102.竜殺しの英雄の城
「イルメラの実家ランブルグに行くまでに、どこか行くところはないのか」
と、イルメラに聞くと
「トランペットブルグ城という城があります。竜の城だそうです」
「なんか面白そうだね」
竜殺しというと前世の〇〇ベル〇ゲンの歌が有名だ。主役の名前は思い出せない。そんな筋骨隆々の戦士の名前は前世でも興味がなかった。
竜殺しの英雄、俺には縁のないものだ。正直って「あっち行け」と思ってしまう。しかし、英雄叙事詩というのは女性陣は焦がれるようである。
アライダ達はもとより、ダンゴムシのアーダまでが、馬車の中でうっとりしている。妖精たちも鳥かごから出てきて、
「竜殺しの英雄、竜殺しの英雄」
と言って、飛び回っている。
あまり気は進まなかったが、行ってみることにした。それにコルンナ市を出てちょうど1日の距離にあるので、どこかで宿泊しなければならなかったのでちょうどいい。
俺たちの馬車は街道を途中から川沿いの街道に変更して走った。そして夕方ごろ、城のある町に着いた。宿は川べりの道に面したところにある宿にした。
宿は急ぐ旅でもないので5日間、29人で1日金貨5枚、田舎だけあって、コルンナ市の宿より安かった。5日で金貨25枚。また俺の金で払った。
宿に入って、部屋から見下ろすと川が見える。川には船も泊まっているので、たぶんあれは遊覧船だと思う。すると舟遊びが出来るかな。
次の日の予定を相談した。まず明日2日目は城を見に行く。3日目は舟遊び。4日目は買い物。「こんな田舎町で買うものがあるのか」と言ったのだが、女性はとにかく買い物が好きなようで押し切られた。ダンゴムシまでが買い物をするというので、前回みたいに騒ぎになると困るので「ダンゴムシは部屋で待機」と言っておいた。5日目はカフェ巡りとなった。
次の日、俺たちは朝早く宿を出て城に向かった、全員で29人、せっかくだから虫かごと鳥かごも持ってきてあげた。アーダと妖精たちには昼行燈で姿を隠蔽するように言いつけた。また、合図するまでは虫かごと鳥かごから出ないようにも言いつけた。
アーダが
「私は9番目の妻なのにこの扱いはあまりにもひどい」
と言って抗議したが虫の言うことなので無視した。
馬車で城の近くまで行った。そこからは徒歩である。昔はここに城主がいたらしいが今はだれも住んでいないらしい。でも、竜の伝説の城なので、観光客がいっぱい来るらしく、管理人がいるそうだ。城の前で管理人に、「城を見せてほしい」と言うと了解が得られたので中に入った。
竜殺しの英雄の城ということで期待していたのだが、中はまるっきり個人の邸宅だった。うちの男爵邸よりは立派だが、実家の公爵邸よりは落ちる。
イルメラは誇らしげに語っていたが、なんかがっくりである。アライダ達を見ると、
「この城よりツェーザル様の公爵邸の方が立派じゃないですか」
感想としては素直な感想だが、イルメラに悪いような気がした。
しかし、当のイルメラも
「そうですね、昔見た時はすごいと思ったのですか、ツェーザル様のネルデンベルク公爵邸の方が立派ですね」
あまり気にしていないようなので、俺の取り越し苦労だったようだ。
お城はすぐに見学が終わってしまった。せっかく自然の中に来たのだしと思って、ダンゴムシや妖精を外に出してあげた。しかし、外に出たら
「寒い」
と言って、俺のあたりに集まってきた。
そして
「この寒さを吹き飛ばすために熱い口づけを」
とか言っている。
そんなことをしたら、寒さどころか俺が吹き飛ぶ。無視した。
山頂に展望台があるというので行ってみた。山頂に行くと絶景である。眼下に川が流れ川面に反射した光がキラキラ光ると思ったが、今は冬、曇天の空からは光は漏れてこない。冬枯れの大地は灰色に広がっている。くる季節を間違えたと思った。
でもそこに遺跡があった。これこそがドラゴンの伝説になった遺跡である。英雄が苦難の末に竜を倒し、その返り血を浴びて鋼鉄の体になったという所らしい。
しかし、何も感じない。なんか廃墟と言った感じで、壊れた石の塊があるだけである。同じ転生者のアーダを呼んで
「何か感じるか」
と聞いたが、
「?」
分からないらしい。
やはり俺たちは転生者と言っても神から使命を帯びた訳じゃないし、所詮雑魚、英雄の伝説の場所を見ても何も感じないらしい。
若し俺達に使命があるなら「生活魔法、甘美の香り」以外にもチートスキルがあるはずだ。それにアーダにしても、確かに魔力量は多いが、戦えるスキルは何も持っていない。先日獲得したスキルも「超絶美少女への変身、継続時間10分」なんて、とても戦えそうでないスキルだ。
その後俺たちは昼食をとって夕方宿に帰った。冬枯れの景色だったが、ダンゴムシと妖精には久々に自由に飛び回れる世界はいいようで、帰ってきてからも、興奮が冷めないようだった。




