退治は転生する時に神にあった人がすること。俺は会わなかったのだから、怪物退治はしなくてもいいのだ」
と思った。
少し気がめいったので、下を向いていたら
「英雄なんて、滅多になれるものじゃないのだから、そんなに気にしなくてもいいのじゃない」
何となく慰めてもらった。
そのあと広場の屋台で適当に串焼きを買って食べた。
午後は市内の商店を見て回ることになった。しかし、お金を持っていない。王都だと公爵家ということで付けが効くが、ここでは無理だろうと思う。若し付けが効いてもしたくない。後で父から怒られると思うから。ほかの友達も同じようであった。
なんとかお金を工面できないかということで、商業ギルドに行けば、俺の口座にお金が入っているのではないかということになった。
商業ギルドに行って、名前を告げたが、ここに俺を知っている人など誰もいない。
「口座を作ったときのタグは持っていないのですか」
と聞かれたが、あいにく持ってきていなかった。身分を証明できるものも持ってきていなので諦めた。
暇なので、表通りを適当に散策して商店の看板だけ見て宿に帰ってきた。




