109.ダンゴムシの披露
次の日、昨日侯爵令嬢とその赤ちゃんを森で見つけという話をしたところ、そのティムしたダンゴムシを見たいという話になった。
俺としては非常に気乗りしないのだが、男爵家の家族は興味津々である。アーダには「何も言うな。虫は普通しゃべらない」と言い聞かせてあるのだが、「何もなければいいが」と思いつつ、アーダの虫かごを出した。そして俺が
「アーダ出てこい」
と言うとアーダが虫かごから出てきて、目の前のテーブルの上まで飛んだ。そこで、もじもじしている。非常に表情豊かである。
すると、男爵が
「このダンゴムシは羽があるのですね。そして飛べるのですね。すごいですね」
そう言われると、アーダはない胸をそりくりかえしてポーズしている。すると男爵が
「このダンゴムシ非常に表情が豊かですね。まるで人の言葉が分かるみたいだ」
これはまずいと思い俺が
「ええ、このダンゴムシはある程度、人の気持ちが分かるみたいで、褒められたと思うと、このような誇らしげなポーズをとるのですよ」
すると男爵家の兄の子供が
「それにしても、このダンゴムシ、ぶっさいくだよな、足も短いし、手も短い、顔なんてどこにあるのだ」
するとアーダが切れた。
「こら、ガキんちょ、そこになおれ、私が成敗してくれる」
すると、男爵が
「ダンゴムシがしゃべった」
と言いだした
もう仕方がないと思い、俺が
「このダンゴムシは少し変わっていて人の言葉が分かるし、話をすることもできるのですよ。でもこんなことが知られると、研究対象にされて解剖とか言われるかもしれないのでこれは内密にお願いします」
と言った。
するとアーダが
「研究対象、殺される」
と言ってガタガタ震え出した。そして、すぐに虫かごの中に入って行ってしまった。「これでアーダもあまり人前に出てこないだろう。いい薬だ」と思った。
そして、俺は、
「くれぐれも内密にお願いします」
と言うと、男爵が
「わかった。おいお前たちもこのことは秘密だぞ」
と言ってくれた。
さっきから何も言わない男爵夫人が不思議なのでよく見ると、気絶していた。
その後、俺たちはイメルラの案内で市内を観光することになった。
まず行ったのは遠くからもよく見えた聖堂。これは男爵邸からすぐ近くだ。というか街自体小さいので、移動は馬車でなく徒歩で行くことになった。
近くまで行くと塔はこれまで見てきた塔の方が高いが、こちらはこの塔が小高い丘の上にあるので遠くからでもよく見えたことが分かった。塔は正面には赤と白を基調とした四角い塔が2つセットになっていた。その後ろにもいくつか同じような赤と白で統一したカラフルな塔があった。
中に入ると、イルメラはシスターに話をしてくれた。するとシスターがパイプオルガンを弾いてくれた。そのパイプオルガンの荘厳な響きの中、司祭から説明を聞いた。
映像と音楽が合わさると胸にグッとくるものがある。「魔力でも乗っているのかな」と思ったがそれはないようだった。
司祭の説明では、この聖堂は昔ここに建てられていた修道院が元になっているそうだ。修道院が火災で燃えた後、再建することになり、広くこの町の市民やイルメラの領主一族からの寄付と浄財が集められたそうだ。その寄付の中には王家からの支援もあったそうである。
だから、この聖堂は国の宝だそうだ。そこまで行くと「ほんとうかな」と思ってしまうが、ここはイルメラの実家、逆らわないことにした。
聖堂の中は白を基調とした荘厳な趣である。天井が高い。天井にも何か描かれているが、よくわからない、俺には絵を鑑賞するという趣味はない。
また、中にもお待ちかね聖遺物があった。ひょっとしたらこの国にはどこに行っても聖遺物があるのではと思ってしまう。
若し俺が将来、偉業を成し遂げれば、俺が訪問したところにはすべて聖遺物が備え付けられるのだろうか。しかし、「それはないだろう」というのが俺の見解である。「生活魔法」では魔獣は倒せない。俺が勇者になることはない。
そんな事を考えていたら説明が終わっていた。説明してくれた司祭と荘厳な雰囲気を醸し出すためにパイプオルガンを演奏してくれたシスターには悪いが、俺は説明はほとんど聞いていなかった。
その後、俺たちはイルメラの案内のもと、先ほどの聖堂と同じ赤と白を基調としたカラフルな色の家が立ち並ぶ一角に来た。まるでおとぎの国に来たような感じである。
これが夏なら通りに椅子とテーブルを並べて、ここでビアガーデンとしゃれこむのだろうが、今は冬、寒いので店内に入った。そこでイルメラのおすすめ料理を頂くことになった。
出てきた料理はジャガイモとキャベツの漬物、パン粉をまぶした肉の食べ物、前世のカツ丼だと思ったのだが、さて、どうだか。味は似ていると思った。それと飲み物はビールだった。ビールは護衛に譲って、俺はジュースにした。
その後もこのカラフルな町で午後を過ごした。そして夕方男爵邸に帰った。




