112.マルテとの再会
次の日、宿の室内遊技場に行った。そこでばったりマルテとあった。
「あれ、マルテじゃないか」
「ツェーザル、元気にしていたか」
「俺はアライダ立ちと結婚して今は旅の途中」
するとアライダ達もやって来た。そして、マルテの他にもミシェル子爵令息、マイク男爵令息、サエラック男爵令息もいる。
「どうしたんだ、みんなそろって」
「俺達か、俺たちはみんな騎士団に採用された。そして、現在はこの近くのサブレンツの騎士団に配属されたのさ。今日は休暇を利用して温泉にやって来たという訳さ」
「マルテ達は騎士団の厳しい訓練に耐えているという訳か」
「そうだな、それが仕事だし」
「たいへんだな」
「ツェーザル、お前は働かなくてもいいのだよな」
「そうだな、俺はいろいろな物を作って来たからその収益で今は遊んでいられる」
「そうか。うらやましいな」
「それだけでもないがな、遊具は工房に任せておけばいいが、そうでない物の中には工房へ行っておれが指導しないとできない物もある」
「そうなのか」
「詳しくは言えない」
「秘密か」
「そうだ」
「ここにある遊具だが、俺が考案した物もあるぜ。例えば、このリバーシ、五目並べ、王国百景、卓球台、競技遊具(平均台、鉄棒、雲梯、飛び跳ねる床)がそうだ」
「いろいろ考えたものだな」
「そうだな」
「いつまでいるのだ」
「宿は3日とった。だから今日と明日はこの宿屋だ。明後日出発だ」
「俺たちと同じだな。どうだ、明後日この宿を出たら俺たちの騎士団を見に来ないか。俺達がどんなことをしているか見せてやるぞ」
「いいのか、部外者は立ち入り禁止じゃないのか」
「そうでもないぞ、たまに貴族の見学がある」
「どういうことだ」
「俺たち騎士団はライラント王国の防衛の要だ。若し、俺たち騎士団が弱かったら、その騎士団が配置された周辺の貴族はどう思う」
「騎士団に信頼を置かなくなるだろうな」
「そうすると、いざと言うとき周りの貴族は俺たち騎士団に協力しなくなる。だから俺たち騎士団は強さをアピールする必要がある。頼られる騎士団、それが俺たち理想だ」
それから、俺は宿で温泉を堪能した。温水プールと思ってもやはり湯につかるのはいいものだ。アライダ達はマッサージやトリートメントといったスパに行った。
そして帰ってきては「肌がすべすべになった」と言っている。「そんな半日ぐらいで肌が変わるわけはない」と思っているのだが、妻たちの真剣な会話を聞いていると、「言ってはいけない言葉だ」と思った。
女性陣にとってスパとは至高のもののようで、ダンゴムシや妖精までが「スパ」「スパ」と言い出した。こいつらが行こうものならこの宿がパニックになる。
ダンゴムシと妖精には「スパは厳禁」と改めて言明した。
それから、マルテ達は、俺の作った競技遊具(平均台、鉄棒、雲梯、飛び跳ねる床)が気にっているようで、相変わらず4人で競争している。
4人が競技する姿は絵になるようで、宿の女性客が真剣なまなざしで見ている。特に容姿の優れるマルテは人気者のようだ。着地がうまく決まると「キャー」と黄色い歓声が沸き起こる。
スパ帰りのアライダ達もその姿に見入っている。ちょっぴりムカッと来るが俺には出来ないのでどうしようもない。
あいつらこのまま浮名を流して遊んでいるのかと思ってマルテに聞いてみた。
「なあ、マルテ、お前結婚はしないのか」
「俺か、俺は婚約が決まった。子爵家に婿入りすることになった。もう少し自由に居たいと思ったが、母上に押し切られた」
「そうか、それはおめでとう。式はいつだ」
「来年の春だ」
「騎士団はどうする」
「そのままさ、やめてみろ、もう外には出してもらえなくなる。サブレンツで家を借りて嫁さんと一緒に住む」
「そうか、お前ももう遊べなくなったのか。いいことだ、学院でももてていたものな」
「妻を8人ももらった人間に言われたくないな。それから『お前が結婚した』と言ったら母上が残念がっていた。『妹のアンネリースの嫁ぎ先を探さないといけない』とぼやいていた」
「そうか、それは大変だな。健闘を期待する」
「他人事だな」
「他人だ」
「そうだな」
こうして、温泉宿でのゆったりした時間は過ぎていった。そして、その後、おれたちはマルテ達とともにサブレンツの騎士団の駐屯地に向かった。




