12.馬車の旅(馬車の揺れを少なくする魔法陣)
今回の商隊は、先頭を騎馬の冒険者が5人、次の荷馬車に冒険者が5人、そのあと商隊の馬車が5台、そのあと公爵家の馬車、最後が公爵家の騎乗した護衛が5人という編成である。クラスのみんなは公爵家の馬車に乗った。アンナも一緒である。公爵家の馬車は広いので12人が乗れた。荷物はみんな事前に渡したマジックバッグに入れてきたので、手元にリュックサックが1つといった感じである。
馬車の中は広い、それはいいのだが、馬車の中は女子の方が多い。これが問題である。こう近くては俺の昼行燈を最大限に効かせても効果が薄い。それに、この旅に参加した女子は、俺が明かりの魔道具でかなり裕福なのを知っている。なんか草食獣を狙う肉食獣の様な気がしてくる。
俺は一番隅っこで、そう前に男子を置いて、衝立になるようにして、女子の視線を避けているが
「ツェーザル様、そんな隅っこにいないで、公爵家の馬車なのだからもっと、デーンとしていたら」
「俺は隅っこが好きなんだ。将来は平民だから」
「平民と言っても、明かりの魔道具の売り上げはツェーザル様にも入るのよね」
「入りますが、そのうち売れなくなると思っていますから」
「そうかな、うちはまだ買えないのよね。そんなにすぐに売れなくなるとは思わないわ」
なんか、一度食らいついたら離さない。肉食獣そのもののような気がしてきた。こんな肉食獣の前では昼行燈なんて消えてしまいそうである。
馬車の旅が続く、しかし、車窓も見慣れた風景が続く、おまけに馬車は揺れる。昼行燈全開で余裕がない。段々気分が悪くなってくる。「もう限界」と思ったときに休憩となった。ブルヘンジュ地方まであと1週間もこんな旅が続くと思うとげっそりである。
特に馬車の揺れを何とかしないといけない。馬車の揺れを少なくするには、まず、馬車の4つの車輪をそれぞれ4つに分けて、1つの車輪が石などに乗り上げてもそれが他の車輪に影響しないようにする必要がある。また、その車輪1つ1つにばねと振動吸収の魔法陣を設置して振動を吸収する必要がある。ゴムのようなものがあればいいのだが、生まれてからそのようなものを見たことがないので諦めた。あとは、架台を吊り下げ式にすればもっと振動が少なくなると思ったが、さすが、それは馬車を1から作り直すようなものなので諦めた。
結局馬車の揺れを少なくする方法として俺が採用したのは、車輪を4つに分けてばねと振動吸収の魔法陣を設置することだけである。
休憩時に振動吸収の魔法陣を刻んだばねを作った。そして、これを馬車に設置してみた。車輪を4つに分けるのはかなり手間なので今日の宿に着いてからすることにした。
休憩が終わって馬車が走り出すと
「あれ、馬車が揺れない。さっき、ツェーザル様が馬車に何かしていたのは、これのため」
「うん、あまりにも馬車が揺れるので馬車の車輪にばねをつけてみたんだ」
「すごい。ツェーザル様は明かりの魔道具だけでなく、馬車の揺れを少なくすることもできるのですね」
「ぜひ、これも商品化して、ぜひうちの商会で扱わせてほしい」
「だったら、作り方教えるから、アンナの商会で工場から作ってよ。今日出かけるとき親父さんからもっと明かりの魔道具を作ってと言われたんだ。催促されるとつらい」
「ずるい、アンナの商会だけでなく、うちの商会でも扱わせて」
「そうだね、この製品も、明かりの魔道具を扱っている5つの商会に頼むことにするよ」
「そう、そうしてもらえると嬉しい」
肉食系女子の猛攻が止まらない。
「でもばねだったら、今までもあったわけだし、それだけじゃないのでしょ」
「うん、魔法陣を組み込んだ」
「そうなの、また新しい魔法陣だね」
「そうだね、次の町に着いたら登録するよ」
「それがいいと思う」
次の町についてから、振動吸収の魔法陣を登録した。そして宿に入った。その後、俺は宿で揺れを少なくするために、4つの車輪を独立した車輪に改造した。
こうして、俺にまた新しい製品が加わった。




