完璧聖女
「つまり、将来を誓った彼女が聖女に認定されて、クリス君は邪魔だから殺されそうになって、おまけに振られたと?」
俺は事の成り行きを話した。婆ちゃんは既に寝てしまい、俺とアリーさんは軽く酒を交わしながら話している。
「簡単に言うとね。兵士を相手にして流石にもうダメだって思ったよ。そこをアリーさんに助けてもらったって訳だ」
「私もそうだったけど聖女は政治利用される存在なのよ。だからクリス君が邪魔だったのね。それにしても酷いわね」
アリーさんはそう言うとクイッとグラスを傾ける。薄暗い灯りに照らされたその姿にはエミリーには無い大人の色気って奴を感じる。
「それで、この後はどうするつもり?」
「どうするって?」
「彼女の事よ。ちゃんと決着をつけなきゃ。それにクリス君を殺しに来た兵士達は私が解放しない限り数日間はあのままよ。あの兵士達をどうする?」
エミリーとの事は納得出来ていない。駆け落ちを泣きながら言い出したり、かと思えば別人の様に俺の事を蔑む。
俺自身の望む結果にならないとしてもエミリーとはちゃんと話したい。明日もう一度エミリーの家に行ってみよう。
困るのは兵士達の事だ。俺を殺しに来た兵士達はアリーさんの不思議な技によって悶え苦しんだ後に倒れてしまいそのまま横たわっている。呼吸はしているから死んではいないがピクリとも動かないのはまずい。
「あのアリーさんの技は何なんだ?」
「技じゃなくて聖女の能力の1つ、破邪よ。光の矢にして飛ばしたの。邪な心の持ち主は耐え切れなくてああなるのよ」
「そうなんだ。聖女の能力の能力の1つって事はさ、幾つも有るの?」
そんな話は聞いた事がない。エミリーだって聖女の能力が有るらとしか聞いてない。
「聖女の能力は人の傷を癒す治癒。瘴気とか呪いとか色々な状態異常を取り払う浄化。敵の侵入を防ぐ結界。大地の豊穣や人々に幸運をもたらしす祝福。そして魔物や邪な者を打ち破る破邪。この5つが聖女の能力なの」
「そんなに有るのか?」
「まぁ、殆んど全ての聖女はどれか1つしか出来ないわ。クリス君の想い人も多分だけど治癒だけじゃないかしら?」
アリーさんは自信たっぷりに言うとグラスを口に運ぶ。
「治癒だけ? 何で分かるの?」
「治癒が一番出やすいみたいよ。全世界で10年に1人の割合って聞いているわ」
「10年に1人? って事は10年前にも聖女が出ているって事か」
「ふふん。そう。それが私」
年齢的に考えても納得がいく。アリーさんは俺よりもそれくらい年上の20代後半っぽいし。
「アリーさんがエミリーの前の聖女?」
「正確に言わせてもらえば私は治癒だけの聖女じゃないわ。5つ全ての能力を持った千年に1人の完璧聖女よ!」




