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灰都の剣士と機械人形  作者: NOEU
2. 灯火の都
20/65

2-16. 同じ部屋

継暦六百二十七年 六月七日 夜


二階の廊下では、リゼが階段を上がった場所から動かずに待っていた。


通路を塞ぐほどではない。だが、自分から部屋へ向かう様子もなかった。


「来い」


「はい」


ロアンが歩き出すと、リゼもついてきた。


廊下の床は一階より古く、仮脚の音が少し大きく響いた。途中の部屋から話し声が止まり、扉の向こうで誰かが近づく気配がしたが、開くことはなかった。


ロアンは自分の部屋の前で鍵を開けた。


部屋は、朝に出たときと変わらない。


寝台、卓、椅子、荷物台。窓の鉄戸は半分ほど閉じられ、街灯の白い光が隙間から床へ差している。


一人で使うには十分な広さだった。二人になったからといって、急に狭くなったわけではない。それでも、扉の前にリゼが立っているだけで、部屋の中に空いていた場所がなくなったように見えた。


ロアンは携行箱を荷物台の下へ置き、桶を卓の脇へ下ろした。


リゼは扉の内側に立ったまま、動かなかった。


「身体を拭けと言われただろう」


「はい」


「やれ」


リゼは桶へ目を向けたが、すぐには動かなかった。


「使用してよい布は、ありますか」


ロアンは女将から渡された布を見た。


「これを使え」


「わかりました」


リゼは桶のそばへ移動した。


左脚で位置を確かめ、床へ腰を下ろそうとする。右脚は曲げられないため、角材を横へ逃がしながら身体を傾けた。


その動きを見て、ロアンは椅子を引いた。


「座れ」


リゼは動きを止めた。


「この椅子を使ってもよいのですか」


「ああ」


「わかりました」


椅子へ座り直し、古い布を水へ浸す。両手で絞り、まず右肘の周囲を拭き始めた。


人工皮膚の裂け目へ布を強く押しつけず、縁についた埃を少しずつ取り除いていく。露出した白い外殻も拭いたが、亀裂の奥へ水が入らないよう、布の湿り気を確かめながら進めていた。


ロアンは胸当てを外した。


棒剣も背から下ろし、壁の鉤へ掛ける。


胸当てを荷物台へ置くと、右胸から脇へ残った黒い染みが目に入った。洗浄と油入れを終えても、サンドワームの粘液が染み込んだ色だけは消えなかった。


リゼが布を動かす手を止めた。


淡く青白い目が、胸当てへ向いている。


「何だ」


ロアンが訊いた。


「その染みは、あのときのものですか」


「あのとき」


「砂海で、サンドワームに襲われたときです」


ロアンは胸当てを見た。


七番車が横倒しになり、砂の下から頭部が現れた。赤髪の機械人形が砕かれ、黒髪の機械人形が、自分と開いた口の間へ入った。


そのときには、まだ名前を知らなかった。


「そうだ」


「落ちなかったのですか」


「色だけ残った。使う分には問題ない」


「そうですか」


リゼはそれ以上聞かず、再び右肘を拭き始めた。


ロアンも胸当ての留め具へ目を落とした。


あのとき、一瞬でもリゼが間へ入らなければ、棒剣を抜く時間はなかった。何のためにそうしたのかは、いまでは分かっている。


護衛型の機械人形として、危険に近い人間を守った。


それだけだったのかもしれない。


それでも、自分を助けた機械人形が、価値を失った部品として解体される。そのことを聞いたとき、何かが胸の奥へ残った。


哀れだと思ったのか。腹が立ったのか。恩を返そうとしたのか。


どれも違うようで、どれも少しずつ含まれているようにも思えた。


商会に置いたままにするより、自分が買った方がましだという感覚があった。何がましなのかは、考えていなかった。


少なくとも倉庫で蹴られることはない。セルが尽きたあと、腕や脚を外されることもない。壊れれば状態を確かめ、直せるなら直す。


それを、よい扱いだと思っていたのかもしれない。


だが、機械人形は道具だった。


人の形をし、人の言葉を話す。それでも人間ではなく、喜んだり、悲しんだりするものだとは限らない。


武器も防具も、旅道具も、壊れれば直す。直せなければ捨てる。直せる場合でも、掛かる金や手間が、その道具の価値に見合わなければ直さない。まだ使える部品を外し、残りを捨てることもある。


