↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰都の剣士と機械人形  作者: NOEU
4. ここにいたい
40/65

4-3. 欲しいもの

継暦六百二十七年 七月二十八日


壁棚の奥に、小さな巾着が置かれていた。


生成りの布を縫い合わせたもので、片面には赤い糸で小さな花が刺繍されている。服を買った日、ヘルマが余った布で作り、リゼへ渡してくれたものだった。


最初に入っていたのは、古い衣服を引き取ってもらった代金だけだった。


砂と灰に汚れ、ところどころ裂けていた服。それでも布として使える部分がわずかに残っているという理由で、五十ミルになった。


リゼは壁棚の前へ膝をついた。


右脚の角材を横へ逃がし、左膝だけを床板につける。巾着を棚から取り出すと、二重に結んでいた紐を解き、中身を棚板の上へ並べた。


最初に入れていた十ミル貨が五枚。


その横へ、二十ミル貨を八枚。


さらに十ミル貨を四枚。


合わせて二百五十ミル。


硬貨はいずれも使い込まれていた。縁が欠けているものや、都市連盟の紋章が擦れ、ほとんど見えなくなったものもある。


リゼは一枚ずつ向きを揃えた。


増えた二百ミルは、メリダの店へ通い始めてから受け取った四日分の給金だった。


初日に渡された二枚も、いまはほかの硬貨と一緒に巾着へ収めている。それでもリゼは、どれが最初の二枚だったかを記憶していた。


数え終えると、硬貨を一枚ずつ巾着へ戻していく。


布の底で金属が触れ合い、小さな音を立てた。口を閉じ、紐を二度結ぶ。


「毎朝数える必要があるのか」


背後からロアンが尋ねた。


寝台の端へ腰を下ろし、上着の革紐を締め直している。午後からギルドへ行くつもりらしく、登録札は机の上に出してあった。


リゼは巾着を両手に載せたまま振り返った。


「前日の金額と一致しているか確認しています」


「部屋の中で減ることはない」


「失われた場合、早く気づけます」


「俺が取ったと思うのか」


リゼは顔を上げた。


「ロアンが取るとは考えていません」


「なら、誰も取らない」


「扉を施錠していない時間があります」


宿舎の部屋は、外出するとき以外、鍵を掛けていないことが多かった。


マルタが洗った布を持ってくることもあれば、ガルドが傷んだ窓枠を見に来ることもある。宿舎の住人がロアンを訪ね、開いた扉から声を掛けることもあった。


その誰かが壁棚の奥を探り、二百五十ミルを盗むとはロアンには思えなかった。


「取られたくないなら、身につけておけ」


「はい」


リゼは立ち上がり、巾着の紐を巻きスカートの左側へ結びつけた。


歩くたびに硬貨が触れ合うため、これまでは棚へ置いていた。それでもロアンに言われたとおり、腰へ下げることにしたらしい。


その日は、メリダの店へ行かない日だった。


七月二十三日の試用から、四日間働いている。初日は短く、別の日には入荷した革紐の仕分けが終わるまで残った。勤務時間は日によって違い、脚の状態を見ながら休みを挟んでいた。


店では、重い荷を運ぶより、棚の中身を数えたり、客へ商品の場所を示したりする仕事が多い。それでも半日の勤務を終えて戻るころには、角材を固定する布が朝より強く張っていることがあった。


