113.サブレンツの騎士団訪問
俺たちはマルテ達の案内でサブレンツの騎士団を訪問することになった。温泉のあるボール・エムスから、騎士団のあるサブレンツ市までは近い馬車に揺られて2時間もすると着いた。
マルテ達はサブレンツ市に着くと騎士団に帰っていった。俺たちは明日騎士団を訪問することになった。マルテ達と別れた後、俺たちは市内に宿を取った。川沿いの宿なので、見晴らしはいいのだが、市の中心部とは少し離れている。急に29人が泊まれる宿となると、市の中心部は無理だった。宿は3日とった。
予定としては今日の午後市内観光、2日目騎士団訪問、3日目買い物、4日目出発(行先は決まっていない)、なんか行き当たりばったりである。スローライフといえば聞こえがいいが、計画性がまるでない。この街も何日か前に「俺は武闘派じゃない」と言って素通りした町である。
その後俺たちは市内観光に出かけた。
まず向かったのは本川と支川の合流するところの角のような場所、名前は〇〇〇と言われているらしい。そこの角っこに立つと、対岸には崖の上に要塞も見える。川を行き交う船はここが交通の要衝であることを示している。
冬とはいえ俺達みたいな観光客もいる。ここはボール・エムスに行く前に立ち寄る観光地だそうだ。行くときにここを素通りした俺たちはある意味異質のようだ。
それから近くの教会に行った。教会の建物を正面から見た時「これイルメラの実家のランブルグ市の聖堂とよく似ている」と思った。どっちがパクリなのかそれとも作った職人が同じなのかよくわからない。イルメラが何も言わないので、この世界の人はあまりそういうことは気にしなのかもしれない。
その日は適当に市内を散策して宿に戻った。
次の日俺たちは、サブレンツの騎士団を訪ねた。騎士団の事務室に行くと昨日マルテが話しをしてくれていたようで、行くと副団長が案内してくれことになった。
「私はツェーザル・ネルデンベルク、今は男爵位を授かっています。横にいるのは私の妻達です。今日は忙しい中、騎士団を案内してくれることを感謝します」
俺が、複数の妻たちを連れてきたので、一瞬副団長さんの顔が曇ったように思ったが、それは気にしないことにした。
その後兵舎を見せてもらった。その後騎士団の稽古風景を見学させてもらった。ちょうど模擬戦をしていた。副団長は俺が複数の妻を連れていることが気に食わないのか、説明や交わされる会話にあまり親しみを感じない。
ここでも俺に模擬戦に参加してみなかと言ってきた。昨日マルテから「剣術が学院で最下位だったことは聞いているだろうに嫌味か」と思った。
それで、俺も悪戯をしてみることにした。
「あのう、俺は剣術は得意ではないので、盗賊や魔獣に襲われた時用の特別製の武器を持っているのですが、それを使ってもいいですか」
「それは危ない武器ですか」
あの目くらましの槍には、刃もついているので危険である。模擬戦で使うようなものではない。そこで、赤い目の魔獣用に開発した杖を使うことにした。これなら、出力を抑えれば十分目くらましになる。
相手は団員の下っ端、マルテ達ではないので名前は知らない。審判は副団長である。
「始め」の声とともに試合が始まった。
相手はすぐには攻撃してこない。不思議そうに杖を見ている。これは絶好の機会である。相手の顔に向けて杖を構えた。そして、魔力少な目、相手の顔に向けて光の照射を行った。安全のため体の首のあたりを狙った。
相手は急に放たれた光にびっくりして
「目が。目が」
と言って、木剣を放り投げて、顔を手で覆った。
その後、俺は相手の首に杖を突き付けた。審判を見るが、何も言ってくれない。
「あのう。この試合どうなるのですか」
すると副団長があわてて
「勝者ツェーザル」
と言ってくれた。
すると、目が元に戻ったのか、先ほどの相手が
「あんな卑怯な手、試合のうちに入らない。もう1度再試合だ」
と言い出した。
「面倒だな」と思ったが、
「いいですよ、再試合しますか」
と言うことで再試合することになった。
「始め」
副団長の掛け声で再試合が始まった。
すると相手は開始の声とともに剣を振りかぶって突っ込んできた。俺は横に避けるとともに、杖の魔力を先ほどより大きくして相手の顔に向けて光を放った。
今度の光は強力であった。相手は再度顔を抑えて
「目が、目が」
と叫んでいる。
やはり、目をつぶっていては試合は出来ないようである。それに今度の光は強力だったので、再度目がやられたようである。
俺はその相手の首に杖を突き付けた。
「勝者ツェーザル」
今度は副団長もすぐに言ってくれた。
その後、この武器についてどうするかという話になった。非常に卑怯な武器で騎士団としては、対人用に使うことはできないが、対魔獣用では非常に有効だということになった。
「いくつか作ってほしい」
と言われたが、
「今は旅の途中なので、王都に帰ったら考える」
と明言を避けた。
その後も騎士団の施設を見学して、その日の騎士団訪問は終わった。




