127.英雄の殺された場所の検証
カルラの幽体が帰っていったので、アライダ達をアーダの異空間に入れた。すると、アライダ達が少しご立腹である。
「ダンゴムシとカルラさんと何を話していたのですか」
「今日昼間行った場所で涙が出てきたので、明日カルラの幽体に現地に行ってもらって、涙が出てくるか調べてほしと頼んでいた」
「なぜ、ダンゴムシと話をするのですか」
「涙が出てきたのが、俺とダンゴムシだけだったから、カルラにも調べてもらおうと思っただけだ」
「こんな羽虫とツェーザル様が同じというのは、むかつきますが、仕方ありませんね。私たちは誰も涙が出ませんでしたから」
何とかアライダたちを言いくるめて、その日は寝た。
「ギャー」また夜中に宿に悲鳴がとどろき渡った。
「今日は教会の神父もいることだし、神父が何とかするだろう」
と思って、俺はそのまま寝た。アライダたちも同じようだった。
次の日の朝、食堂に行くと宿の親父がやつれた顔をしている。親父の顔を見て俺は「幽霊退治が失敗したこと」を悟った。ここで話しかけると、面倒ごとに巻き込まれる。俺は極力視線を合わさないようにした。俺は、魔法は生活魔法、剣術は男子で最下位、体力は女子にも負ける。俺が幽霊に勝てるわけがない。
朝食を終えると
「今日も行くところがある」
と言って、そそくさと宿を後にした。
昨日と同じ場所に着くと。アーダを放して、カルラの幽体にはアーダの異空間に入ってもらうことにした。そして、そこから俺の頭の中に状況を伝えてもらうことにした。
アーダが昨日俺が記念碑を作った場所に行くとカルラが
「何、この物悲しさは」
と叫んだ。
この場所からは、ものすごい物悲しさが伝わって来るそうだ。そして涙があふれて止まらないそうだ。これで決まりだ。転生者は英雄の殺された場所では悲しさが心の中に流れ込んでくる。
この伝説は、今から何百年も前のこと、それなのにいまだにその悲しさが残っているということは、この地で殺された英雄の無念がそれほど強いということか、それと神の嘆きが強かったのかは分からない。
そして、その悲しみが俺達2人と1匹に伝わってくるということは、神は俺たちに「何かをなせ」という使命を与えるのかもしれない。
とりあえず、今後の方針として、その神の真意を知るために、今後は英雄伝説にちなんだ場所を訪ねてみる必要がある。そうすると、もう少し方向性が見えてくるかもしれない。
今日の成果は十分に満足できるものであった。俺たちは満足して宿へ帰るのであった。俺があまりも嬉しそうな顔をしているのでアライダが
「今日は何かいいことがあったのですか」
「今日は、カルラに昨日の場所を見てもらったら、カルラも『この場所はとても悲しい場所だ』と言っていた。涙が出たのが俺とダンゴムシだけでなくてよかった」
「そうですよ、ツェーザル様とダンゴムシが同じだなんて考えたくもありませんよ。カルラさんは侯爵令嬢ですし、ツェーザル様と同じであっても不思議はありませんよ。むしろダンゴムシがおかしいのですよ。羽虫のくせに人間と同じ感情があるなんて」
すると、アーダが出てきて
「私とツェーザル様は同じ感性の持ち主。私の前世は妖精よ。人間の感情があっても不思議ではありませんよ」
「そうか、アーダは前世は妖精だったのだな。すると、悲しいものを見て悲しいと感じるのは当たり前か」
「そうですよ。だから私は多感な乙女ですよ。いや結婚したので乙女ではなく淑女ですね」
「何が淑女よ、ダンゴムシなのだから羽虫で十分よ」
「その言葉聞き捨てなりませんね。ダンゴムシ差別です」
「そういがみ合うな、もう少し静かにしていろ」
俺が注意すると妻たちと羽虫の喧騒はなくなった。
せっかく人が喜びを噛みしめているのに、こう煩くてはその喜びも半減してしまう。妻たちと羽虫の言い争いに興ざめするツェーザルであった。




