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聖女の実力

「ナイフを投げるって、どう?」


「1本しか無いナイフを投げて、その後はどう戦うの?」


 姉さんの後先考えない作戦とも言えない思い付きに冷静に答えてみた。

 が、あっさりと否定するとその後が続かない。詰んだな。


「先ずは情報を集めましょ。どんな奴かも数も分からないのは不利だわ。あとは…そうねぇ…」

 

 眉間にシワを寄せて真剣に考える姉さんがもっともらしい事を言って再び考え込む。

 でも多分だけど必死に空回りしているんだろうな。

 しかしそんな作戦会議が無駄になる事態が訪れる。


「声が聞こえたから来てみたら、まだこんな所に隠れてる奴が居たか」


「オラァ、さっさと来い!」


「人間は全員、聖女を捕らえる為の人質だ。聖女なら人質を放ってはおけないだろ。ケッケッケッ!」


 気が付くと俺達は3人の魔族に囲まれていた!

 どうやらさっきの姉さんの声が大きかったみたいだ。

 俺はナイフを手に取り魔族達を睨み付ける。

 1人も倒せそうな気がしない。だがせめて姉さんが逃げられる時間は稼がなければ。


「姉さん!」


 すっかり考え込んでいる姉さんは周りが見えておらず、俺の声も届いていない様でブツブツと何か呟きながらまだ考えている。

 こんな時だが姉さんの集中力に感心してしまう。


「お前ら、今すぐ殺されたく無ければおとなしくしろ!」


 魔族の1人が近付いたその時だった。


「ちょっと、考え事しているのよ!邪魔しないで!」


 姉さんの威勢に1歩後退る魔族であったが、もう遅い。

 姉さんは両手を大きく真横に伸ばした。すると姉さんの周囲に光のドームが出現した。そしてそれは爆発的に膨張すると魔族を飲み込んでいった!


「!」


 その光に触れた瞬間、魔族は全員が断末魔を上げる事も叶わずに消滅してしまった!

 そして魔族が居た所には奴らの額の物と思われる魔石が人数分転がっているだけであった。


「姉さん!」


 俺の呼び掛けにようやく気が付いた姉さんは状況がまだ分かっておらず、まだ難しい表情をしている。


「ねぇ、何か良い作戦思いついた?」

 

「姉さん?」


「何か変な虫でも飛んで来た? つい苛ついて結界を張っちゃたけど、あの虫のせいで作戦がまとまらないわ」


「……そうだなぁ、作戦は姉さんがいる事だな」


「何それ?」


 魔族を倒した自覚が無い姉さんを連れて残りの魔族が居る町の広場に向かうと、そこには6人の魔族と集められた町の人々が居る。

 俺達2人はそれら全員の視線を一気に浴びせられた。


「まだ人間が居たか」


 さっきの魔族と同じ事を言われる。魔族はどいつもこいつも思考回路が同じなのか?


「姉さん、実は姉さんがさっき魔族3人を倒したんだけど?」


「私が? そんな訳が無いじゃない」


「本当だよ。光が出てた」


「えー、本当?」


「あれをもう一度やれば終わるよ。こんな感じで」


 俺はさっきの姉さんの真似をして両手を広げて見せる。


「違うわよ! さっきやったのはこうよ。見ててよ。破邪結界!」


 さっきのリプレイを見るかの様に6人の魔族が姉さんの光に飲み込まれ、魔石だけを残して消滅していった。


「これはね、私だから出来るの。結界と破邪の合せ技よ!」


 ふふんと胸を張る姉さん本人は自分だけのオリジナルの技を披露しただけで、魔族を倒した自覚はまたしても無い様だ。


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