生存者発見?
「私の方は収穫はありませんでしたよ」
ニーナが淡々と報告する。
「収穫ゼロ?」
「ゼロと言いますか、含有魔力が少な過ぎて持っていても邪魔なだけの魔石しか有りませんでした。だから遠慮させて頂きました」
「それは残念だったわね。でも私の方は大収穫だったわよ!」
微妙な表情の2人に対して姐さんは思い切りの笑顔だ。
「領主の奥方の部屋だと思うけど、まぁ色々と出て来たわよ。はいっ、リーダー!」
そう言って自分のマジックバックから銀貨で満たされた袋をドサッと出す。その数、3袋!
詳しく数えるのも疲れそうな、ヘソクリと呼ぶには穏やかではない金額である事に間違いない。
「それに見てよ!」
ジャーンと取り出した物は、眩い光を放つ宝石を散りばめた首飾りだ。
「これ、保管が厳重だったから慌てて逃げる時に持ち出せなかったみたいね。これだけ宝石を使っていくらするのか想像も付かないわ!」
姐さんがそう言うのだからとんでもない金額になるのだろう。
「やっぱりここの領主はクズね! これを買うお金だってもっと領民の為に有効的に使える筈よ」
3年前に魔王が復活して魔物が活性化してるのに大事な税金を自分の欲を満たす為に使い、領民を守る事には使わなかった。
そのクセさっきのリザードマンみたいな魔物が到来したらそそくさと逃げる。これくらい言われて当然だろう。
「収穫が有ったのは姐さんだけかよ」
「まぁ、姐さんだけでも良いじゃないですか」
「そうだな。ヨシ、飲みに行こう! 撤退だ!」
「了解!」
撤退と言うには理由が有る。
俺達は勇者一行の露払いが正式な任務だ。露払いはザコを一掃して、強敵の情報を収集する事が役目となる。
だからさっきのリザードマンを退治するのは本来なら勇者一行の役目なので俺達が倒してはいけないのだ。本当なら。
そして今日の本来の任務はリザードマンの調査だけ。それが済んだら撤退する事になっていた。
しかしそこは勇者一行に負の感情を持つ俺達だ。
俺達の本当にすべき事は、先回りして敵を全て倒して俺達だけレベルアップ! そしてお宝も全て頂く!
つまり勇者パーティの強化を徹底的に妨害する事が俺達の真の目的だ。
「ニーナ、いつもの通りリザードマンの死骸は冷凍保存な。姐さんは俺達が出たら誰も入れない様に結界を頼むよ」
「もう冷凍してありますよ」
「はいはい。いつもやってるでしょ」
それじゃ撤退だ。勇者一行が来るまで町でのんびりさせてもらうとするか。
そう思った時だった。
「助けて下さい!」
俺達が居る大広間のドアの向こうからの少年の声に呼び止められる。
「誰か居るのか?」
「そんな筈は無いのですが」
首を傾げながらニーナが不思議そうに答える。館内を捜索した時にも俺達以外に誰も居ない筈だったのだから。
「俺達だって館中探したぜ。なぁ姐さん」
「ええ。生存者なんて居なかったわよ」
でなきゃこんな収穫は無かっただろうな。
「取り敢えず保護しましょ」
「私にお任せ下さい。私が一番適任だと思いますので」
ニーナが一歩前に出た。
「もう大丈夫ですよ〜!」
すると半開きだった扉を開けて使用人の格好をした少年がヨタヨタと近付いて来る。
「大丈夫ですか?」
ニーナは少年の肩を押さえて優しく尋ねた。
「良かった。魔物は? あいつらはどうしましたか?」
「落ち着いて下さい。私達は勇者様御一行の露払いです。魔物は勇者様が近付いていると知って逃げ出した様です」
ニーナはそれらしくテキパキと答えた。
「えっ? あんなに強い魔物が?」
「流石は勇者様ですね。貴方はこの館の使用人ですか?」
「あっ、はい。正式には見習いですが」
「この館の皆さんはどうされました?」
「あいつらに…。 勇者様がもう少し早く来てくれれば」
少年は悔しさを滲ませる。それをニーナは表情を変えずに見つめている。
「仕方ありませんね。元気を出して下さい。そんな表情をされると本当の事を話したくなってしまいます」
「本当の事?」
「ええ。勇者一行より強い私達露払いの事ですよ」
それは秘密の筈なのに、何を考えているのかニーナが不敵に笑みを浮かべた。




