剣聖との戦い
「うわぁ!」
転がっていた腕、間違い無い、それは俺の右腕だ!
痛みは後から感じた。そしておびただしい出血!
「クリス君!」
姉さんが手招きしているのが分かる。姉さんの所には皆が居る。俺は必死で姉さんの所へと向かおうとした。
「それには及ばん。すぐに楽にしてやろう」
聞いた事の有る声だ。つい最近。
「その声…」
「フン覚えていたか」
昼間のあいつだ。
「その声は剣聖か?」
「フン、バレちゃ仕方ない。如何にも第12代剣聖、チャーリー=アンダーソンである」
「剣聖が俺達に何の用だ?」
「やはりどうしても目障りなかつての弟弟子を片付けに来た。そしてあの女は事を運びやすくする為に死んでもらった。それだけだ」
剣聖は淡々と言い捨てた。その声には全く熱を感じない。
「そうかい、それは残念だったな。彼女はしっかりと生きているぜ」
「なんだと!」
予想外の事に流石の剣聖も驚きを隠せない様だ。
それにしてもこの状況ではあまり考えていられないが、ケインを殺す為にリリーまで躊躇無く殺そうなんて、剣聖ってヤバい奴だな。
「ファイヤーアロー!」
俺の背後からニーナが炎の矢を魔法で放つ。しかし漆黒の鎧を着る剣聖にはノーダメージだ。
「ダメです。やはり魔法が効きません!」
「当たり前だ。これは王家より賜った魔法を無効化出来る国宝級の鎧だ。賢者殿がお前らの中の魔法使いの小娘は生かしておけば危険だと嘆いていたのでな、この場で一緒に始末させてもらう」
ニーナが危険って、あの自称賢者にとって自分の地位を脅かす存在だからだろ。
「そうですか、でもこれならどうでしょうか?」
ニーナが言い終わらない内に俺の背後が光りだした! 直視しなくても分かる。この光魔法、なんて眩しさだ!
「攻撃そのものは通じなくても目眩ましは効く様ですね」
確かに突然の大光量で剣聖が身動き取れない様だ。
直視したら目がどうにかなってしまいそうな光を背にしたまま俺は自分の右手を左手で拾うと後ろ向きで姉さん達の所へと急いだ。
そして俺を待っていた姉さんが両手を広げた。
「結界!」
「クソッ! 大人しくしろ!」
姉さんの結界は剣聖では破れない様なのでひとまず安心だが、これからどうするか。状況を解決出来る材料がない。
「ニーナの魔法が効かない相手なら姉さんの破邪はどうだ?」
「あんなに素早く動かれると当てる自信が無いわ」
「なら俺があいつの動きを止める!」
ケインが名乗り出た。その顔には決意が表れている。
「頼めるか?」
「あんたらが何なのかは知らねえが、リリーの命を救ってくれたあんたらを死なせる訳にはいかねぇ!」
そう言って振り向いていたケインが前を向いた。
「あいつの動きは分かっている。安心してくれ」
そう言い残してケインは姉さんの結界の外へと飛び出して行った。