昨日、メリダはリゼを椅子へ座らせ、角材を横から確かめていた。


下端が、わずかに外側へ曲がっている。


長く体重を受け、雨の日には湿気も吸ったため、木材そのものが歪み始めているらしい。底へ巻かれた革も、外側だけが強く削れていた。


メリダに分かるのは、外から見える角材と固定布の状態までだった。


布の内側にある外殻や、身体を支える内部フレームがどうなっているのかは、機械人形を扱う技師でなければ調べられない。


ロアンは机の上の登録札を取り、上着の内側へ入れた。


水門外を巡回していた者が、昼過ぎに戻る予定になっている。近郊路で機械生命らしき痕跡を見たという話もあり、報告を聞いたうえで次に受ける仕事を決めるつもりだった。


長く都市を離れる仕事は、まだ選んでいない。


だからといって、いつまでも短い警護や見張りだけを続けるわけにもいかなかった。


革手袋へ手を伸ばそうとしたところで、リゼが棚の前から振り返った。


「今日は、ネラの工房へ行きます」


ロアンの手が止まった。


「何をしに」


「右脚について相談します」


「固定が緩んだのか」


「現在、歩行に異常はありません」


「なら、何を相談する」


リゼは答えなかった。


俯いてはいない。視線も逸らしていない。ただ、返す言葉を止めている。


理由が分からないのではなく、話さないと決めているときの沈黙だった。


ロアンは、巻きスカートの下から伸びる角材を見た。


布の巻き方に崩れはない。立っているだけなら、角材が曲がっていることもほとんど分からなかった。


「一人で行くのか」


「はい」


「場所は分かるのか」


「以前通った道を記憶しています」


「俺も行く」


「ギルドへ行く予定があります」


「午後からで間に合う」


「工房での相談に、ロアンは必要ありません」


ロアンはリゼを見た。


「俺がいると話せないのか」


「話せないのではありません」


「なら、いても同じだろう」


「同じではありません」


言い切ったあと、リゼはそれ以上続けなかった。


ロアンは手袋から手を離した。


メリダの店へ一人で通うことには、少しずつ慣れ始めている。店までの道には人通りがあり、昼を過ぎる前には帰ってくる。何かあればメリダもいる。


ネラの工房は、それより遠かった。


工房通りまでの道には、荷車が行き交う場所もある。右脚の状態が悪くなれば、同じ速さで戻れるとは限らない。


「途中で歩きにくくなったら」


「宿舎へ戻ります」


「戻れない状態なら」


「近くの人へ助けを求めます」


「ネラに送ってもらえ」


リゼは少し考えた。


「ネラが工房を離れられない場合は」


「人を呼んでもらえ。荷車でも何でもいい」


ロアンは衣類箱を開いた。


底に入れていた革袋を取り出し、中からクレド貨を選ぶ。五枚を小さな袋へ移すと、紐を締めてリゼへ差し出した。


「持っていけ」


リゼは、自分の左腰に下げた巾着へ目を向けた。


「二百五十ミルあります」


「それはお前が働いて得た金だろ」


「私の右脚に必要な費用です」


「いま付いてる角材の検査と調整は、俺が頼んでることだ」


「今日は相談するだけです」


「工房は慈善事業じゃないんだぞ。持っていけ」


ロアンは革袋を引かなかった。


「見てもらったあとで、金がありませんとは言えないだろ」


「手持ちの金額を超える場合は、依頼しません」


「だから、持っていけと言ってる」


リゼは、差し出された袋を見た。


自分の巾着より重い。中には五クレドが入っている。


「使用しなかった分は返します」


「ああ」


リゼは革袋を受け取り、自分の巾着とは反対側の腰へ結びつけた。


「戻れなくなったら、ネラに送ってもらえ。その分の金も俺が払うと伝えていい」


