136.〇ーテの軌跡
次の日もローデルベルク町である。この町2日目、今日もゆっくりできる。昨日は英雄の失恋を悟ったが、今日は〇ーテの恋の跡をたどりたい。しかし、まだ生まれてもいない人の恋の跡をたどるのは難しい。昨日も市内を散策したが、とにかく町が田舎町なのである。城もなければ、居酒屋も1軒しかない。将来あそこにできると思ってもそこはまだ森だったり畑だったりする。
早々に市内もとい町内散策はあきらめて、昨日の居酒屋に来た。市内に見る物がないなら美人のお姉さんの顔でも見ていようと思った。しかし、昨日と同じ店に行くと言うと、アライダ達の眉がピクリと動いた。「鋭い」昨日はメイドのこともあり、しおらしかったが今日は元に戻っている。女の勘を最大限に働かせて俺の浮気調査をしようとしている。
「居酒屋は町内に1軒しかないし、仕方がないだろう。お昼は食べるわけだし」
声が段々しりすぼみになっていく。
「何も言っていませんが。確かに居酒屋は1軒しかないので、そこで食べるしかありませんね」
声に魔力が乗っているように感じるのは気のせいだろうか。
やっと許しを得たので、昼には随分早かったが昨日の居酒屋に来た。すると昨日の娘さんがいない。「昨日の娘さんは」などと聞くわけにもいかず、「お勧めは」昨日と同じことを聞く。すると
「マ〇ラです。豚の胃袋にいろいろなものを詰めて………」
そうだよな、あの料理はこの店のお勧めだよな。日によって違っていたらおかしい。
「マ〇ラを28人前、俺は野菜の炒め物をたのむ」
昨日と同じ料理になってしまった。違うところは美人のお姉さんがいないことだけ。空しい昼食を終えたが、まだ時間がある。
どこへ行こうか迷ったが、確か対岸に名前は思い出せないが有名な道があったはず、そこに行けは俺も文豪〇ーテのように、文学者になれるかもしれない。文学者はむりとしても詩人になれるかもしれない。
そう思って対岸に来たのだが、川を見下ろす場所には道はなかった。あるのは村人が山に入るのに使っているような小道だった。当然道端の木の枝が刈ってあるはずもなく。木の枝が邪魔して対岸がよく見えない。
普段運動を極端に嫌う俺が山道に入っていくのでアライダ達が不思議がっている。まさか「将来ここに有名な道が出来てそこからの眺めが最高だ」などと言う訳にもいかず、「ただ運動がしたかっただけ」と空しい回答をした。
「することがないなら、意地を張らずに早く宿へ戻りましょう」
といわれて、小道からの散策はやめにして、宿へ戻ってきた。それでも意地になっているので
「いまだ見ぬ、〇ーテの軌跡、夢の中、記憶たどりて、山道を行く」
と詩を読んでみたが空しいだけだった。
宿に帰ると当然のようにアライダ達に怒られた。
「思い付きだけで私たちを引き回すのはやめてください。意地にならずに行くところがないなら、そう言ってください。それともこの町に何かあるのですか」
「まさか、前世で見た映画の舞台だ」
などとも言えずに
「すません」
とただ謝るだけだった。
すると、心の中にカルラの声が響いた。
「〇ーテてそんなに有名な人なのですか。私知らない」
「おまえ、〇ーテを知らないのか。前世では外国文学は読まなかったのか」
「私が読んでいたのはネット小説。婚約破棄、乙女ゲーム、魔法のあるファンタジー小説」
「そうか、それはよかったな」
アライダ達にこってり怒られた後なので、反論する気力もなかった。
その日は不貞腐れてアーダの異空間で寝た。俺が「入れてくれ」と言うとアーダは嬉しそうに迎えてくれた。その日は俺が早々にアーダの異空間に引きこもったので、次の場所は決めなかった。
「今日はどこへ行くのですか」
次の日の朝また怒られた。




