ニーナに何があったのか
「私は決して怪しい者ではありません!」
マジックバックから出て早々、姉さんに迫られたニーナは怯えながらこう叫ぶと俺の陰に隠れてしまった。
「聖女を舐めんじゃないわよ! ここまでご丁寧にしまい込まれていたアンタの正体を見てやろうと思ったのにしっかりとガードされているじゃない!」
姉さんが構えを崩さずに続ける。
「何者なの? 返答によっては本気で消すわよ!」
「まっ、待って下さい。私は怪しくありません!」
「怪しい奴は大体がそう言うんだが」
「貴方までそんな事を言わないで下さい!」
「話は聞くわ。取り敢えずクリス君から離れてそこにお掛けなさい」
姉さんはニーナに椅子に座る様に促した。するとニーナは足取りも重く、そっと腰掛けた。
「私の能力の1つ、祝福で人の状態が分かるの。でも貴女はしっかりとガードされていて見られないのよ。そのガードは陰魔法ね」
「はい。確かに私は常日頃から陰魔法で自分の状態を隠しています。いつ狙われるかも知れない身でしたので」
聖女の能力でそんな事が出来る事に驚きだけど、それを隠せるこのニーナも凄い。
「その陰魔法、貴女の封印に使われてた陰魔法よりも遥かに強固ね。どういう事?」
「当たり前です。あいつと一緒にしないで下さい」
ニーナの目つきが急に険しくなった。そこまで嫌うあいつって誰なんだ?
「あいつって?」
「私が封印されてどれくらい経ったのかは知りませんが、もしかしてカールって魔法使い、有名じゃないですか?」
「カール? もしかしてあの200年前に魔王を封印した大賢者カール?」
「200年前? 魔王の封印から200年も経っているのですか?」
「何を常識的な事を言っているのよ。魔王は200年前に勇者パーティに封印されて、3年前に封印が解けて復活したでしょ」
「…そんな、あれから200年も経っていて…魔王が復活していたなんて…」
ニーナはこの世界の人間なら誰でも知っている事にかなりの衝撃を受けている様であった。
「私、ニーナ=ブライトンは200年前に勇者パーティの一員として魔王を追い詰めた魔法使いです。他人は私を賢者と呼んでくれていましたがそれはカールに奪われてしまった様ですね」
200年前に魔王を追い詰めたのは賢者カールではなくてこのニーナ?
「私は物心付いた時から魔法使いであった祖父の下で修行を始めまして、10歳になる頃には一端の魔法使いとなりました。1人前の試験では翼竜を仕留められる様になりました」
「10歳で? 本当なら凄い天才よ!」
「それ程でもありません。その後、魔王による世界征服が現実味を増してきましてね、当時の世界最強の魔法使いであった祖父の所にも参戦の要請が来ましたが、高齢の為に辞退しまして代わりに私が勇者パーティに加わり魔王を倒しに行く事になりました」
「10歳で魔王討伐の旅に出たの?」
「騎士団の魔術部隊に加わり実戦の経験を積んでからなので旅立ちは12歳になってからです。騎士団は魔族の軍隊と戦うので良い経験になりました。そして3年の旅の末に魔王と対峙したのです」
「200年前の勇者パーティか」
「ええ。メンバーは勇者、剣聖、聖女、賢者の称号を得た私、そして魔力切れを起こした時の為に私の助手として兄弟子のカールでした」
「あの賢者のカールが兄弟子?」
「しかも助手って何?」
「カールは祖父の下で20年近くも修行していましたが、私が追い越しました。以来何かと妬まれます」
伝説の賢者が凄い言われようだな。




