無理がある姉弟設定
俺達は町中に入り宿屋とギルドを探して歩く事にしたが、やはり雰囲気がどうも変だ。
外からは分からなかったが中に入ると人通りが全く無い事に違和感を感じる。しかしだからといって立ち止まっても仕方ない。動くしかない。
「先ずは宿屋を探して、それからギルドに行って冒険者登録をしたいな」
「そうね、それが良いわね」
アリーさんはそれっきり黙ってしまった。
「ねぇクリス君」
えっ? 暫しの沈黙を破ったかと思えばアリーさんが俯いて照れている? 少しだけ顔も赤くなっている様な。
「どうかした?」
「私たちってどう見られてるのかなぁ?」
「どうって」
考えた事が無かった。こっちが聞きたい位だ。
「お金に余裕が有る訳じゃないから宿屋でいつもシングル2部屋は難しいと思うの」
アリーさんの瞳がトロ~ンとして俺を見つめている!
そして俺が目を逸らした先には深い谷間が!
「同じ部屋に泊まる事もあると思うの。だからね…」
何かを期待してゴクリと唾を飲み込む。この妖艶さはヤバい!
特に俺が悪い訳じゃない。この状況で正気を保っていられる男が居るとすれば、それは女性に興味が無いとしか言い様が無い!
「私たちは姉弟って設定にしましょう!」
あっけらかんと高らかに言われて力が抜けた!
「姉弟って事にしないと何か周りから変な目で見られるし、宿屋で同じ部屋に泊まったらチェックアウトの時に「昨夜はお楽しみでしたねぇ」って言われるのよ!」
「全ての宿屋がそれを言う訳ではないけど」
「折角考えた設定よ、私たちは父の仇を追う姉弟って設定よ。分かった?」
設定が増えてるけど凄い勢いでまくし立てられると頷くしかない。無理が有るとは思うけど。
「分かったよアリーさん」
「違う、姉さんでしょ!」
こうして俺はアリーさんを姉さんと呼ぶ様になった。
◯▲△
しかし変だ。この町、結構大きな街なのに歩いてる人が全然いない。
「町の人はどうしたのかしら?」
「うーん、全く分からないな」
俺達は人気の全く無い大通りを歩く。するとそれに繋がる細い道から母親と幼い兄妹が辺りを伺いながら出て来た。
慌ててると言うか、どうもオドオドして何かに怯えてる様でどう見ても変だがこの町で最初に遭った人だ、ギルドと宿屋を聞いてみよう。
「あの、すみません」
「きゃっ!」
母親は短く悲鳴を上げると子供たちを庇うように抱きすくめた。
「驚かせてすみません。あの、この町に在る宿屋と冒険者ギルドの場所を教えてもらえませんか?」
「冒険者ギルド? 貴方は冒険者ですか?」
母親に必死な形相で聞かれると何事かと思い答えに窮する。
するとここでアリーさん改め、姉さんが前に出て来た。
「私達は旅の姉弟です。冒険者登録をする必要が有るのでギルドを探しています」
姉さんの穏やかな声に母親は少し落ち着いた様だ。俺も何か落ち着く。
「聖女の声に癒しの効果を加えたのよ。明らかに変だったもの。心が穏やかになった筈よ」
俺にだけ聞こえる様に囁くとクスッと軽く笑った。流石は完璧聖女!




