打ち明ける時が来た
「これで大丈夫です!」
剣聖は着用していた国宝級の鎧を脱がされ下着姿で姉さんの治癒を受け、その後にニーナの陰魔法の暗示を掛けられた。
ニーナによると、酒に酔って下着姿になった理由も覚えていない設定にしたとの事だった。
「あと、念の為に他の事に対しても暗示を掛けておきました」
「何に対してだ?」
聞き返すとニーナは言い辛いのか少し俯きモジモジし始めた。顔も少し赤い気がする。
「世の女性の為です」
言葉を濁すな。
「だから何の事だよ?」
「もう、言わせないで下さいよ!」
「言えない事なのか?」
「あっ、いえ、その…」
やはり言い辛い様だ。ニーナは15歳の少女だ。それが顔を赤らめるとなると原因は絞られる。
その点俺の中身は40歳だからな、何となく察した。うーん、確かにニーナには言い辛いか。
「勃たなくしたのか?」
するとニーナの顔は一気に真っ赤になった。
「ちっ、違いますよ! 何て事を言うんですか、乙女に対して!」
真っ赤になって早口で反論する。でも意味は分かっているじゃないか。
って、今のはセクハラだった。この世界ではコンプライアンス的にギリギリセーフみたいだけど、気を付けよう。
「女性に対して興味を持たなくしたんですよ!」
そんな事が出来るのか?
「こんな剣聖はエセルさんの名誉を汚すだけです。エセルさんだってきっと草葉の陰で泣いてますよ。だからもうこの血が繋がらない様にしました。流石に人格まで変えるのは気が引けたので。親戚はいるでしょうから、エセルさんの血筋はそっちで繋いでもらいましょう」
それはちょっとどうかと思うが、確かにこの下着姿では剣聖の名誉を汚すだけだ。
このあと意識を取り戻した時の剣聖の様子は見たかったが俺達もそこまで暇じゃない。後ろ髪を引かれる思いでその場を後にした。
ちなみに後で聞いた話だが、別の物取りの仕業なのか俺達が残した下着まで取られた剣聖が王都の往来であお向けで大の字になって寝ていたそうだ。
当然、全裸で。
◯▲△
剣聖との戦闘の後、その足で向かったのは冒険者ギルドだ。意識を取り戻したリリーに誘われて。
流石のギルドもこんな時間は閉まっているのだがそこは受付嬢。鍵を持っているので出入りは自由だ。
「色々と有ったけど、最終的には全員でこのテーブルに付いている事を喜びたい。乾杯!」
主にギルマスへの来客に出される特別な酒をリリーが出してくれたお陰で乾杯は出来た。その後の話題は当然ながら剣聖との戦いを振り返る事になる。
「そう言えばさぁ、アンタらって一体何者なんだ?」
いくら何でもそう思うよな。ケインは普通の人なら抱くであろう疑問を口にした。これはもう誤魔化せないな。
「これは絶対に守って欲しい事なんだ」
俺は簡単に姉さんが完璧聖女である事、ニーナが200年前の真の大賢者である事をケインに告げた。
「凄え! だからあんな事が出来るんだ?」
「くれぐれも内緒で頼む」
「それじゃ剣聖の投げた短剣で本当なら私は死んでいたんですね。ありがとうございます!」
リリーは目を大きく見開いて姉さんに感謝している。潤んだその瞳は輝いている。
「命の恩人の秘密、死んでも守ります!」
「もちろん俺も墓場まで持って行くぜ」
2人とも秘密厳守は約束してくれた。その言葉に嘘は無いと思っている。
「秘密ついでに俺の事も話しておきたいんだ」
姉さんとニーナの秘密を共有してケインの身の上も知った。俺だけ人とは違う点を言わないって何か隠してるみたいで嫌だった。




