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何故か気になる エミリー視点

 彼を見ると何故かクリスを思い出してしまう。その彼が行ってしまった。


 彼の率いるパーティは私達勇者パーティの露払いとして、私達が滞り無く旅が出来る様にしてくれている。

 そのお陰で私達は今回の様に魔王軍の幹部との戦いはしても突発的に魔物と遭遇した事は1度も無い。

 彼を労おうとも心配しようとも、何を言っても彼の返事はいつも氷の様に冷たく素っ気ない。

 原因は分からないけど彼が私を嫌っている事は痛感している。


◯▲△


「明日はそのリザードマンとやらを討ち取りに行くぞ。また今回も楽勝だろうがな!」


「御意にございます。殿下は勇者として戦われ連戦連勝。唯一つ懸念が有るとしましたら、そのリザードマンが逃げ出さなければ良いのですが」


「先程の露払いによれば魔王軍での序列は四天王の下の位との事でした。我らにとっての暇潰し程度にはなって欲しいものです」


 賢者様と剣聖様だ。お2人のご先祖様は200年前に魔王を封印した大賢者カール、そして剣聖エセル。普通に学校で習う様な偉大な歴史上の英雄だ。

 それに比べて私は山深い辺境の村娘でしかなかった。

 ずっとあのままなら良かったのに。


 あの日、私の18歳の誕生日。私は愛するクリスからプロポーズされて幸せの絶頂にいる筈だった。

 それが国中で聖女探しが始まり、辺境の山村にまで調査の神官が訪れた日が私の誕生日だった。

 結婚すれば娘とは言えない。私の誕生日があと1日早かったら私は聖女にならずに済んだかも知れない。



「さよならクリス、()()()()幸せになって!」


 聖女に選ばれたら断る事は出来ない。拒否権なんて無いと聞いた。

 そして私が聖女となる事への障害となる者は親であろうと恋人であろうとも拘束すると聞かされていた。

 だからクリスには私を忘れて幸せになって欲しかった。

 大好きだから。愛しているから。 

 だから悔やむ。あんな事を言って。

 なんであの時の私はあんな事を口走ってしまったの。


「クリスと付き合ってあげたけど、それは他の同世代の男よりかは良さそうだったからよ。私たちは昨日で終わりよ。いつまでも彼氏面しないでよね」


「自分でも知ってるでしょ? クリスは明らかに顔立ちも髪の色も違う。隣国の奴隷が逃げて来たんじゃないかって噂されていた事を」


 違う! 違う! 違う!

 私はこんな事を言いたかったんじゃない!

 こんな事思った事も無かった。

 なのに何故?

 どうして私の口は私の気持ちとは正反対の事を言ってクリスを傷付けるの?


「こんなの私がやる義理も義務も無いわよ!」


「殿下の仰られた通り聖女の力は勇者パーティの為、王侯貴族の為よ。平民に使う義理は無いわ!」


 王都の大聖堂に着いてからはますます私が私ではなくなった。

 心が冷たい霧に覆われてしまったみたいに、本当の私の気持ちが現れてくれない。

 お願い私、もう止めて……こんな事をもう言わせないで!

 クリスに嫌われる!


「所用を思い出しましたので」


 クリス達を追うようにそう言い残して退出した賢者様が戻って来られた。

 その直後だった。


「きゃっ!」


 目には見えない圧倒的で清らかな波動が押し寄せてきた。もしかしたらこれこそが、聖なる力?

 すると私の心にかかっていた霧が一気に晴れて、それと同時に私がクリスにした事の記憶が一気に蘇って来る。


「いやーっ!」


 思わず叫んだ。


 私が今までクリスに対してなんていう事ををしてしまったの。

 私はなんていう事を⋯⋯。


 あぁ消えてしまいたい。


評価、ブックマーク等、ありがとうございます。

評価して頂けるとモチベーションが上がりますので、

どうかよろしくお願いします


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