「分かりました」


「寄り道するな」


「はい」


「戻ったら、右脚の状態だけは話せ」


「分かりました」


リゼは椅子の背へ掛けていた肩掛けを手に取った。


灰色がかった厚手の布を羽織り、胸元の留め具を閉じる。左腰には自分の二百五十ミル。右腰にはロアンから預かった五クレドが下がっていた。


ロアンは、リゼが部屋を出るのを見送った。


左足が床板を踏む。


少し遅れて、角材の先が廊下を打つ。


二つの音が階段へ近づき、一段ずつ下へ消えていった。


     *


ネラの工房には、商店で使うような看板がなかった。


入口の脇には、修繕前の道具や荷車の部品が積まれている。曲がった車軸、柄の折れた槌、歯の欠けた鋸。革帯を外された木箱や、縁の割れた滑車も、壁際へ寄せられていた。


使えるものと、部品としてしか使えないものは、外から見ただけでは区別できなかった。


戸を開けると、乾いた木と、削られた金属の匂いがした。


奥の窓は開け放たれている。作業で生じた細かな塵が、差し込む光の中をゆっくり漂っていた。


隣の工房からは、槌で金属を叩く音が聞こえる。


規則正しく続く音に合わせ、天井から吊された細い鎖や小さな留め具がわずかに揺れていた。


壁には工具が並べられている。


長さの異なる鋸。歯の細かな鑢。柄の短い槌。先端の曲がった細い鉤。金属線を切る鋏。用途の分からない小さな器具も、形と大きさごとに分けて掛けられていた。


作業台の下と窓際には、浅い木箱が積まれている。


白い外殻の破片。


動かなくなった小型の駆動器。


黒い被膜に包まれた導線。


歯の欠けた関節部品。


錆の浮いた板ばね。


どれも一つだけでは使い道が分からない。ネラにとっては、別の部品と組み合わせれば、まだ何かへ変えられるものなのだろう。


ネラは奥の作業台で、細い金属棒を万力へ固定していた。


戸の音に気づき、手を止める。


短く切った髪の一部が額へ落ちていた。手の甲で押し上げながら入口を見ると、視線をリゼの顔から右脚へ落とした。


「ロアンは一緒じゃないのか」


「はい」


「一人でここまで来たの」


「はい。歩行に問題はありません」


ネラはリゼの角材をしばらく見た。


口元の片側だけが、わずかに下がる。


「問題のない脚には見えないけどね」


作業台の横に置かれた椅子を顎で示した。


「座りな。まず見せて」


リゼは肩掛けを外し、椅子へ腰を下ろした。


巻きスカートの右側を開き、下穿きの紐も緩める。布を太腿の中ほどまで捲り上げると、角材と、それを固定している何重もの布が露出した。


太腿は人工皮膚に覆われていた。


灰色をわずかに含んだ淡い肌色で、外見だけなら人間の脚と大きく変わらない。表面に継ぎ目はなく、膝の上まで滑らかに続いている。


その内側には白い外殻があり、さらに内部には太腿の形を支えるフレームと、関節を動かすための人工筋や駆動器が収められていた。


膝関節は残っている。


人工皮膚の下にある外殻は、人間の膝と似た丸みを持っていた。リゼが右膝を曲げると、太腿の内部で人工筋が縮み、関節の駆動器が低く動く。


異音はない。


曲げ伸ばしにも大きな遅れはなかった。


失われているのは、その下だった。


人工皮膚は、膝を越えたところで途切れている。


裂けた端は、以前の検分で不揃いな箇所を切り揃えられていた。それでも完全には閉じられておらず、薄い人工皮膚の断面が、白い外殻に沿って内側へ少し巻き込んでいる。


その下にある外殻も、膝下から数センチほどの位置で砕けていた。


外殻は、人間の骨とは違う。


身体の輪郭を保ち、内側の部品を守るための硬い層だった。白く、磨かれていない陶器に似ている。ある程度の衝撃には耐えるが、曲がることはない。限界を超えた力が掛かれば亀裂が入り、さらに砕ける。


