出て来た少女
「姉さん、マジックバックの中身はカツラだ!」
よく見たら女性用っぽいから、ウィッグと呼んだ方が良いのか分からなかったがカツラはカツラだ。
「確かに、人によっては重要な秘密ね」
「セグロット王国の王城の宝物庫に保管されていたんでしょ。王族のカツラなんじゃないかな?」
気持ちは分からなくも無いが、ここまで厳重に隠すのか?
それに使う時に不便極まりないだろうに。
「戻すわよ!」
「えっ? マジックバックだけでも価値は有るよ」
「それじゃカツラごと何処かの商人にでも売り付けましょ。無駄な労力と時間を費やしてしまったわ!」
そのカツラは触れられる事も無く再び長い眠りに就かせるべく姉さんがマジックバックを閉じようとしたその瞬間だった。
「アーッ、あうぁ、ちょっと待って! 待って下さい! 閉めないで! 閉めないで下さいぃぃぃ!」
もう少しで閉まろうかとしているマジックバックの中から声がする。声からして少女の悲痛な叫びだ。
「カツラが喋った?」
「カツラじゃありません! 人間です! 人間が入っています!」
「人間?」
「この中に?」
まさかマジックバックの中に人間が入っているなんて思いもしない俺達は顔を見合わせた。
「カツラだと思われているのは私の頭です!」
言われてみれば頭頂部だ。
「お願いです、引っ張り出して下さい!」
「でも貴女、凄く厳重に封印されていたわよ。何者なの?」
「私はニーナ、ニーナ=ブライトンと申します。詳しくは後程ご説明致しますのでお願いです、引き上げて下さい!」
彼女が何をして封印されていたのかは分からない。でもこの必死な訴えを聞く限りは悪人ではなさそうな気がする。
「姉さん、引き上げてやろうか?」
「本気? 王宮の宝物庫の奥に何重にも封印されていたのよ」
「仮に悪い奴なら姉さんの餌食になるだけだろ?」
「餌食って嫌な言い方ね。私が血に飢えた獣みたいじゃないの」
確かに言い方が悪かったな。姉さんが不貞腐れてしまった。
「あの私、絶対に悪い奴ではありません! 人に裏切られてこんな事になっただけなんです!」
再び悲痛な叫びが響く。
「裏切られた? つまり、陥れられたって事?」
「はい! そうです!」
「なら助けて上げましょ。ね、クリス君」
「俺はさっきから助けるって言ってるけど」
人に陥れられたって所に姉さんが共感したみたいだ。
さぁ、人を引っ張り上げるんだ。しっかりと腰を入れないとな。
「んぐだっ! いだっ! 痛い!」
「我慢しろ! 持つ所が無いんだ」
頭頂部しか出ていない人間を引っ張り上げる場合、頭を思いっ切り掴むしか無いだろ。髪の毛を引っ張る訳にもいかないだろうし。
「せーの!」
俺は両手で赤い髪の上から頭を鷲掴みすると、力を入れて引き上げる!
「いたたたた!」
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悲鳴と共にマジックバックから少女が一気に出て来た!
女性とは分かっていたがその姿は意外にも、赤い髪をツインテールにした10代半ばの小柄で可愛らしい少女だ。
「ハァハァ、ありがとうございます……」
ニーナと名乗った少女は出て来るまで俺が頭を掴んだ痛みに耐えていたからなのか、呼吸が荒い。それでも感謝を忘れていない事には感心する。
「大丈夫?」
姉さんが治癒をしようとしたのか、手をニーナに向かって翳す。ニーナは特に怪我もしてないのに変だな。
「あれ?」
姉さんの表情が急に険しくなった。どうかしたのか?
「ニーナさんって言ったわね。貴女、何者?」
姉さんは敵を射殺すかの様な視線と光る掌をニーナを向けていた。




