ニーナは語る
「私は魔法使いですので本来でしたら後衛です。しかし魔王との対戦では先ず剣聖のエセルさんが、次に勇者のニコラスさんが戦闘不能になり、私が魔法を連発している間に聖女のキャロルさんが2人を回復させていました。結果的に私が1人で魔王と対峙した訳です」
ニーナが200年前の魔王との戦いを語り出した。
「賢者のカールは?」
戦闘に関してカールについてのコメントが無い。気になって聞いてみた。
「私の後ろで援護もせずに突っ立っていた様です」
ニーナがつまらなそうに言い捨てる。心底嫌いなんだろうと確信させるには充分な態度だ。
「勇者のニコラスさんと剣聖のエセルさんが戦線に復帰した時に勝負を仕掛けるつもりでしたが、カールがようやく動いたかと思えば余計な事を」
「何をしたの?」
「私の攻撃で倒れた魔王に対して爆発魔法を仕掛けました。魔王を仕留めたのは自分であると言いたかったのかも知れません。しかしカール如きの魔法が魔王に効く筈が無く、私と魔王の居た所の床が抜けて私達だけが下の階に落ちました」
ニーナは淡々と続ける。
「その結果、至近距離で魔王と対峙した私は出せる限りの魔法を必死に繰り出し、遂に魔王を戦闘不能にしました」
「凄い!」
「問題はここからです。いよいよトドメと言う所で私は魔力切れを起こしてしまいました。しかし動けなくなったとは言え相手は魔王です。警戒を解く訳にもいかずその場を離れる訳にはいきません。私はマジックバックの中に入れてある魔石で魔力回復するつもりでカールに投げる様に指示しました」
「その為のマジックバックか。マジックバックは助手のカールが持っていたの?」
「はい。その為の助手ですから。しかしカールはマジックバックを投げずに自分で持って来ました。そして魔王に向き合ったままの私に後ろから言いました。「お疲れ様でした。この功績で大賢者ですよ。私が!」などと抜かして、あろう事か私にマジックバックを被せて収納してしまったのです!」
「酷い話だな」
「ですよね! そう思いません?」
姉さんは首を傾げながら何か考え込んでいる様だった。
「確か200年前の魔王との戦いでは賢者カールの付き人である魔法使い1人が戦死。その遺体は魔王の炎で燃え尽きてしまったと記録されているわ。そして魔王は勇者、剣聖、聖女、賢者でも倒し切れずに封印したって話だった筈よ」
「倒し切れずに封印ですか。そりゃそうでしょうね。勇者パーティの最高戦力である私が戦線離脱したのですから」
「つまりカールの証言1つで記録が変わったって事か」
大賢者となったカールはそれなりに権力を持つ様になった。そこで何か上手い事を言って、4重もマジックバックでニーナを封印したのだろう。
「それにしても魔王も復活ですか。カールの封印にしては長持ちしましたね」
「ねぇ、今の話だけど人には話さない方がいいわ。真実はそうでも」
「俺もそう思う。それまでの常識を覆すのは簡単じゃない。時間と労力を費やしてようやくだ。それに200年前に15歳って事は、215歳って事になるだろ。そんなの誰も信じてくれないと思うし」
「なんですか、私は15歳ですよ! お疑いでしたらどうぞ見て下さい。魔法は解除しました。隠す事は何も有りません!」
ニーナが堂々と言い切った。その顔は何だか自信に満ちあふれている。
「それじゃ遠慮無く」
姉さんは改めてニーナに向かって手を翳す。
「なにこれ、凄い!」
姉さんにだけ分かるのだろう。俺には全く見えないが、凄いステータスに違いない!
「全ての魔法のレベルが最高よ!」
「信じて頂けましたか?」
「凄いわ! 炎、水、風、土、氷、雷、光、陰の全ての属性魔法のレベルが最高のSよ!」
「年齢は分かるの?」
「ええ」
「15歳ですよね? ね?」
ニーナは探る様に、そして祈る様に確認する。
「ちょっと待って、読み上げるから。ニーナ=ブライトン、職業は賢者、年齢は15歳!」
「やったー!」
ここまで読み上げられたニーナは喜びの余りガッツポーズまでしている。
「えっと、まだ見えるわよ。え~と身長は150、それで上から76、58、83…」
「それは言わないで下さい!」
そんな事まで分かるのか、凄いな聖女!




