職業決定!
結局は姉さんの年齢は28歳で落ち着いた。
思いっ切り不満顔の姉さんは放置して書類を書き進める。
「後は職業か」
姉さんの職業について考える。魔力量はその場で測定されるので魔力量的に魔法使いは無理。しかしこれしか無いんだ。
「魔法使いだと? 冗談言っちゃいけねえや。俺だってギルマスの端くれ、あれが魔法でない事は見りゃ分かるってもんよ。あの攻撃って、あれだろ?」
「あれって?」
書類を見たギルマスがニヤリと笑って口を挟んで来た。冗談で書いたつもりは微塵も無いんだが瞬時に姉さんが魔法を使っていない事を見抜くとは流石だ。
どうする? このギルマスの目は誤魔化せない!
「俺も実物を見るのは初めてだったんだけどよ、あれは体内のエネルギー、つまり気合で敵を倒すって奴だろ?」
「気合?」
「だよな?」
「そうそう!」
こうなったらギルマスの案に乗るしかない。俺は必死に頷いた。
「ならそっちの姉さんは、武闘家だろ!」
「武闘家?」
魔法ではない聖女の破邪による攻撃は、知らない人が見れば闘気を使った武闘家に見えた様だ。
当の本人は武闘家と言われたのがまさか自分とは気付かずキョトンとしている。
「そうですそうです。流石はギルマス、恐れ入りました。あれを見抜くとは!」
必死に肯定してその線で行く事にしよう。
その姉さんだが、町を救った功績により能力検定は免除となり、いきなりDランクからスタートとなった。
正確にはDランクの武闘家が丁度ギルドに居たそうだが、「勘弁してくれ!」と泣いて手合わせを辞退したらしい。
そして俺は弓撃手で登録したかったが無かったので万能職とも言える戦士で登録した。
そして俺も能力検定は免除。理由は姉さんの弟だから、だそうだ。
◯▲△
冒険者登録も出来たし、お礼も頂戴した。暫くは寝食に困らないだろう。
これで本人に戦った意識が全く無いのだから聖女とは恐ろしい。
エミリーは治癒だけの聖女だと推測されるからこうはならないだろうけど。
「後は宿屋か」
「ちょっと、私の職業が武闘家ってどういう事よ!」
発行された身分証のカードを睨みながら職業について納得いかない姉さんがギルドを出てからずっと抗議している。
「仕方ないだろ。冒険者登録するにはこうするしか無いんだから」
「だけど何か他に無かったの。貴婦人とか?」
「そんな職業あるか!」
そうこうしているとギルドで紹介された宿屋が見えて来た。
◯▲△
宿屋に入ると如何にも安宿の女将って感じの親しみやすい中年女性がフロントに居る。先ずは部屋が空いてるか聞いてみよう。
「シングル2部屋」
「ごめんなさい。混み合っておりまして」
「それじゃ、ツッ、ツイン1部屋」
姉さんと同じ部屋に泊まると考えるとやはり緊張する。心臓はバクバクだ。きっと表情もこわばっているだろう。
「はい。こちらが鍵になります。朝食は出すけど夕食はお外で食べて来て下さいよ。良いですか?」
「はい。それでお願いします」
経験無いんで冷や汗物だったが何とか部屋が取れた。そしてチェックインの紙も俺が全部書いた。1人で。
「ありがとうございます。お部屋は2階に上がってもらって突き当たりとなります」
「どうも」
「ちょっと待ってお兄さん!」
「はい、これ」
俺を呼び止めた女将は手の平程の大きさの紙袋を姉さんをチラッと見ながら渡してきた。
「これ何?」
「フフッ、言わせるんじゃないよ!」
女将は悪戯を仕掛ける子供の様なワクワクを隠せない目で俺の顔を覗き込んで来る。
姉弟の設定は全く通じていない事は明白だ。
「あんなべっぴんさん相手に情け無い事するんじゃないよ。これを一粒飲めば一晩中元気だから、灯りを消す少し前に一気にクイッと飲むんだよ」
袋には錠剤が3つ入っていた。
「いや、ちょっと」
「大丈夫、壁は薄いけど周りの部屋も若い男女だから。お互い様だよ!」
ギルドから紹介された宿屋だから連れ込み旅館じゃない筈なんだけど。
「どうしたの?」
「いや、何でも」
顔から火が出る思いで部屋に向かって歩く。後ろに居る姉さんにはさっきの会話は聞こえていない。
聞こえなくて良かったと胸をなで下ろして歩く。
◯▲△
「やっと落ち着いたわ!」
姉弟設定で同じ部屋に泊まる事になった俺達だが、姉さんは自分が人並み以上に艶っぽいのを理解しているのかどうなのか。
部屋に入るとリラックスして色々と無防備になる。
ベッドにゴロゴロしたりして、谷間とか生足とか見せられると何だか人間性を試されている様なので勘弁して欲しいのだが。
「もう少ししたら夕食を食べに出掛けるからね。程々にしてよ!」
「新鮮で良いわね、そのツンツンした弟口調!」
この人は絶対に楽しんでいるよな、この設定。