リゼの右脚では、外殻が斜めに失われていた。


内側は比較的長く残っている。外側は膝の近くまで割れ、縁が不揃いに欠けていた。


砕けた端には細かな亀裂が走っている。角材を固定する布と繰り返し擦れた箇所には、白い粉が薄く付着していた。


ネラは低い台を運び、角材の先を載せた。


最初に、木材を横から確かめる。


角材は中央より少し下のあたりから、外側へわずかに反っていた。底へ巻かれた革も、内側には厚みが残っているのに、外側は薄く削れている。


「木が歪んでるね」


「メリダにも指摘されました」


ネラが顔を上げた。


「メリダ?」


「旅道具と日用雑貨を扱う店で働いています」


「働いてるのか」


「はい」


「その脚で?」


「朝から昼までです。途中で休止します」


「誰が決めた」


「メリダです」


ネラの眉間にあった皺が、少しだけ緩んだ。


「まともな雇い主らしいね」


それから、固定布の結び目を一つずつ解き始めた。


外側の布は、比較的新しい。


内側へ進むほど色が濃くなり、繊維が押し潰されて固くなっていた。水や汗を吸ったためではない。角材と金属の間で何度も荷重を受け、そのたびに強く圧迫された跡だった。


角材と内部フレームの間に挟まれていた革にも、硬い金属へ繰り返し押しつけられた窪みが残っていた。


最後の布が外れる。


ネラは片手で角材を支え、ゆっくりと右脚から離した。


外殻の内側から、二本の金属製フレームが露出した。


本来は膝から足首まで続き、下腿へ掛かる荷重を支えていたものだった。


内側の一本は、膝下から十数センチほど残っている。破断面は斜めで、先端がわずかに潰れていた。


外側の一本はそれより短い。


途中で折れた先が、不揃いな二つの突起となって残っている。


長いほうのフレームも、完全にはまっすぐではなかった。


膝の直下では本来の位置を保っているが、先へ向かうほど、少しずつ外側へ開いている。


ネラは細い定規を取り、フレームの上端と破断面へ当てた。


先ほどまでの気軽さが、表情から消えた。


「開いてるね」


「角材の歪みが原因ですか」


「それだけじゃない」


ネラは外した角材を横向きにし、反りを見た。


「歩くたびに角材に外側への力が働く。布でそれを内側へ引き戻してる。その力が、残ってるフレームへ掛かってる」


「元の位置へ戻せますか」


ネラは外側へ開いたフレームへ指を添えた。


押し戻そうとはしなかった。


「戻せなくはない。でも、曲げる途中で折れるかもしれない。折れなかったとしても、金属は弱くなる。この位置のまま、力の掛かり方を変えたほうがいい」


ネラは外殻の亀裂も確かめた。


指先で白い粉を拭い、細い亀裂の先を目で追う。新しく大きく砕けた箇所はない。


ただ、固定布が擦れていた部分では、亀裂の幅が以前よりわずかに広がっていた。


二本のフレームの間には、黒と灰色の被膜に覆われたケーブルの束が残っている。


人間の身体でいえば、神経に近い役割を持つものだった。


束全体の太さは、小指よりも細い。


だが、一本の線ではない。


厚い保護被膜の内側には、髪よりも細い伝達線が数え切れないほど束ねられていた。


身体の中央部から脚へ送られる動作命令。


関節の位置や動きを身体へ返す信号。


足裏へ掛かった力。


外殻や内部部品の損傷。


温度の変化。


本来なら、それらが異なる強さと間隔を持ち、同じ束の中を複雑に行き来していた。


砂海で右脚を失ったとき、ケーブルの束も膝下で引きちぎられている。


切断された先は小さく折り返され、外殻の内側へ収められていた。被膜の裂けた部分からは、細かな伝達線の断面が密集して見える。


そこから先にあった人工筋、駆動器、足首、足先、地面へ触れる感覚機構は、すべて失われていた。


ネラは、ケーブルへすぐには触れなかった。


小さな刷毛を取り、周囲に付着した外殻の粉と布の繊維を丁寧に払っていく。


「新しく切れた線はなさそうだ」


「信号は残っていますか」


「調べてみないと分からないね」


ネラは作業台の下から、浅い木箱を引き出した。


中には細い金属針、薄い接触板、異なる太さの導線、それに手のひらほどの測定器が収められている。


測定器の正面には、細い針と目盛りがあった。


数字は刻まれていない。


ネラはリゼの椅子を窓際へ動かした。


差し込む光が、右脚の断面へ当たる。黒い被膜の裂け目がよく見える位置まで身体を寄せると、先の丸い小さな刃を使い、傷んだ被膜だけを慎重に切り開いた。


内側から現れた伝達線は、一色ではなかった。


灰色に近いもの。


鈍い赤を帯びたもの。


白く透けるほど細いもの。


それらがいくつもの小さな束へ分かれ、さらに一つへまとめられている。


「どれが足首の信号ですか」


「そんなふうには分かれてないよ」


ネラは細い接触具を一つ選び、測定器へ導線をつないだ。


「一本が足首、一本がつま先って作りなら楽なんだけどね。一つの動きに何本も使ってるし、同じ線が別の動きにも混じってる」


「解析できますか」


「全部は無理だ」


ネラは、接触具を伝達線の一部へ当てた。


測定器の針が中央で静止するのを待つ。


「本当は、何百、何千って信号が、順番や重なり方を変えながら流れてる。昔の制御器は、その全部を見て、身体が何をしようとしてるのか判断してた」


ネラは測定器の側面を指で叩いた。


「こっちにできるのは、明かりがついたか消えたかを見るようなものだよ。本当は数え切れない明かりが並んで、点く順番と強さで言葉を作ってる。あたしたちは、その端でいくつか光ったのを見て、たぶん脚を動かそうとしたんだろうって考えるしかない」


