12 傲慢な姫君
◇◇◇
「わざわざ来てあげたのに、カイ陛下に会えないなんてがっかりだわ」
用意された豪奢な小宮殿で、思い思いに寛ぐ姉姫たち。
「それに、あの子まで寝込んでるんですって?海で溺れたって聞いたけど、本当かしら」
「カイ陛下に相手にされなくて、海に身投げしようとしたとか?」
「嫌だわ、あの娘がそんな殊勝なタイプに見える?大方波打ち際で遊んでて、うっかり溺れただけでしょ」
「全く、恥ずかしい娘ね」
普段メイドたちにも分け隔てなく優しいピアラの悪口を言う姉姫たちに、内心ムッとするメイドたち。
(お美しいと思ったけれど、この方たちはなんて意地悪なのかしら!ピアラ様とは大違いだわ。ピアラ様のお姉様でなければ、たかが小国の姫が、こんな厚遇は受けられないと言うのに)
ピアラのおかげとも知らず、厚遇されて当たり前、と言わんばかりに傲慢な態度に、誰もが呆れ返っていた。
◇◇◇
「お姉様たちが来てるの?」
「そうなんです!いきなりやってきたくせに、国賓として離宮でわがまま放題に振る舞ってるそうですよ。全く、厚かましいったら……」
ソフィアの報告に、ピアラは眉をひそめた。
「どうして突然お姉様たちが?」
「さぁ?姫様の様子を見に来たと仰ってましたけど」
ソフィアの言葉を、ピアラは鼻で笑う。
「その割には、一度も私のもとにいらしてないわね」
「全くです。姫様が寝込まれていたのをいいことに、旅行気分で羽根を伸ばしているに違いありませんわ」
「──カイ陛下は?」
「それが、ここ最近お忙しいみたいで。私もお姿を拝見しておりません……」
「そう……」
ピアラは窓際に飾られた花をそっと眺める。ピアラの部屋には、毎日カイからお見舞いの花が届けられていた。
「あの、カイ陛下は、決して姫様のことを蔑ろにしているわけではないと思いますよ……」
「いいのよ。大国の国王ですもの。忙しいのは分かっているわ」
「姫様……」
溺れたピアラを助けたとき、もしかして、脚を見られたのだろうか。この忌々しい鱗を。それならもう、ピアラのことを、美しいと思わなくなったのかもしれない。
「それよりも、お姉様たちにお会いしようかしら」
「仕方ありませんね。姫様がお会いしないと、いつまでも帰りそうにありませんから」
「仕度を頼めるかしら」
「お任せください!とびっきり華やかに美しく装って、姫様の美しさを見せつけてやりましょう!」
「……そうね」
沈んだ様子のピアラを心配そうに見つめるソフィア。
「誰が何と言おうと、姫様は美しいですわ」
その言葉に、胸が痛んだ。




