左も切るの?
数ある作品の中から本作をお読み頂きありがとうございます。
今回から改題しました。
これからもよろしくお願いします。
「クリス君の腕をケイン君に移し替えるの? そんなのやった事無いわよ!」
そりゃそうだろ。この世界では移植という概念すら無いだろうからな。
ハッキリ言うと医療のレベルは低い。
薬は薬草かポーションしか無いし開腹手術なんて以ての外だ。ポーションは無いけと江戸時代の日本もこんな感じだったのかな? 時代劇のイメージしか無いけど。
盲腸で死ぬ事も有るこの世界の医療では平均寿命も短い。
そんな理由で治癒の出来る聖女は尊ばれるのだ。
その聖女がやった事が無いと言っているのでやり方を説明する。
「ケインの右腕と俺の右腕、俺の方が肘に近い所で切れているだろ。だから丁度良い所で両方をニーナのウインドカッターで切り直してもらう」
「私の魔法でそんな事を?」
「そうだ。そしてケインの新しい切断面に俺の腕を当てて姉さんの治癒でくっつける。ただ血液型が違うと」
「よく分かんないけど出来る事はやっちゃいましょ。多少の事は祝福でカバー出来るわ!」
力強い言葉だ。聖女の能力は先端医療でも難しい事でも普通にやっているから、信じるしか無い。
「右手が終わったら次は左手ですね。指を1本ずつですか? それとも大胆にバサッと切ります?」
「えっ?」
一瞬言葉を失った。右手は廃品利用のつもりだったんだけど、ノリ的に左手もってなるの?
俺、敢えて腕を切られるの?
「当然、バサッと切るべきよ。その方が合わせるのも楽よ!」
「それじゃそれで切ります!」
ちょっと待て。勝手に決めるな!
切られる側の意思は?
俺だけじゃなくてケインの同意を得ていないぞ!
「また剣を振るえるのなら何でもいい! 頼む!」
いいのかよ!
「それじゃ先ずは右手から切りますよ!」
ニーナは既に切れている俺の右腕とケインの右腕を合わせると集中し始める。
「ウインドカッター!」
ニーナの繰り出した真空波が刃となって俺の右腕だった物とケインの右腕をスパンッと切断した。
休むまもなく俺の腕をケインに合わせて接合部を姉さんに差し出す。
そのケインは流石に痛みで顔を歪めているが、覚悟を決めた男は悲鳴等は上げなかった。
「さぁ、姉さん!」
「任せて!」
そこに向けられた姉さんの両手の平が眩い光を放つ。
「うっ、うぅ…」
ケインから思わず声が漏れるが気持ちは分かる。多分だけど痒いような何とも言えない感じなんだろう。
「こっ、これは?」
「まだ完全じゃないわ。もう少し待ちなさい」
ケインに付けられた俺のだった腕がグーパーグーパーと動き出した。
「もういいわ。次は左手よ!」
敢えて腕を切られる俺からすると、次なんて簡単に言えない。
「クリスさん、右手と同じ辺りで切りますよ」
「わっ、分かった」
え~い、ままよ!
今更左手は勘弁してくれ!
なんて言えない。
「ウインドカッター!」
ニーナと姉さん、この2人の女性が居なければ俺は少なくても泣き叫んで大声を上げていた。場合によってはチビッたかも知れない。




