姉さんの過去
「とどの詰まり姉さんは、隣国の伯爵家に出入りしていた花屋の娘と、その伯爵の若様の間に出来た娘だと」
いつの間にか昨晩ケイン達と飲んだ店に移動して飲みながら話していた。
アルコールが入ると口が滑らかになる。
「そうなのよ。最初は向かい入れるなんて言っていたらしいけど、産まれた私が女だって分かった途端にお金だけ渡されて放置よ!」
「でも結果的に伯爵令嬢になったのですよね?」
1人だけシラフのニーナが聞いた。
「10歳の頃だったかしら、国中で聖女を探し出してね」
あのエミリーが聖女に見出されたあれか。
「見事に私が聖女に認定されたの。それを聞きつけた父が「今まですまなかった」なんて言って私とお母様を屋敷に住まわせたの。各国共通で聖女は王族、またはそれに連なる高位貴族と結婚させられるから価値が有ると思ったんでしょ」
姉さんはつまらなそうに吐き捨てた。
「それじゃその後は伯爵令嬢として過ごした訳だ?」
「それがね、あの屋敷には1年だけでその後は教会で聖女としての活動よ」
「完璧聖女として?」
「いえ。屋敷に居た時に私なりに聖女の事を調べたのよ。それで思ったの、治癒と結界以外は隠そうって」
「隠したのですか? 何故?」
ニーナが驚くが俺もだ。なんでだ? 理由は知りたい。
「聖女の能力でも圧倒的に多いのが治癒なの。その次が結界。それ以外は稀にしか出ないのよ。だからそれを利用したの」
「なんで?」
「祝福とか破邪とかは冗談じゃないわ。なりたくなかったのよ、そんな聖女には」
「えっ?」
聖女の能力って選り好み出来るの?
「治癒も結界も人がそれなり多い都市部に居てこそ、効率的に能力が発揮ができるわ。でも祝福なんかは国中の畑に行って豊穣の祈りを捧げなきゃいけないし、浄化と破邪に至っては冒険者とほぼ同じ生活よ! したいと思う?」
それを計算して完璧聖女である事を隠したのか。
「よく能力を隠せましたね」
「そこは何とかなるものよ。それに、それでも治癒と結界の二刀流聖女としてかなりの活躍はしたと思うの。後はもう、伯爵家出身の聖女として王太子の婚約者になった」
それは容易に想像出来る。
「18歳で結婚して21歳で離縁してその後は自由に暮らす筈だったんだけどなぁ」
姉さんは遠い目をした。
「こう考えると私の人生って、花屋の娘で10年、伯爵家で1年、聖女で7年、囚われの身で10年って事になるわ! 20代をほぼ奪われたのよ、私の人生を狂わせたあの男は絶対に許さない」
姉さんの瞳に怒りの炎が見えた気がした。




