130.英雄の宝
昨日は宿の前の聖堂を見て後は買い物をしたが、今日は川の方へ行ってみることにした。どうせ当てなどないのである。5日間で市内を見て回る。そして英雄の残滓の様なものが感じられないかを調べるのが目的である。
それと気になったのだが、この世界は中世だよな、するとまだ宗教改革は行われていないのだよな。しかし、これを口にすると、俺は異端として『獄門、はりつけ、火あぶり』まっしぐらである。ほんとうは、〇ターのことも聞きたかったがやめた。
中世都市は小さい。俺たちは徒歩で町を東に向かって歩いた。その方が馬車で巡るより、何か心に感じるものがあるかもしれないと思ったからである。
そのまま歩いて城門を抜け、川べりまで来ると、心に何か感じるものがある。何かは分からない。前世の記憶をたどると、たしか、英雄ジー〇〇リートを殺して宝を奪った誰か(名前は憶えていない)が、宝を川に投げ入れたはず。今世の英雄叙事詩ではそんな記載はない。そんな記載があればこの川は英雄の宝を探す人でいっぱいになってしまう。
アーダに聞いてみると、アーダも何か感じるそうである。カルラを呼び出したいが、ここでカルラを呼び出すと赤い目の魔獣が現れたとパニックになる。仕方なく諦めた。
さて、これをどうするか。思案のしどころである。川の中である、まして今は冬、とても川の中を探すわけにはいかない。人を雇ったとしても、『なぜ』と聞かれたら困る。
「伝説の英雄の宝があるかもしれない」などと言おうものなら、みんながパニックになる。そして話は領主や国王の耳にも入る。大々的に探して宝がもし見つかったらそれをどうするかでもめる。
しかし、探して見つからなかったら俺は大ぼら吹きとして最悪処刑される。ここはだんまりを決め込むことにした。
俺が川の方を見て、しばらく何も言わないので
「ツェーザル様、どうかしたのですか」
「いや、ここから見る川の風景が綺麗だと思って見とれていたのだ。まるでアライダの様だ」
ここはおべんちゃらを言っておく。すると、
「まあ、ツェーザル様、うれしい」
そう言ってアライダが抱き着いてきた。
すると、リュックから出てきたアーダが
「ツェーザル様が何かごまかしたように思う」
と言い出した。こいつ鋭いと思った。
すると今度はアライダが
「旦那様は真実を言ったまでのこと、低能な羽虫はお黙りなさい」
また、妻たちと羽虫の確執が始まった。
しかし、ここは冗談抜きでいい場所だ。ゆったり流れる川、その川に沿って落ち着いた道が整備されている。向こうには、〇〇ルムスの町が見える。しかし、城門の外なので辺りは麦畑が広がっている。昼間は問題ないが、夜は危険である。
あまり長くいられないということでしばらくして、また市内に戻った。市内に戻って、あてもなく散策しているのだが、時々古代の城壁の様な物に出くわす。
不思議に思って近くにいる人に聞いてみると、古い時代はその城壁の内側が町だったそうだ、人が増えて町が大きくなったので城壁を取り壊して外に広げているのだそうだ。残っている城壁はその名残だそうだ。
その後俺たちは宿に戻った。そして、部屋に入るとカルラに今日のことを話した。ダンゴムシではあまり相談相手にならない。こいつは英雄には憧れていても転生の意味とかには無頓着である。まだカルラの方が当てになる。
「そうですね、英雄の宝の可能性はありますが、宝が何なのかはわかりませんね。聖剣の可能性もあります」
そうだった、こいつはアニメオタクだったのだ。宝イコール聖剣だそうだ。
「聖剣だったら俺は使えないぞ。俺は、魔法は生活魔法しかない。剣の腕は男子で最下位、体力は女子にも負ける。俺に聖剣が扱えると思うか」
「ツェーザル様って、そんなに弱いの」
「そうだ」
「なら、宝は探さない方がいいですね、もし見つけたら悲劇です」
「最弱の人間がドラゴンに挑む、もう殺される未来しか見えません」
「そうだよな。おれもそう思う」
と言うことで、結論が出た。俺は宝を探さない。ドラゴン退治は勇者の仕事、おれには関係がない。




