137.妻たちの妊娠
今日はどこへ行こうかと相談していたら、急にアライダが「体調が悪い」と言い出した。ほかにもカーチャ、セリーナ、イルメラが同じように「最近体調がよくない」と言い出した。
メイドに聞くと
「赤ちゃんが出来たのでは」
と言われた。
そこで今後の予定を相談した。王都を出たのは12月、今は1月、旅はもう少し続けたかったが、妊娠していると赤ちゃんの方が大事である。そこで一旦イルメラの実家のあるランブルグ市に戻り、お医者さんに見てもらって、そのあと考えることになった。
その後はゆったりした工程で元来た道をランブルグ市まで戻った。真っ直ぐ戻ってきたら2日ほどで戻れた。いかに俺たちが寄り道していたかが分かった。
当然馬車の中では大事を取って体調の悪い妻はアーダの異空間で過ごしてもらった。ここだと揺れないしゆったりできる。
するとアーダまでが
「私も赤ちゃんが出来たかもしれない」
と言い出した。
これは心臓に悪い。アーダには
「絶対に異空間から出るな」
と言った。こんなのが見つかると俺は、『獄門、はりつけ、火あぶり』まっしぐらだ。
急に何の前触れもなく戻って来た俺たちを見て男爵が不思議そうな顔をしている。
「アライダ、カーチャ、セリーナ、イルメラに赤ちゃんが出来たかも知れないので戻ってきました」
「それはおめでたいことだ。今日はゆっくりして、明日お医者さんを呼んでみてもらおう」
「ありがとうございます。これからしばらくお世話になりますがよろしくお願いします」
その日は、男爵邸に泊めてもらった。イルメラが実家ということで嬉しそうにしている。しかし、他の妻たちは、少し落ち着かないようだ。難しいものだ。
次の日男爵邸にお医者さんがきた。順番に見てもらったところ、やはり、アライダ、カーチャ、セリーナ、イルメラは妊娠しているそうだ。あと、アニカ、アンナ、リズ、エバについても可能性があるそうだが、もう少しするとはっきりするそうだ。
今後のことを相談した。イルメラは「ここでもいい」と言ったが、ほかの妻たちは「自分の実家でもないのに、ずっとお世話になるのは心苦しい」と言うことで、王都に帰ることになった。イルメラに「イルメラはどうする」と聞くと、「みんなと一緒に帰る」とのことであった。
男爵邸で3日ほど過ごして、俺たちは元来た道を王都に向けて旅立った。ゆったりした工程だったが、どこにもよらなかったので3日ほどで帰れた。来るときは2か月かかった所を5日である。すこし拍子抜けしてしまった。なおこの5日間もアライダ、カーチャ、セリーナ、イルメラはアーダの異空間の中で過ごしてもらった。
この間時々頭の中にカルラの声がする。
「アライダさんたちに先を越された、早く旦那様の子供を産みたい」
「それはやめてくれ、ゼロ歳児に子供を産ませたとわかったら俺は間違いなく破滅だ。成人してからにしてくれ」
と訴え続けた。
そうやって王都の男爵邸に戻ってきた。そしてメイドと護衛を下ろすと、その足で公爵邸に報告に行った。公爵邸に行くと、父も母もいた。
「アライダ達が妊娠したので戻って来た」
と言うと、父と母が
「それはおめでとう。元気な赤ちゃんが生まれるといいね。早く孫の顔が見たい」
と言ってくれた。
そこまではよかったのだけど、
「あれだけ啖呵を切って王都を出て行ったのだからもう少し粘ると思ったけど以外と早かったのね。優柔不断なところは大人になっても変わらないのね」
と言われた。
どうも母は、旅行中にアライダ達が妊娠して、途中で旅を諦めて戻ってくることをあらかじめ予想していたようである。
とりあえず、妻たちが妊娠した。そして王都に戻ってきた。それはいいのだけど、よくないのが1匹いる。こいつをどうするか。その日ツェーザルは夢を見た。そう「生きたまま焼かれる」あの夢を、
「うわー、」
その夜男爵邸にツェーザルの悲鳴が響き渡った。