「元の右脚を復元できますか」


「できない」


ネラはためらわず答えた。


「でも、何度やっても似た変化が出る場所を探して、意味を単純に決め直すことはできるかもしれない」


身体から脚へ出ていく命令は、右脚が失われたあとも残っている。


足首を上げようとする。


つま先で地面を押そうとする。


右脚を前へ出そうとする。


身体は、いまもそうした動作を行うための信号を作り、切断されたケーブルの途中まで送り続けている可能性があった。


一方で、失われた足首や足裏から身体へ戻る信号はない。


地面へ触れたか。


足首がどこまで曲がったか。


どの程度の力が掛かったか。


それを身体へ伝える機構そのものが、なくなっていた。


「右の足首を上げるつもりで」


ネラが言った。


「右足首は存在しません」


「分かってる。前にあったときと同じように動かそうとして」


リゼは、失われた足首を動かそうとした。


身体の外側には、何の変化も現れない。


右膝も動かなかった。


測定器の針も、最初の位置では揺れなかった。


ネラは接触具の位置を少し変えた。


もう一度、同じ動作を繰り返す。


針がわずかに右へ振れ、すぐに戻った。


ネラの目が細くなる。


同じ位置で繰り返すと、今度はほとんど動かなかった。


接触具をずらし、もう一度試す。


足首を上げる。


下げる。


右脚を前へ出す。


膝を曲げる。


つま先で地面を押す。


身体を右へ傾ける。


動作を変えるたびに、接触具の位置も変えていった。


何も反応しない場所もある。


一度だけ大きく針が振れ、同じ動作では二度と動かない場所もあった。


足首を上げようとしたつもりでも、膝を支える信号や、身体の傾きを直すための信号が混ざっている可能性がある。


ネラが探しているのは、「足首を上げる」という意味を持つ一本の線ではなかった。


同じ動作を何度繰り返しても、似た強さと間隔で現れる変化だった。


検査は長く続いた。


隣の工房から聞こえていた槌の音が一度止まり、しばらくして別の場所から鋸を引く音が聞こえ始めた。


開けた窓から風が入り、作業台の隅に積もった木の粉を薄く動かした。


やがて、足首を上げようとしたときに、比較的安定して針が動く位置が見つかった。


「少しだけ上げるつもりで」


針が小さく揺れた。


「今度は強く」


先ほどより大きく右へ振れた。


完全に同じ結果にはならない。


それでも、弱く動かそうとしたときより、強く動かそうとしたときのほうが、針の動きは大きかった。


次に、つま先で地面を押そうとする動作を繰り返した。


別の位置で、わずかな反応が続いた。


ネラは、紙へ位置と針の動きを書き留めた。


「信号の意味が全部分かったわけじゃないよ」


紙へ残した二つの印を指す。


「何度やっても同じように出るものだけ拾って、こっちで動きを決めるんだ」


「本来の右脚とは異なる動作になります」


「まるで違うね」


ネラは測定器を脇へ置き、新しい紙を引き寄せた。


残ったフレームに沿う受け具。


木材と金属を組み合わせた下腿。


足首に当たる可動部。


地面へ触れる、幅の狭い足先。


つま先とかかとは、わずかに丸く反らせる。


簡単な線を引きながら、順番に説明していった。


「布では巻かない。残ってるフレームと外殻へ合わせて、受け具を作る」


紙の上へ、複数の印をつける。


「ここ。それから内側と後ろ。何か所かボルトで留める。木材だけじゃなく、金属の支えでも荷重を受ける」


「現在より重くなりますか」


「少しだけね。でも、足首が動けば、角材を毎回持ち上げるよりは歩きやすくなる」


ネラは、検査で見つけた二つの信号を紙の端へ記した。


「足首を上げようとしたときの変化が出たら、決めた角度まで上げる。つま先で押そうとしたときは、足首とつま先を連動させる」


「戻す動作は」


「ばねと駆動器を使う。身体からの信号が弱くなったら、決めた位置へ戻す」


「地面へ触れたことは分かりますか」


「それは無理」


ネラは紙に描いた足先を指で叩いた。


「地面に触れたことを感じるわけじゃない。どこまで曲がったかも分からない。動き過ぎないよう、仮脚の側で止める必要がある」


「歩行速度は」


「調整が合えば、町の中では人間と同じくらいまで出せるかもしれない」


ネラは紙から顔を上げた。


「階段も、今みたいに角材を一段ずつ運ぶよりはましになる。左右交互に上れるところまでは持っていけると思う」


「長距離の歩行はできますか」


「角材よりは、ずっと歩ける」


返答したあと、ネラの表情が少し険しくなった。


「でも、町で歩けることと、街道で何日も使えることは別だよ。ボルトが緩むかもしれない。受け具がずれるかもしれない。ケーブルとの接続に異常が出ることもある」


「一日や二日であれば」


「歩けないとは言わない。でも、保証はできない」


「雨に濡れた場合は」


「濡れただけなら止まらない。泥や砂が可動部へ入ったら、点検が必要になる」


「戦闘時は」


「戦うための脚にはならないよ」


ネラの返答は早かった。


「急に踏み込む。横へ飛ぶ。強く蹴る。そういう力が掛かったとき、歪まない保証はない。身を守るくらいはできても、戦闘用だとは言えないね」


