134.ローデルベルク町
○○ルムス市は今日の市内散策で予定終了。次はどこへ行くか。俺は南のローデルベルク町へ行きたいと言った。まだ生まれていないけれど、文豪〇ーテの軌跡をたどってみたいと思った。
文豪〇ーテがこよなく愛した町、ローデルベルク町、たしか俺の記憶では〇ーテはこの町の大学に通っていたはず、そこでカフェの女給に恋をしたはず。あれ、俺、有名な映画と混同したみたいだ。〇-テの通った大学は〇〇プツィヒ大学だよな。おかしい何故ローデルベルク大学と思ったのだろう。
確かあの映画王子と居酒屋の女給の恋の物語だと思った。映画に感動して、本でも読んだと思う。そうだ主人公は王子だ。〇ーテではない。俺の前世の記憶もいい加減なものだ。大体自分の名前さえも思い出せない。
しかし、〇-テは川にかかる橋の上で、恋人と語り合ったはず。そこで詩を読んだはず。でも思い出せない。〇ーテが学んだ大学は違う大学。するとここで恋を語り合ったのは〇ーテがいくつの時だ。少なくともかなり年を取っていると思う。そのあたりの記憶はいい加減だ。
しかし、ローデルベルク町に行ったら居酒屋に行って、気に入った娘がいれば声をかけてみるのも一興である。俺の場合スキル甘美の香りがあるので声を掛ければ、多分イチコロだと思う。アライダ達妻の目を盗んで禁断の愛、燃えるシチュエーションである。
そんなことを考えていたら、頭の中にカルラの声が響いた
「旦那様、浮気厳禁です。居酒屋の女給に声をかけるなんてもってのほかです。若し、そんなことしたら、旦那様に前世の記憶があることアライダさんたちにばらしますよ」
あかん。カルラは俺の心が読めるのだった。それにアライダ達にも言ってない俺の秘密を握られているのだ。
「おいなんで、いままでツェーザル様だったのが、旦那様に変わったのだ」
「決まっているじゃないですか。私と旦那様は同じ転生者。アライダさんたちも知らない秘密の共有者ですよ。こんな私を捨てられますか。だから夫婦も同然です」
「捨てるなんて出来ないな。若し転生者ということが世間に知られると、俺の身が危ない。どこかに隔離されて、役立つ知識だけ吸い取られて一生管理される未来しか見えてこない。しかし、まだ結婚したわけではないぞ。ゼロ歳児と結婚したと知られたら『獄門、はりつけ、火あぶり』まっしぐらだ。
お前も同じだぞ。隔離される未来しかないぞ。転生者とは言わない方がいいぞ。ダンゴムシみたいに前世が妖精では得られる知識もないからいいが。しかし、ダンゴムシの場合、解剖が待っている。どちらにしても俺たちの事は言わない方がいいぞ」
「分かっています。転生者ということは私たちとアライダさんたち以外には言わないようにします。それに旦那様という言い方も旦那様と会話する時だけにします。他の人がいるときはツェーザル様と言います」
カルラと話をしていたら次の日の行先は決まっていた。
次の日、俺たちは、英雄の町○○ルムス市に別れを告げて、文化と恋の町ローデルベルク町を目指した。ちなみに、文豪〇-テの話はアライダ達には言っていない。こちらから声を掛けなくても向こうから迫ってくる時は不可抗力である。
朝○○ルムス市を出た馬車は、昼頃にはローデルベルク町に着いた。城門を抜けると、文化の町ローデルベルク町である。ここではあえて恋の町とは言わない。言えばたとえ心の声であってもカルラからのクレームというか脅しが入る。
しかし、期待とは裏腹に城門をくぐって見たものは、寂れた街並み。町はあるが中世都市そのもの。「小さい」それが俺の感想。これでは文豪〇-テのように街中の居酒屋で女給と恋をもとい詩を語り合うなどということは、夢の夢である。
呆然として、声もなかったら、頭の中にカルラの声が響いてきた。
「まだ生まれていない人の軌跡をたどろうとするなんて、土台無理だったのですよ。よかったですね。健全な町で」
町の寂れようを見てアライダ達が文句を言い出した。
「これが旦那様の言う歴史と文化の町ですか。これだとどこにでもある田舎町だと思うのですが」
「そうよ、私の実家の町の方が、ここよりはずっと都会ですよ」
返す言葉もない。取りあえずどこでもいいから護衛とメイドに言って宿を探してもらった。最悪宿はいくつかに分けてもいいと言った。こんな小さな町だと29人も一度に泊まれないかもしれない。




