122.伝説の場所
「キヤー」深夜の宿にメイドの悲鳴がとどろき渡った。俺たちはアーダの異空間の屋敷に居たのだが、メイドの悲鳴は俺たちの耳にも入った。
すぐに元の部屋に戻った。そして、メイドの部屋に行った。すでに護衛と宿の主人も来ていた。おれたちの姿を見ると、メイドの1人が壁の方を指さしながら
「あそこに女の人がいた。真っ白い顔で口だけが異様に赤いの、そして目から血の涙を流して、私に話しかけてくるの。私を殺した貴族が憎いって」
俺が、
「他のメイドはどうなのだ。8人でこの部屋にいたのだろう」
そう聞くと、ほかのメイドは
「何も知らない。」
誰も、メイドの言う異様な怪物は見ていないようだ。
これには参ってしまった。8人が同じ怪物を見たら、怪物出現で決まりだが、他の7人が見ていないという。しかし、このおびえよう。ほっておくわけにもいかない。するとこのメイドの主人であるセリーナが今日はこのメイドと一緒にこの部屋で寝ることになった。
それで、俺はこの部屋に結界を張った。それで今日のところは様子見ということで一旦解散となった。俺たちはまた元の部屋に戻ってアーダの異空間の中に入って寝た。
次の日の朝、食堂に下りると、セリーナにあれからどうだったか聞いたが、何もなったそうだ。それで、昨日のことはメイドが変な夢を見たことになった。
今日は市内観光である。まず、神の導きで王が川を渡ったという場所を見に行った。念のためアーダも背中のリュックに入れてきた。これにはアーダも感激して「私も妻の一員」とはしゃいでいる。
宿の主人に王の渡った場所を聞くがよくわからないそうだ。随分古い時代のことらしい。そうだよな、今のライラント王国よりもずっと昔の話だもの。わからないのが当然である。宿の主人に一番可能性の高いところを聞いて、とりあえずそこに行ってみることにした。
宿の主人に聞いた場所は対岸にフルトランツの町を望む河原だった。一面、葦?よくわからん草が生い茂る河原だった。背中のリュックからアーダを出して聞いてみるが
「ツェーザル様、私何も感じません」
しばらくそのあたりを飛び回ってもらったが、やはり何も感じないようだ。
やはり、ここを女神の導きで古の王がこの川を渡ったというのは、やはり伝説以上ものではないようだ。俺は気が抜けた。俺は使命を帯びていないのだ。俺はこの世界を楽しめばいいのだ。気が楽になった。
その後の市内観光はアライダ達の好きなところで構わないと言った。
すると、アライダたちが俺に「錠に俺の名前を書け」と言ってきた。訳が分からない。しかし、妻たちの気迫がすごい。断れば何をされるか分からない。
そこで渡された錠に順番に俺の名前を書いて行った。8個も書くとなると大変である。そうしたら危機感を覚えたのかアーダまで錠を持ってきた。どうも錠の1つを自分の異空間でコピーしてきたみたいだ。
そして俺が書いた錠に今度はアライダ達が自分の名前を書いている。アーダはどうするのかなと思っていたら、アーダも字が書けるようだ。アニカに手伝ってもらって見よう、見まねで自分の名前を書いている。
このダンゴムシ無茶苦茶器用である。それに頭もいい。こんなことが知られたら間違いなく研究対象だ。俺はすぐさま護衛やメイドに見られないようにアーダの姿を隠した。
そして川を渡る橋まで来たら、アライダ達がその橋に先ほど俺と妻たちが名前を書いた錠をかけている。そして、景気よく、その錠の鍵を川に投げ入れ始めた。
俺は意味が分からないのでアライダに聞いた。すると、
「これで私たちは永遠の愛が約束されたのです。末永くお願いしますね。旦那様」
と言われた。この世界にそんな風習があるとは思わなかった。
すると、アーダもやってきて俺の耳元で「私たちは永遠の愛で結ばれている」と言ってきた。
「まあいいか、夫婦なのだし。こんなダンゴムシ、世に放てば俺は、『獄門、はりつけ、火あぶり』まっしぐらだ。もうアーダを捨てるという選択肢はない」
と思った。
すると俺の心の中に
「ずるい、アライダさんたちだけでずるい。それにアーダまで、私も成人したら絶対ここに来て同じことするのだから」
とカルラの声が響いた。
そうだ面倒なのがもう1人いたのだ。頭を抱えるツェーザルであった。