リゼは紙に描かれた脚を見た。


失われた右脚と同じ形ではない。


人間の脚とも違う。


白い外殻も、人工皮膚もない。


木材と金属で組み上げ、残った信号を拾って、決められた動作だけを行うための脚だった。


「元の脚には戻らない」


ネラは紙の端へ木炭を置いた。


「けど、町で暮らしたり、一日二日平坦な道を歩くなら問題ないところまでいける」


「作れますか」


「作れると思う」


「費用はいくらですか」


ネラは紙に描いた受け具と、リゼの右脚を見比べた。


その目が、砕けた外殻、開いたフレーム、切断されたケーブルを順にたどっていく。


「八十クレド」


リゼは左腰の巾着を外した。


作業台の端へ置き、二重に結んだ紐を解く。


中から硬貨を取り出し、一枚ずつ並べた。


古い服を引き取ってもらった代金。


メリダの店で働き、受け取った四日分の給金。


二十ミル貨。


十ミル貨。


表面の擦れた硬貨が、木の上で小さく鳴った。


「二百五十ミルあります」


ネラは並べられた硬貨を見た。


次に、リゼの反対側の腰へ下がっている革袋へ視線を向ける。


「そっちは?」


「ロアンから、検査と調整の費用として預かりました」


「使わないのかい」


「私の金ではありません。残額は返します」


ネラの眉間に浅い皺が寄った。


「八十クレドには、ずいぶん足りないね」


「はい」


「七十七クレドと五十ミル足りない」


「はい」


「今と同じ給金なら──」


「百六十日ほどで貯められると思います」


「毎日働けるわけじゃない。休みも必要だ」


「勤務日を増やします」


「その前に、残ってる脚が壊れるよ」


ネラは露出したフレームを指した。


「今日見ただろう。もう外へ開き始めてる。外殻の亀裂も広がってる」


「固定方法を改善してください」


「改善したって限界はある」


「それでも、貯めます」


ネラは何も言わなかった。


リゼは、作業台の上に並んだ硬貨を見ている。


声は震えていない。


顔を伏せてもいない。


淡い青の瞳にも、目立った変化はなかった。


「どうして、そこまでして新しい脚が欲しい」


しばらくして、ネラが尋ねた。


リゼはすぐには答えなかった。


工房の外を、荷車が通り過ぎていく。


車輪が石の継ぎ目を踏むたび、積まれた金属が低く触れ合った。その音が入口の前を過ぎ、少しずつ遠ざかっていった。


「私は、右脚が失われた状態で、長く使用されることを想定していませんでした」


ネラは椅子へ浅く腰を下ろした。


作業台へ片肘をつき、リゼの顔を見る。


「すぐ直るって思ってた?」


「いいえ、右脚を失い、護衛としての用途を果たせなくなりました。商会で使用できないと判断されたので、赤い札をつけられました。分解して、部品として売る予定でした」


「それでよかったの」


「適切だと考えていました」


返答に迷いはなかった。


少なくとも、以前はそうだった。


役に立たない機械人形を停止する。


分解し、残った部品を別の機械へ使う。


修理に掛かる費用が、使用できる部品の価値を上回るなら、そのほうが損失は少ない。


それは、商会にとって正しい判断だった。


「自分のことだよ」


ネラが言った。


「はい」


「自分が分解されても、それでよかったのかい」


「はい」


ネラの目がわずかに細くなった。


怒っているわけではなかった。


目の前の言葉を、どこへ置けばいいのか分からないような表情だった。


「ロアンに買われたあとも?」


「しばらくは、同じように考えていました」


ベルグラートからエルデンへ向かうあいだも、角材では長い街道を歩けず、護衛として働けない自分を、ロアンがいつまで所有するのかは分からなかった。


役に立たない状態が続けば、いずれ不要になる。


売却されるか、分解される。


それを当然の帰結として受け入れていた。


「だから、この角材でよかった」


ネラは、作業台の横へ置かれた角材を見た。


「はい。長く使用する前提ではありませんでした」


「もう、歩く必要があるとは思ってなかったんだね」


「はい」


「いまは?」


リゼは答えるまでに、少し時間を置いた。


開いた窓から風が入り、作業台の上の紙をわずかに動かす。ネラが指先で紙の端を押さえた。


「ロアンが仕事へ行くと、私は宿舎で待ちます」


「そうだね」


「帰還予定日を過ぎても、待つことしかできません」


ネラの視線が、リゼの顔へ戻った。


「この前、帰りが遅れたときのことかい」


「はい」


「ロアンは帰ってきた」


「はい」


「でも、次も帰ってくるとは限らない」


「はい」


ネラの口元が、わずかに歪んだ。


笑ったのではなかった。


何かを言いかけてやめ、外された角材へ視線を落とす。


「いまの脚じゃ、ついていけない」


「はい」


「これを作ったって、ロアンが連れていくとは限らないよ」


「分かっています」


「あいつは、あんたについてきてほしいと言ったのかい」


「いいえ」


「それでも、あんたは行きたい」


「はい」


ネラは、作業台の上で両手を組んだ。


「同行して、何をするつもりなの」


