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勝ったらしい

「これでどうだ!」


 ズバッと残念な剣聖がリザードマンを袈裟斬りにしたらしい。


「なにっ、これでもまだ立ち上がって来るとは、化け物か!」


 おい自称勇者よ、言うまでも無く相手は魔物だ。化物だ。幻だけど。

 勇者パーティは全員が肩で息をしている状態だ。そろそろ終わらせるか。


「ニーナ、もう良いだろう」


「分かりました。終わり方ですけれども、炎で焼かせましょう。私やケインさんが付けた傷が隠せますから」


「トカゲの焦げた臭いは鼻に付く。だけどあいつらの勝利にはピッタリかもな」



◯▲△

エミリー視点


 魔王軍の四天王配下の16将と聞いていたけれど、やはり一月前に討伐した序列60位よりも格段に強い。

 でも勇者、剣聖、賢者、そして聖女の私は世界に唯一無二の存在であり、スペシャリストが揃ったこの勇者パーティは全世界の希望だ。負ける訳にはいかない。

 でもこのリザードマンは強い!

 皆が満身創痍で私の治癒でも追い付かない!


「弱点は無いのか?」


 異常な程に素早くて剣では捉え切れないし、魔法も狙いが絞れない。

 その時の私はゴブリンの群れを数人の仲間と討伐したクリスの事を思い出してみた。

 そうだ、クリスが言っていた事を思い切ってロバート殿下に意見してみる。不敬とか言われてもここで死ぬよりかはマシよ!


「恐れながら殿下、バラバラに動いてはいけません」


「何だ、俺に意見するつもりか?」


「あっ、いえ。もっと特性を活かして戦うべきかと思いまして。申し訳ございません。失礼しました」


「フン、平民の分際でもっともな事を言う。まぁいい、特性か。なら勇者である俺の魔法で決める。お前らは援護しろ!」


「御意!」


 賢者様が詠唱を唱え始めると剣聖様がリザードマンに斬りかかる。

 始めこそは凌いでいたリザードマンも剣聖様の勢いに押されて追い込まれて行く。

 しかしここからが厄介でリザードマンは剣聖様が大きく踏み込むと炎を吐いて誰も近付く事が出来ない。

 その時だった。


「ウォーターボール!」


 賢者様の魔法が炸裂した!


「これでは俺は倒せん! 俺を上回る炎でも有れば話は別だがな!」


 賢者様の魔法でも倒せないなんて。リザードマンは勝利を確信したかの様に立ち尽くす。


「これならどうだ! ファイヤーボール!」


 ガードが甘くなったリザードマンに殿下の魔法が炸裂した。


「勝った!」


 剣聖様が思わず叫んだ。

 私達、勇者パーティの勝利だ!



◯▲△クリス視点



 どうやら終わった様だ。そして勝ったらしい。この光景はいつ見ても滑稽でしかない。


「それでは焼きますね」

 

 ニーナは淡々とリザードマンの死体に手を翳すと無詠唱でえげつない炎を出す。

 一応はファイヤーボールで焼けた体でお願いしたいのだけど。

 

「奴らのレベルは上がった?」


 実際には戦っていなくてもイメージトレーニングとかでそれなりの稽古にはなってしまったかも知れない。

 

「そこはご安心下さい。ごっこ遊びと同じですから。今回のリザードマンの強さも調整してあります」


「そうね。今見たけど弱いままよ。あのインチキ賢者と残念な剣聖は元はそれなりだったけど、こんな事して遊んでるのよ。順調に弱くなっているわ」


 勇者パーティでも元から弱かった勇者とエミリーは弱いまま、元は強かった2人は弱くする。

 それが俺達のやり方だ。

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