虹色の悪夢
「勇者パーティの露払い?」
「ええ。何でも勇者パーティが大した事ない魔物を相手にして時間を取られたり、体力を消耗する事を国王陛下がご心配なされて、それなら露払いとして勇者パーティの少し先を行かせて魔物を駆除して、魔王軍の情報を持ち帰る冒険者を募集する事になりました」
「それに俺達が?」
「はい。今の話ですとアリーさんは勇者であるロバート殿下、ニーナさんは賢者、ケインさんはあの剣聖、そしてクリスさんは聖女にそれぞれ因縁が有るようですので」
因縁持ちだから露払いって、何故?
「なんか読めて来ました。つまりリリーさんは私達がその露払いとして活躍して勇者パーティの威光を利用しろと?」
「ええ。思う所は有るとは思いますが、冒険者として魔王討伐に参加したという名誉が手に入ります。恩賞もかなり用意されています。利用出来る物は利用して溜飲を下げるのも良いかと」
「どうする? 俺は構わないが」
ケインが言った後にリリーを見つめる。腕を使える様になった凄腕の剣士とギルドの受付嬢か。本音言うと羨ましいな。こっちは振られたのに!
「私も行く当て無いので」
ニーナはちょこんと手を挙げた。その仕草は可愛らしい。
「行く先々でカールの名声を地に落としてやります」
仕草とは裏腹に言う事は可愛くないな。
「私も行くわよ。他に面白そうな事も無いし」
姉さんは1番軽い感じで決めた。
「ねぇ、露払いだから先回りするんでしょ? だったらお宝とかレアアイテムをもらっちゃいましょうよ!」
それは良い案だ。流石は成り行きとは言えマジックバックを4つも持って来た聖女。
「決まりだな」
このまま戻ったんじゃ婆ちゃんに合わせる顔が無い。何か事を成さないと。
「ありがとうございます。それでは皆さん、新しくパーティを結成すると言う事でよろしいでしょうか?」
「そうなるな」
「それではパーティの登録をお願いします」
準備のいい事にリリーは記入用紙を差し出して来た。それにはパーティ名とメンバーを記載しなければならない様だ。
「パーティ名?」
「はい。今晩中に書いて下さい。そうすれば私が上手い事やります!」
その上手い事って、つまりは不正だよな?
リリーは恐らく他の冒険者には知らせないまま募集を打ち切るんだろう。
「はい、それじゃパーティ名を決めるよ。後はクリス君、お願いね。何かいい方法は有る?」
「そうだな、それぞれ皆がパーティに相応しいと思う言葉を言ってくれ。それを組み合わせよう!」
「それなら私は、夢、ですね。このパーティで皆さんの夢を叶えましょう!」
俺は手元のメモに夢と書き込む。
ニーナもこう言う時は15歳の少女らしいな。
「私は、虹よ! 皆それぞれ悪い事を乗り越えて来たじゃない。これからの私達は雨の後の虹よ!」
姉さんらしいポジティブな意見だ。今度は虹と書き込む。
「俺は、悪だな!」
「何よそれ!」
ケインの予想しない言葉に姉さんが思わず声を荒げる。俺も真意を知りたい。
「姐さんも言っていたけど、皆は悪い事が有って今が有るだろ。その悪い事を忘れない為にだよ」
初心忘るべからずみたいな事かな?
悔しさを忘れないって大事な事だしな。
「まぁいい。後は俺か。うーん、そうだな…」
少しだけ考えたけど何となく浮かんだ言葉が有った。
「色、かな」
「色?」
「そう。メンバーがそれぞれの色と言うか個性と言うか、特色を活かせるパーティになれば良いなとと思って」
聞いて来た姉さんにそう答えて手元のメモに色と書いた。
「『夢』、『虹』、『悪』、『色』か」
何とかパーティ名にならないかと頭を捻らせる。
「この『悪』って何とかならないの?」
「でも案外いいスパイスになるかも知れませんよ」
夢と虹を出した姉さんとニーナだ。ニーナがケインの出した悪をフォローするのは意外だった。
「他に思い付かないんだよ」
「俺も他のパーティが使わなそうな言葉だから個性的だと思う。それぞれの個性を尊重するつもりで俺は色って出したんだから」
俺はメモをパズルの様に組み合わせる。すると虹の横に色が来た。
「虹色?」
何か使えそうだ。後の2つを組み合わせると俺達のパーティ名が完成した。
「これでどうだ?」
「あら、いいんじゃない」
「はい、私も賛成です!」
「もちろん俺もだぜ!」
全員一致でパーティ名が決まった。
「パーティ名、『虹色の悪夢』!」