「ロアンが負傷した場合は補助できます。敵がいる場合は、周囲を警戒し、戦闘に参加できます。荷を運ぶこともできます」


「新しい仮脚も、戦闘に使えるとは思わないで」


「分かっています」


「街道の仕事についていける保証もない」


「はい」


「ロアンが許さないかもしれない」


「はい」


答えは変わらなかった。


ネラはしばらくリゼを見ていた。


その視線が、淡い青の瞳から、砕けた右脚へ下りる。


「役に立ちたいんじゃなくて、待ってるだけなのが嫌なんだね」


リゼは答えるまでに、少しだけ間を置いた。


「はい」


工房の中へ、風の音だけが残った。


天井から吊された小さな留め具が触れ合い、乾いた音を一度立てる。


「離れたくありません」


リゼは続けた。


「同行していれば、何かできる可能性があります」


「何もできないかもしれないよ」


「はい」


「一緒に死ぬかもしれない」


「はい」


「それでも?」


「待っているだけよりは、よいと考えています」


ネラの眉が寄った。


「あんた、それをロアンに言ったら、たぶん怒られるよ」


「そのため、話していません」


「そういう理由かい」


「話した場合、工房へ行くことを止められる可能性もあります」


「止めるだろうね」


ネラは、低く息を吐いた。


「でも、いまのままじゃ、最初から選んでもらえない」


「はい」


リゼは、紙に描かれた仮脚を見る。


「現在の右脚では、ついていくことができません。ロアンが連れていくかどうかを判断する前に、できないことが決まっています」


「だから、まずはついていける身体になりたい」


「はい」


「ロアンが求めてなくても?」


「はい」


リゼの声は変わらなかった。


「私が、ついていきたいと考えています」


ネラは何も言わなかった。


リゼは泣かない。


もともと、泣くようには作られていない。


声も震えない。


俯いて、顔を隠すこともない。


ただ、八十クレドには遠く足りない二百五十ミルを、作業台の上へ一枚ずつ並べていた。


以前なら、必要のなかった金だった。


角材の脚で長く歩き続けることも、その先で何をするのかも、考える必要はなかった。


分解されれば、それで終わる。


それでよいと思っていた。


いまは、ロアンが仕事へ行くたび、その帰りを待つ自分がいる。


次も帰ってくるとは限らない。


それでも壊れたままでは、ついていくことを望むことすらできない。


何月掛かるのかを計算し、新しい仮脚が十分なものではないことを理解し、足りない硬貨を並べている。


その姿が、ネラには泣いているように見えた。


ネラは片手を額へ当てた。


目を閉じ、短く息を吐く。


それから、作業台に並んだ硬貨を指した。


「それはしまいな」


「まだ支払えません」


「分かってるよ」


ネラは角材を手に取った。


歪んだ木材を目の高さまで上げ、片側から反りを確かめる。


「今日取るのは、検査と固定の調整で一クレドだ」


リゼは、自分の硬貨を一枚ずつ巾着へ戻した。


最後の一枚を収め、口を閉じる。


次に、ロアンから預かった革袋を外した。手のひらに硬貨を広げる。


五クレドの中から一クレドをネラへ渡す。残った四クレドを革袋へ戻し、紐を固く結んだ。


「ロアンに話しな」


ネラが言った。


「話しません」


「八十クレドだよ。あんた一人で貯める金じゃない」


「ロアンは支払います」


「そうだろうね」


「そのため、話しません」


「払ってもらえばいいじゃないか」


「私が必要だと判断した脚です」


リゼは、硬貨を収めた自分の巾着へ触れた。


「ロアンは、私にこの脚を求めていません。ついていきたいと望んでいるのは、私です」


ネラはリゼを見た。


「だから、自分で払う」


「はい」


「それが正しいと思ってるのかい」


「はい」


「正しいかどうかを、あんた一人で決めるのも違うと思うけどね」


リゼは返答しなかった。


ネラは、作業台に置かれた紙を見た。


しばらく考えたあと、折り畳まず、そのまま端へ寄せる。


「メリダには話すよ」


リゼの指が止まった。


「なぜですか」


「あんた、勤務を増やすつもりだろう」


「はい」


「あんたが勤務を増やすと言ったとき、理由を知らなきゃ止められないからだ」


「勤務を増やす必要があります」


「だから止めるんだよ」


ネラは、外側へ開き始めたフレームを指した。


「仮脚を作るために働いて、働いたせいで取りつける身体が壊れたら、何の意味もない」


「損傷しない範囲で働きます」


「その範囲を、あんたは自分で狭くできないだろう」


「できます」


「あんたは、できると言いながらここまで歩いてきたんだよ」


ネラの声は強くなかった。


けれど、先ほどまでより低かった。


「メリダには話す。勤務を増やさせないこと。角材を使い続ければ、残ってる本体まで悪くなること。それから、八十クレド必要なこと」


リゼは少しのあいだ黙っていた。


「ロアンには伝えないでください」


「あんたが自分で話すまではね」


「話さない可能性があります」


「その場合でも、あんたが危ない状態になったら話す」


