マジックバックの中身は?
部屋に入り落ち着いたしマジックバックの確認をしなければ。
弓は入っていても矢が無いとかはもう御免被りたい。
「旅に必要な物が入っているって言っていたけど」
呟きながらマジックバックを漁る。出て来たのは着替だけどよく見たらこれ、小さくて着れなくなった服だよ。それを姉さんに伝えてみた。
「えっ、そうなの?」
姉さんが意外そうな表情を浮かべる。見れば分かりそうですけどね。
「荷物は姉さんが入れたの?」
「うん。クリス君の部屋に有った物を適当に」
部屋を漁った?
俺は18歳の男だよ。一応。それさぁ、この世界だと手に入れ様が無いから良いけど、現代の日本の18歳男子の部屋を漁ると色々とアウトなとんでもない代物が出て来るからね。少し控えて欲しかった。
「これは?」
確か壁に飾っておいた鹿の角だ。何故ここに?
「お婆さんに聞いたらクリス君が初めて獲った鹿の角だって聞いて記念に持って来たの!」
「なんで?」
「くじけそうになった時にそれを見れば励みになるかと思って!」
どんなもんよ! と言わんばかりに誇らしげに言われたらもう何も言えない。
他にも色々と旅には要らない物のオンパレードが続いた。
「家から持って来たのはこんな物か。あれ、奥の方にも何か有るぞ」
マジックバックの中にもう1つマジックバックが有る。
「えっ? おかしいわね、これで全部よ」
俺はもう1つのマジックバックを取り出して見せた。
「あら? これって魔法で封印されているわ」
そう言えば姉さんはこのマジックバックを王宮から無断で貰ったと言っていたな。世間ではそれを盗むと言うけど。
どんな凄い物が入っているのか?
「まっ、この程度の封印なら簡単に解けるわよ」
「ちょっと姉さん」
「聖女の能力の1つ、浄化を使えば簡単よ!」
そう言うとウインクして微笑む。そして声からしてワクワクしている。
「何が入っているのかな?」
貰ったプレゼントを開ける子供の様な瞳をしている28歳の聖女を止める気にはならない。
「浄化って土地の瘴気を払う能力だけど、私ほどの聖女になると人や物の状態異常も本来の状態に直せるのよ。この封印は陰魔法を掛けられている状態異常だから、かんたん簡単!」
鼻歌交じりにマジックバックの封印を解除してしまった。流石は完璧聖女!
「あれ?」
マジックバックの中にはまたマジックバックが1つ入っているだけだった。
「これにも封印の陰魔法が掛かっているわ。こんなに厳重なんて余程のお宝かしら?」
言い終わらない内に姉さんはまたしてもあっさりと封印を解いてしまった。これ、封印の意味が有るの?
「ちょっと、いい加減にしてよ! 何なの?」
封印を解いて開けた姉さんが声を上げる。大体の予想は付く。
「どれ、俺にも見せてよ」
3つ目のマジックバックを覗き込むと案の定、中にはまたマジックバックが入っている。
「マトリューシカじゃあるまいし!」
思わず人形の中に人形が入っているロシアの民芸品を連想してしまった。
「何それ?」
当然ながら姉さんには理解されない。少しだけ虚しかった。
「これでマジックバックの封印を解くの3回目よ!」
3回目? と言う事は、最初のマジックバックと合わせてマジックバックが4つ有る事になる。
ちょっと待て、このマジックバックは王侯貴族や大商人がようやく買えるって代物だ。余りにも貴重過ぎて普通には売買されない程に。
その価値を推定するに、日本円に換算すれば1つ当たり少なく見積もっても数億円は下らないはず。
大商人に1つ売り飛ばせば一生分の金に困らないんじゃないのか?
それに保管されていた所は王宮の宝物庫。って事は中身は国宝級に違いない!
そう考えると気軽に扱えなくなってきた。
「はい。解除したから今度はクリス君が開けてよ」
「了解」
少し投げやりな態度の姉さんから受け取ると、俺はマジックバックの口を慎重に開ける。
「ん? なんだこれ?」
赤い髪の毛が入っている。よく見たら人の頭?
「これ、カツラ?」
まさか王宮に保管されて、更にこれだけ厳重に封印して保管されていた国宝級と思われる物が、カツラ?




