19 海の楽園
◇◇◇
嵐のような激情のあと、二人はしっかりと手を繋いで海へと歩き出した。
まだ熱が燻る、どきどきと高鳴る胸。羞恥心を振り払うように、ピアラはひとつ深呼吸をする。
ピアラが胸まで海に浸かるくらいの深さで、カイはピアラの両手の指を絡めて、しっかりと握り直した。
「このくらいの深さで、一緒に潜ってみよう」
「いいわ」
ピアラが緊張気味に頷くと、カイはふわりと微笑んだ。
「大丈夫だ。絶対に離さないから」
すうっと大きく息を吸ってから、二人同時に海の中へ。
ピアラはぎゅっと目を瞑り、一生懸命息を止めていた。そこに、ツンツンと指先で鼻先をつつくカイ。
恐る恐る目を開けると、目の前に美しい海の光景が広がっていた。
色とりどりの魚に、揺れる海藻。少し離れたところには、美しい珊瑚礁が広がっている。
夢のような光景に、こぽり、と思わず息を吐く。
慌てて海面に上がろうとするピアラに、カイがそっと口付ける。
そのまま抱き合いながら波にさらわれて、更に沖に出る二人。一度海面で呼吸を整えると、もう一度海へ。今度は、もっと深い深い所まで。
繋いでいた両手を片方離して、ゆっくりと二人で泳いで行く。
気がついたときには、もう息苦しさを感じなくなっていた。
まるで水を得た魚のように、体が軽く感じる。水の中でも大丈夫なようにと選んだシンプルなワンピースの下から、魚の尻尾がぴょこんと顔を出しているのに気付いたピアラは、びっくりしてカイを見た。
カイもピアラの体が変化したことに気が付くと、海亀の姿に。
ピアラは海亀になったカイの背中に乗ってみたり、一緒に泳いでみたり。
そうしてどこまで来たのだろう。
遠くに、美しい神殿が見えた。
二人で顔を見合わせたあと、一緒に海面へ。
「はぁ!」
ピアラが海面から顔を出すと、カイもまた人間の姿に変わり、海面から顔を出した。
「見つけた!」
「本当にあったんだな」
クスクスと笑い合う二人。
そのまま、またキスを交わす。
パシャパシャとピアラの尾が水を揺らした。
「見て。本物の魚になっちゃった」
「その尾びれも最高に綺麗だ」
「あなたと私、泳ぐのはどっちが早いかしら?」
「競争してみる?」
二人はくすりと笑い合うとそのまま海へ。
結局その日、夕方過ぎまで海で過ごした二人がクタクタになって帰城すると、カイは侍従にこっぴどく叱られてしまったのだった。




