114.牧場の収納
次の日、俺はまた市内の不動産屋に来た。今度は前回よりも大きな家と庭を購入して、アーダの異空間に温泉を作るためである。なお、アライダ達は市内へ買い物へ行った。スパのない温泉にはあまり興味がないようだ。
不動産屋には前回同様「家を分解してマジックバッグに入れておけば旅の途中でも家に住める」と言って、ごまかした。不動産屋はすごく不思議がっていたが、金を握らせたらおとなしくなった。ついでに、口外しないようにも口止めした。
その後、郊外の方が金額が安いというので、郊外の物件を見せてもらった。それはつぶれた牧場のようであった。屋敷と畜舎それに牧草地、牧草地は柵で囲われている。今は冬枯れで、草木は白く凍り付いていた。
前回は屋敷と庭の草木をアーダの異空間に収納すると、その土地は不動産屋に売却したが、今回は土地が広いので、マジックバッグに入れるというのは違和感がある。
そこで、今回は「この牧場をすべて買い取って、マジックバッグに入る分だけ収納する」と伝えた。
「後の牧場はどうするのだ」
と聞かれたので、
「またここへ来た時に考える」
と伝えた。
「貴族のお遊びですね」
と言われたが、金を握らせたら黙った。ついでに再度口外しないように命令した。
不動産屋が帰っていったので、アーダにどれくらい入るのか試してもらうことにしたが、護衛が近くにいる状況ではそれが出来ない。
そこで一旦宿に帰って、アーダだけ再度牧場の施設を収納に行ってもらうことにした。宿に戻ってアーダに
「先ほどの牧場に行って、牧場を収納してこい」
と言うと、
「私だけで行くのは嫌」
とごねた。
「どうしたらいいのだ」
と聞くと
「ツェーザル様を私の異空間に入れて、飛んでいく。そして現地で2人で作業しましょう。夫婦の共同作業です」
と言って、うっとりしている。
「面倒なダンゴムシだ」と思ったが、言う通りしないと現地へ行きそうもない。俺もアーダが作業するところを見てみたかったのでアーダの提案に従うことにした。
護衛に
「しばらく寝るので、部屋から出て行ってくれ」
と護衛を遠ざけた。
その後、アーダは俺を異空間に収納すると宿を抜け出した。この街の城壁を越え、川を飛び越え、森に向って飛んでいる。
俺はアーダの異空間の中から眼下に広がる町や川さらには畑を見ている。空を飛ぶというのは気持ちのいいものである。
「これ病みつきになるのでは」
と思った。
その後、先ほどの牧場に着いた。俺はアーダの異空間から出してもらって、アーダが作業する様子を観察した。まず、牧場の屋敷、これはすぐに視界から消えた。次に畜舎、これも視界から消えた。ついで、牧場の草木、地面から50cmぐらいの深さで土が消えた。驚きである。この異空間どうなっているのだ。
そうしたらアーダが
「魔力切れ」
と言い出した。
「まずい」
と思ったが無駄だった。
一瞬でアーダは俺の唇に吸い付いてきた。そして俺の魔力を吸いだした。俺が「干からびる」と思ったが、アーダは容赦しなかった。しばらくしてアーダが俺から離れた時、俺の魔力はごっそり減っていた。
「久しぶりにツェーザル様の唇を堪能しました。なんなら超絶美少女に変身しましょうか」
「やめてくれ、魔力の無駄使いだ」
「そんなあ、妻が美しく変身するのにツェーザル様は何をためらうのですか」
「そんなことをしても、10分したらまた元に戻るのだ。その後また俺の魔力を吸うつもりだろう。これ以上魔力を吸われたら俺が干からびる」
「わかりました。それでは帰りますね」
そうして、俺はまたアーダの異空間に収納された。アーダの異空間に入ると、暗くてよく分からないが、先ほどの牧場がそこにあるようだ。
ここに温泉を作ったらさぞかしすごいものが作れそうだ。雄大な自然の中で湯につかりながらまったりする。この世の贅沢だと思う。何となくワクワクしてくる。
その後アーダは再び飛び出した。先ほどと逆の道である。森を越え、川を渡り、市内に入った。そして宿に入った。宿の部屋に戻ったが、護衛は気づいていないようだった。うまくごまかせたようである。




