138.ダンゴムシと妻たちの様子
アライダ達人間の妻の妊娠は問題ない。世間的にもお目出たいことである。それはいいのだが、世間をはばかることがある。あまり考えないようにしていたダンゴムシの妊娠である。
次の日の朝、ツェーザルはアーダの異空間に入って、アーダの様子を確認した。アーダは危機感を覚えたのか丸くなって、お腹を見せようとはしない。アーダは昨日の夜ツェーザルが悲鳴を上げたのを知っているようである。
「なあ、アーダ、お前も妊娠したのか」
「そんな事分かりませんよ。私の場合ツェーザル様と結婚したのはつい最近ですよ。アライダさんたちは8月に結婚して今妊娠が分かったのですよ。そんなすぐに分かる訳ないじゃないですか」
「それもそうだな、まだ分からないか。しかし、絶対この異空間から出るなよ。若し俺がダンゴムシと交わって子供を産ませたというようなことが世間にばれると俺は破滅だからな。
もう1度言う。この異空間から出るな。そしてもし子供を産んでも、その子たちにこの異空間から出ないように言うのだぞ。わかったな」
「はーい」
なんか返事だけはいいのだが、本当にわかっているのだろうか心配になってくる。
アーダの異空間から出てアライダたちに報告した。
「アーダの妊娠はまだ分からないそうだ。とにかく異空間からは出るなと命令しておいた。これは了解してくれた」
「そう、それなら取りあえずは安心ね」
アライダにそう言ってもらったら、気がまぎれた。
次の日久しぶりに王都に帰って来たので、工場を巡って状況を確認することにした。ツェーザルの関与していることは
1.魔道エンジンのスクリューの軸とボールベアリングの製造
2.軍艦のスクリューと舵の魔法による強化
3.結核用ポーションを製造するための魔石への魔力の注入
である。
1については、旅に出る前に1年分を作り置きした。2か月たったので、在庫は軍艦用が80個、小型艦用が600個となっていた。当分耐えられそうである。
2.については旅の行先が決まっていなかった関係上、ほとんど王都の工場に山積みであった。それで、またしばらく工場へ通って強化を行うことにした。
3.については、今年は結核が流行したみたいでマリーに預けていた魔石が2か月で80個減って400個のはずが、半分の200個となっていた。それでも今年のピークは過ぎており、まだ5か月分あるので、そのうち作ることにした。
これを確認した後、ツェーザルはしばらく工場へ通って軍艦のスクリューと舵の魔法による強化を行い、ブルヘンジュ伯爵へ送った。
アライダ、カーチャ、セリーナ、イルメラは妊娠したとはいえ、今は特に変わった様子はない。お腹もまだ目立っていない。母が公爵家でお世話になっていた医師を派遣してくれたので、今はその医師に見てもらっている。経過は順調とのことである。
アニカ、アンナ、リズ、エバについてもその医師に診てもらったが、引き続き経過観察だそうだ。
そうなるとツェーザルは差し当たってすることがない。身重の妻を置いて1人で旅を再開するわけにもいかない。そのため、ツェーザルは適当に工場巡りをして、後は優雅な日々を過ごしている。
アライダたちとも相談したが、旅行の再開は子供が少し大きくなってからとなった。ツェーザルの「将来は商人になっていろいろな国を旅する」という昔描いた人生設計はここで大きくつまずいた。
まず、商人であるが、これは叙爵により貴族となった。これは商人と貴族の肩書の差であって商会を経営しているので、商人ともいえなくはない。これは誤差の範囲である。
次にいろいろな国を旅する。特に今回の旅で強く感じた「英雄の軌跡を巡り、ツェーザルがこの世界に転生してきた意味を探る」と言う命題は今まさにその取っ掛かりを掴めた状態である。今後のさらなる検証が必要である。
しかし、これが数年後にならないと再開できないとうのは、なんとももどかしいことである。しかし、人生は長い、ここは神が「しばらく休憩しろ」と言っているのだと肯定的に捕らえることにした。




