ケインはこうして弟子入りした
「さて、本題に入ろうか」
先代の剣聖から将来を嘱望されたケインが何故剣を持てない身体になってしまったのか。
そしてそれでも冒険者ギルドからボディガードの仕事を斡旋してもらっているのかだ。
他人のプライバシーなので聞くことに気が引けるが、この場は俺達の奢りだ。気になるから聞きたい。
「あなた達はどういう関係なの?」
姉さん、そっちかい!
「えっ、それじゃ私から」
リリーが急にモジモジし始める。その顔は飲酒も相まって心配になる程に真っ赤だ。
「ギルドの受付をしていて、絡んで来る男はさっきのみたいな冒険者ばかりだったんですよ」
さっきのみたいな冒険者とはニーナが追い払った下品な冒険者の事だな。
「そんなある日、目の前にケインさんが現れたんです!」
確かにあの連中とケインでは全然違うからな。雲泥の差だ。
「でもケインさんのこの手だと冒険者登録は出来ないので事情を聞いたんです」
「そこで話したんだ。今の剣聖に右腕と左手の指を奪われた事を」
ここで話にケインが加わった。
「今の剣聖に?」
俄には信じ難い。剣士の最高位である剣聖がそんな事を?
「俺は辺境の田舎町から立派な剣士になる事を夢見て王都に出て来たんだ。せっかく出て来た王都だ、どうせなら最高位である剣聖に弟子入りしようと思って俺は門を叩いた」
「よく弟子になれたな」
剣聖なら弟子入り希望者が多いだろうに。
「もちろんテストに合格したらだ。その試験で試験官をしていたのが今の剣聖だ。やつを相手に見せ場を作れたら合格って試験だ」
「今の剣聖が相手じゃ不可能じゃないの? 今ほどじゃなくてもその当時だって強かったでしょ。落とす為の試験じゃないの?」
姉さんの疑問はもっともだ。最初から弟子を取る気が無かったのかも知れない。
「だがそこで俺は何とか一本取った!」
「現剣聖から?」
「ああ。あっちは認めてないがな。でも先代の剣聖は手放しで喜んでくれてな、それから俺を付き人にしてくれて剣を一から教えてくれたんだ」
「基礎から教える? 次の剣聖から一本取ったのに?」
「俺の剣は我流で無駄が多かったんだ。それを身体能力で補っていただけで」
「うん、そんな感じするわ」
つまり姉さんはケインが考え無しに動きそうだと言いたいんだな。
「14歳で弟子入りして6年後、俺は20歳で剣聖一門の次席に抜擢されたんだ!」
「次席? 先代の剣聖の門下生筆頭は今の剣聖でしょ?」
「それは凄いですね。私は12歳で勇者パーティに選抜されましたけど」
話がややこしくなるから止めろニーナ。
「だがそれが悪かった。一門の筆頭で入門以来俺を目の敵にしてきた現剣聖からの嫌がらせが日に日に激しくなってな。」
「ケインさんへの妬みよねえ!」
酔ってるリリーは声がデカい。周りの注目を浴びるから勘弁してくれ。
って言うか、それ以前にさっきから酒場の酔客達は姉さんをチラ見しているんだが。
男だらけの酒場に艶っぽいアラサー美女が居ればこうなるわな。