ネラは譲らなかった。


「そこは約束できない。技師として、壊れるのを黙って見てるつもりはないよ」


リゼは、台の上に載せられた右脚を見た。


開いたフレーム。


細かな亀裂の入った外殻。


保護布へ包み直された神経ケーブル。


どれも、今すぐ動かなくなる状態ではない。


しかし、長く使い続けられる状態でもなかった。


「分かりました」


「メリダに話すことも?」


「はい」


ネラの肩から、わずかに力が抜けた。


「最初からそう言えばいいんだよ」


「勤務を増やせないことには同意していません」


「前言撤回したくなってきた。こっちも、あんたみたいな人形じゃなきゃ、持ち主にすぐ言うんだけどね」


「みたいな、とは何ですか」


「さあね」


ネラは呆れたように言い、外した角材を削り台へ固定した。


外側へ膨らんでいた部分へ刃を当てる。


薄い木屑が細く巻き上がり、床へ落ちていった。何度か角度を変え、底が平らになるまで少しずつ削る。


薄くなっていた革も外した。


新しい革を重ね、外側と内側の厚みを変える。接地したとき、角材が外へ倒れにくくなるように整えていった。


次に、角材を右脚へ戻す。


開き始めた外側のフレームへ荷重が集中しないよう、以前より少し内側へ寄せる。硬さの異なる革を間へ挟み、残った二本のフレームで力を分けて受けられる位置を探した。


布を一周巻くたび、角材の向きと膝の位置を確かめる。


一度締めた布を解き、革の位置を直す。


再び巻き、角材へ力を加えてもずれないことを確かめた。


最後の結び目を締めると、ネラは低い台を退けた。


「立って」


リゼは椅子から立ち上がった。


左脚へ体重を移し、角材の先を床へ置く。


一歩進む。


削り直された底が、床板へ平らに触れた。


もう一歩。


来たときより、角材が外側へ流れない。


固定布が強く引かれる幅も、わずかに小さくなっていた。


「以前より歩行しやすくなりました」


「だからって、歩く距離を増やさないでね」


「はい」


「次来るとき、信号をもう少し細かく計測する。少し時間がかかるつもりでいて」


「分かりました」


リゼは肩掛けを羽織った。


左腰には、自分の二百五十ミルが入った布の巾着。


右腰には、ロアンへ返す四クレドが入った革袋。


戸口へ向かう背中へ、ネラが声を掛けた。


「帰れそう?」


「はい」


「少しでも歩きにくくなったら戻ってきな。送るから」


「その場合の費用は、ロアンが支払うと伝えるよう言われています」


ネラは一度、目を瞬いた。


それから、困ったように口元を緩めた。


「そうかい」


リゼは工房を出た。


角材の先が石畳へ触れる。


来たときより短く、平らな音がした。


     *


昼をいくらか過ぎてから、リゼは宿舎へ戻った。


二〇三号室の扉は開いていた。


ロアンは机へ近郊路の図を広げ、椅子に座っている。依頼札の余白へ書き込みをしていた手を止め、階段を上がる音へ顔を向けた。


左足。


角材。


左足。


角材。


朝よりも、二つの音の間隔がわずかに短い。


廊下を進んできたリゼが、開いた扉の前へ立った。


「戻りました」


「ああ」


ロアンは椅子から立ち上がった。


最初にリゼの顔を見て、それから右脚へ視線を落とす。


「問題はなかったか」


「はい。角材の底を削り、固定位置を変更しています」


部屋へ入ってくる歩き方は、朝よりわずかに変わっていた。


角材が外へ流れにくくなり、床へ触れる音も以前より平らになっている。


「本体側のほうは」


「外殻に新しい破断はありません。残存フレームの一本が、以前より外側へ開いています」


ロアンの眉が寄った。


「直せないのか」


「無理に戻すと、折れる可能性があります。現在の位置で荷重を分散するよう調整してもらいました」


「このまま歩けるんだな」


「すぐに歩行できなくなる状態ではありません」


「すぐに、か」


ロアンは、それ以上の問いを続けなかった。


リゼは右腰の革袋を外し、机の上へ置いた。


「残金です」


ロアンが袋を持ち上げる。


中身を確かめた。


「いくら使った」


「一クレドです。検査と固定の調整を行いました」


「送ってもらう必要はなかったか」


「ありませんでした」


「そうか」


ロアンは革袋を衣類箱へ戻した。


「ネラは、歩くなとは言わなかったのか」


「歩行距離を増やさないよう言われました」


「仕事は」


「現在の勤務を続けることについては、メリダと相談します」


ロアンは一度、リゼの左腰に下がる巾着を見た。


何のための金なのか、もう一度聞き出そうかと迷った。工房に関係することはリゼの様子からわかっている。


だが、命じて聞き出そうとはしなかった。


「悪くなったら、黙ってるな」


「はい」


それだけを確認し、机の図へ戻る。


リゼは壁棚の前へ向かった。


左膝を床へつき、自分の巾着を外す。


中には二百五十ミルが残っていた。


八十クレドには、遠く足りない。


それでも、確実に貯めることのできる金額に思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。