聖女の寝落ち
「完璧聖女?」
「そう。だから傷も治せるし襲い掛かる敵も防げるのよ。凄いでしょ!」
凄い!
でもそれが真実である事を俺は身体で分かっている。何たって死にかけの所を助けてもらったんだから。
そもそもこのアリーさんがいればエミリーは聖女にならなくて済んだんじゃないのか?
「そんな凄い人が何故ここに? 王都とかもっと人の多い所に行けば…」
「ストップ!」
ここまで言い掛けてアリーさんの立てた人差し指で止められた。
「言ったでしょ、国外追放になったって。この国へも山を越えての不法入国よ。大手を振ってそんな所に行ける筈がないじゃない」
アリーさんは少し遠い目をしてグラスを傾ける。淡々と出るその言葉に熱は全く感じない。
「だから何で国外追放なんかに? 全く理解が出来ない」
「ハァ、色々と利用された挙句に邪魔になったのよ。それによ、何で聖女だからって世の為人の為に尽くさなきゃならないの? もう色々と嫌になっちゃったのよ」
軽く溜息を付いてからアリーさんはそれだけを口にした。これ以上は聞くに聞けないな。
話題を変えようと悩んでいるとその沈黙が原因なのかアリーさんが随分と眠そうだ。山の中を彷徨っていたって言うから疲れも溜まっているだろうし、かなりの酒量だ。眠くもなるだろう。
「ねえアリーさん、客間で寝てよ」
「ふふーん…聖女になった彼女に振られちゃったクリス君、…お姉さんが慰めてあげようか?」
酔ったアリーさんのトロンとした瞳で迫られると一瞬ドキリとなりその整った顔を見ていられない。情け無いが目を逸らした先はエミリーよりも大きいと思われる膨らみだった。
男の本能、思わず見入ってしまった。
「もうっ、どこ見てんの? 男の子ねぇ!」
楽しそうに言い放つとそのままテーブルに倒れ込む様に寝てしまった。
「ダメだこの人、完全に酔っ払ってる」
なるべく柔らかい所は触らない様にアリーさんを客間へと運ぶ。となるとお姫様だっこしかないな。
アリーさんはかなりの美人だと思うけどエミリーとあんな事が有ったせいか、慰めてあげるなんて言われて酔い潰れられてもそんな気にはなれなかった。
「あっ、そうだ!」
寝たかと思ったアリーさん、何かを思い付いたのか客間のベッドに置いた途端に条件反射の様にムクッと上半身だけ腹筋を使って起き上がった。
「へへー、クリス君がいい夢を見られます様に!」
突然俺に向けた掌が光出した。
「アリーさん、傷ならもう…」
「治癒じゃないわ。祝福よ。それじゃおやすみ」
無邪気にそれだけ言って再びベッドに倒れ込んだ。何なんだこの人。
さてと、俺も寝るか。




