132.結核用ポーションの提供
帰りの馬車で、今日のことを再度検討してみた。やはり、英雄と俺は何か繋がりがある。英雄の残滓の様な物で繋がっているのかもしれない。
だからと言って、最弱の俺に何かできるわけがない。しばらくは静観といったところだ。英雄の本はアーダの異空間でコピーしてもらったからいつでも読める。
その日宿に帰ると、商業ギルドの人が会いたいと待っているとのことである。面倒ごとの匂いプンプンである。やはりこの町に入るときに身分を明かしたのは間違っていたのかなと思った。
しかし、宿を世話してもらった関係上、断るわけにもいかず会うことにした。妻たち全部を連れて行うわけにもいかないのでアライダだけを連れて行った。
宿の応接室でその人は待っていた。名前はアルベルトさん、商業組合の理事長だそうだ。そしてアルベルト商会という商会を経営しているそうだ。この商会は公爵家と取引のある商会とも取引があるそうだ。
「お初にお目にかかります。私はアルベルトと申します。今日は急に押しかけてすいません。お願いがあってまいりました」
「私はツェーザル・ネルデンベルク公爵家の三男です。今は男爵位を授かっております。隣は妻のアライダです。同じく男爵位を授かっております。それで今日はどのような要件でしょうか」
「私の妻と娘2人が先日から咳が止まらなくて、ツェーザル様が開発したポーションの予備があれば分けもらえないかと思いまして、寄せてもらいました。
今年は結核が例年にも増して蔓延しているようで、ポーションの需要が多く私と取引のある商会では在庫が無くなって入手のめどが立ちません」
「わかりました。今ここにポーションが3本あります。これをお渡しします。ただし、このポーションは飲む人に誓約書を書いてもらって売っています。
そこで、ここで誓約書にサインしてください。そしてそれと代金を取引のある商会に提出してください。そうしないと販売を委託している商会との関係がおかしくなります。
それと病気の症状によってはポーションも改良を加えた方がいいかもしれませんので、明日お宅お伺いして症状を見せてほしいのですがよろしいですか。私はあなたの家を知りませんので、明日朝にこの宿まで迎えにきてください」
「ありがとうございます。今サインします」
そう言って、アルベルトさんはすぐにツェーザルが出した書類にサインしてくれた。それを見てツェーザルはアルベルトさんにポーションを3本渡した。
その後アルベルトさんは「明日の朝迎えに来ます」と言って帰っていった。面倒ごとかと思ってアライダまで同席させたのに、ポーションの無心とは、気が抜けた。
次の日の朝、アルベルトさんが迎えに来たので、アルベルトさんの屋敷に行った。念のため今回もアライダを連れて行った。屋敷に入って妻と娘さんが寝ている病室に案内された。
見ると3人ともずいぶん楽そうである。
「昨日もらったポーションを飲んだら今朝はずいぶん楽になりました。昨日までの苦しさがうその様です」
かなり効いたようである。取りあえず3人に鑑定をかけた。すると「結核:症状改善中」とでてきた。このポーションでいいみたいだ。
「このポーションでいいみたいですね。後は栄養のあるもの食べさせてください」
そうやって帰ろうとしたらアルベルトさんから
「ポーションの予備がまだあるのなら、分けてほしいのですが、私の知り合いでも、この病気で苦しんでいる人がいるので」
「ポーションの予備はあまり多くないので、材料さえそろえてもらえれば、今から作ります。ポーションを作る器具はマジックバッグに入れてあるのでいつでも作れます」
「それはありがとうございます。材料はどのようなものを用意すればいいのですか」
そこで、必要な材料を書き出した。
アルベルトさんが家の人に材料を買いに行かせている間暇なので、ツェーザルは厨房を借りて、そこでマジックバッグに入っている材料でポーションを作り出した。
それをアルベルトさんと家の人が興味深そうに見ている。ツェーザルは厨房にあった中から一番大きな鍋を取って、そこに水を入れて火にかけた。そこにマジックバッグから出した材料を入れていく。材料の処理はアライダがしてくれた。
早い、ツェーザルの魔力量は以前ポーションを作った時よりもずっと増えている。以前は午前中で300本だったが、今回は一度に300本作った。
鑑定をかけると効果は十分である。問題ないと判断して、それをポーション瓶に入れていく。600本作ったら、材料とポーション瓶が無くなった。
あまりの早さにアルベルトさんがびっくりしている。追加でポーション瓶の購入もお願いした。その後材料が届いたのだが、その材料もすぐに使ってしまった。
そしてその日だけで1800本のポーションを作った。このポーションについてはアルベルトさんに頼んで取引のある商会で販売してもらうことにした。お金については面倒なのでアンナとリズを呼んできて計算してもらった。
夕方また宿まで送ってもらった。




