ギルドに到着
小走りで広場を後にした俺達は程なくギルドに到着した。
「ギルドも建て直した様ですね。私が知っている建物とは違います。雰囲気は似ていますが」
ニーナの頃のままなら築200年以上となるからな。そんな建物は日本なら程度の違いは有るが文化財とかになりそうだ。
「早く広場に戻って何か食べましょうよ!」
露店が余程珍しかったのか、姉さんが急かす。けど、あんな騒ぎが有って露店はまだやってるのかな?
「それなら、とにかく行こう」
俺達はギルドのドアを開けて入った。
入った瞬間、他の冒険者達から矢のような視線を浴びる。
「ヒュ~!」
誰かが口笛を吹いた。見れば品行方正とは言い難そうな男ばかりだ。なのでその対象は姉さんである事は明らかだ。
「これを換金したいのですが」
そんな事は無視して俺はカウンター越しに立つ受付嬢にマジックバックの中から熊の魔物の手を差し出した。
「えっと、これはダークブラッドグリズリーの手ですね。手が片方だけですか?」
受付嬢は訝しげに俺を覗き込んで来る。手だけだとそうなるわな。
「それ本当にお前のなのか?」
「フン、どうせ他の奴から盗んだんだろ」
背後から声がする。なるほど、このギルドの中に居る俺達以外の全員が疑っているんだな。
「お姉さん、そんな奴といないで俺らのパーティに入りな。俺らなら…」
ドォーン!
姉さんに掛けられた汚い声を掻き消す衝撃音がギルド中に響き渡った。
「ごちゃごちゃうるさいんだよ!」
その衝撃音を作り出した金髪の大柄な若い男が俺達を隠す様に立ちはだかってくれた。
「なんだ、誰かと思えばケインじゃねえか」
「なんだお前、そんな手だから依頼主から追い返されたんだろ。懲りずにまた来たのか」
「剣を持てない剣士なんざ生きてるだけ無駄だぜ」
剣を持てない剣士?
よく見るとその男の右手は肘の先から、左手は親指と人差し指が無い。
「剣は持てなくても俺はお前らよりも強いぜ!」
「なんだと!」
下品な冒険者達とこの金髪の男は顔見知りなのかは知らないが、余り良好な関係ではなさそうで一触即発って感じだ。
「クリス君、早く何とかしないと」
「俺が?」
俺は無視を決め込んでいたのに背後で勝手に盛り上がられただけなんですけど。ケンカを止めるとかって面倒事は本当に勘弁してくれ!
「早く換金して広場に戻らなきゃ!」
そっちかい!
それなら驚かせてこの場の空気を変えよう。度肝抜かれたらケンカどころじゃ無くなる筈だ。
「熊の手が1本なんて誰が言った?」
俺はマジックバックからダークブラッドグリズリーと呼ぶらしい熊の魔物の手を20本ほど立て続けに出した。
「こっ、こんなに?」
愛想の悪かった受付嬢が驚いている。それだけじゃない。よく見れば下品な冒険者達も口をアングリと開けてこっちを見ている。
「こんな奴がそんなに取れる訳がねぇ! きっと何処かから盗んで来たんだ!」
「さっきから失礼な事を言わないで下さい。あれは全て正真正銘、私達の獲物です」
「お嬢ちゃん、バカ言っちゃいけねえよ。あの艶っぽい姉さんとお嬢ちゃんとあの男だけでそんなに取れる訳がねぇじゃねぇか!」
「簡単ですよ。こうするんです」
ニーナは風属性魔法のウインドカッターを下品な冒険者達に浴びせた。すると彼らの服は鋭利な刃物で切り裂かれた様になり、器用に髭と髪の毛まで剃り上げていた。
「どうですか? これで信じて頂けましたか? 足りない様でしたらあの熊と同じ様に、その手を切り落としてみましょうか?」
ちょうどニーナが言い終わる頃、俺はマジックバックから魔物本体を取り出した。
ニヤリとニーナが口角を上げると、下品な冒険者達がギルドから逃げ出したのはその数秒後であった。




