13 花嫁にふさわしいのは?
◇◇◇
「あら、ようやく来たの?」
姉姫たちの元を訪れたピアラに、姉姫たちの一人が声を掛ける。
「セレフィラ姉さまもいらしてたんですね」
「あら、来ちゃ駄目みたいな言い方ね」
「隣国、アルデバーンの王子と婚約を結んだと聞いてますわ。お忙しいのではなくて?」
「ああ、その話ね。断ったわ」
「断った?」
「だって、絵姿と違って醜いんですもの。顔にびっしり、そばかすがあるのよ?信じられる?ゾッとしちゃったわ。あんな顔を毎日見て暮らすなんて、わたくしには耐えられないわ」
「そうよねぇ。わたくし達ほど美しくとは言わなくても、せめて見られる顔が良いわよねぇ」
口々に同意する姉姫たち。
この人たちは、相変わらずだ。人の価値を外見でしか、判断できない。
「でもね、隣国との関係が悪化するのも避けたいでしょう?そこで、良いことを思いついたの。わたくしが代わりにトルティアに嫁ぐから、ティアラ、あなたがアルデバーンに嫁ぎなさいな」
「はぁ!?何言って……そんなこと、できるわけ無いでしょう!」
「あら、聞けばもう何日も、陛下と顔を合わせてないのでしょう?やはり、お前のことを気に入らなかったのよ。このわたくしが代わりになると言うの。不服なんて無いでしょう?お父様もきっと、お喜びになるわ」
長姉のセレフィラは、姉たちのなかでも特に華やかな美貌の持ち主だ。艷やかな黒髪に、真っ赤な唇。大輪の薔薇のように美しく、自信に満ち溢れている。自分を愛さないものなど、存在しないとすら思っていそうだ。
「国同士の政略結婚が、姉さまの都合でどうこうできるものですか!」
思わず吐き捨てるように言った言葉に、セレフィラはにやりと微笑む。
「カイ陛下はすでに私に夢中だから、あなたなんかには目もくれない、とは言わないのね。いえ、言えないのかしら」
「下品な言い方はやめて」
「あら。私たちの美貌で夢中にできなければ、他にどんな方法があるのかしら。お前には、他に取り柄があるとでも?お前だって、その美しい顔の他に、取り柄なんて無いくせに」
「わたしはっ!わたしは、カイ陛下と……心を通わせているもの」
「ふ〜ん?本当かしら?」
「あの人は私の夫よ。手を出さないで!」
「夫ねぇ。白い結婚なんでしょう?だったらまだ、正式な夫婦とは言えないわよ。あなたたちも、そう思わない?」
セレフィラの言葉に、くすくすと笑いながら同意する姉姫たち。
「そうね。カイ陛下なら、わたくしも考えてみてもいいわ」
「わたくしは嫌。気の利いた言葉も言えない男なんて、野蛮だもの」
「見た目より、この国が魅力的よね」
好き勝手にさえずる姉姫たちに、ピアラの苛立ちは募る。
「いいわ。賭けをしましょう。誰が花嫁にふさわしか、カイ陛下に選んでもらうのよ」
「そんな賭け、誰が受けるものですか」
「あら、怖いの?」
「怖いのね。選ばれる自信がないのだわ」
「──もういいわ。勝手にしたら」
ピアラはドレスをきつく握りしめる。
相手にするのすら、馬鹿らしいわ。
そう自分に言い聞かせると、ピアラは姉姫たちを残して、部屋を後にした。