それは間違った扱いではなかった。


ロアン自身も、欠けた刃や破れた革を、すべて直してきたわけではない。


では、リゼを分解せずに残すことが、なぜよい扱いになるのか。


椅子へ座らせ、汚れを拭かせ、セルを買い与える。それを必要としているのか。必要としていないものを与えたところで、扱いがよくなるわけではない。


リゼの顔には、何も浮かんでいなかった。


染みの残った胸当てを見ても、声の調子は変わらない。倉庫を出たときも、商会の管理から外れたと告げられたときも、喜びも拒絶も示さなかった。


ロアンには、それが当然のことのようにも思えた。


道具は、置き場所や持ち主が変わったことを喜ばない。


それでも、部品へ分けられると聞いたとき、放っておくことができなかった。


その違いを、言葉にはできなかった。


リゼは右肘の次に腕、脇腹、左膝を拭いていた。手の届く範囲を順に清掃し、作業着の表面についた埃も布で軽く払っていく。


髪には触れなかった。


「髪は拭かないのか」


ロアンが尋ねると、リゼは手を止めた。


「放熱に問題は出ていません」


「そういうことじゃない。汚れているなら拭け」


「はい」


リゼは布を洗い直し、強く絞った。


毛先から少しずつ挟むように拭いていく。砂海と倉庫の埃が布へ移り、水がさらに濁った。


ロアンは胸当てを荷物台へ置き、留め具と縫い目を確かめた。昨日油を入れた革は乾いており、袋へ収めても問題なさそうだった。


リゼは最後に、右脚の角材へ布を移した。先端の革についた砂を拭い、固定に使った布へ水が触れないよう、木の表面だけを清掃する。


「夜は外した方がいいのか」


ロアンが訊いた。


「仮脚の木ですか」


「ああ」


「必要はありません。固定に緩みがなく、残ったフレームへの圧迫もないと思います」


ロアンは角材の固定部を見た。


動力商で確かめられたあとも、布はずれていない。


「自分で締め直せるのか」


「手が届くのでできると思います。現在の巻き方を同じ強さで再現できるかは分かりません」


「緩んだら言え」


「わかりました」


リゼは角材を拭き終え、布を桶の縁へ掛けた。


水は薄い灰色に濁っていた。


「ほかにすることは」


ロアンが訊いた。


「命令をお願いします」


ロアンは答えなかった。


部屋へ連れてきたあとのことを、何も考えていなかった。


荷を持たせる必要はない。掃除をさせる理由もなく、食事を出す必要もない。寝台も使わない。


立って待てと言えば、朝まで立っているのだろう。座れと言えば、同じ場所へ座り続けるかもしれない。何もするなと言えば、何をしてよいのか分からないまま止まる。


商会よりよく扱える。


心のどこかにあったらしいその感覚は、宿の部屋へ連れてきた途端、形を失っていた。


蹴らない。壊れるまで働かせない。セルが尽きる前に交換する。分解しない。


どれも、しないことばかりだった。


では、何をすればよいのか。何を与えれば、扱いがよくなるのか。


そもそも喜怒哀楽を示さない機械人形に、扱いの良し悪しなどあるのか。


ロアンには分からなかった。


ロアンは寝台へ腰を下ろした。


リゼは清掃を終え、椅子から立ち上がると、そのまま卓の脇へ立った。


「睡眠は必要ないと言ったな」


「はい」


「休む必要は」


リゼはわずかに間を置いた。


「長時間の動作を行わない状態では、電力消費と各部への負荷が低下します」


「座っていた方がいいのか」


「立っているよりは、低下します」


「なら、座れ」


「はい」


リゼは、先ほど使った椅子へ再び腰を下ろした。


ロアンは卓を見た。


部屋に椅子は一脚しかない。今までは、食事を持ち込んだときや装備を直すとき、自分が使っていた。


必要になれば退かせればいい。


それだけのことだった。


だが、その程度のことまで言葉にしなければ、リゼは判断しないらしい。


「そこは使っていい」


ロアンが言った。


リゼは椅子へ座ったまま、彼を見た。


「この椅子ですか」


「ああ。俺が使うときは言う」


「わかりました」


「水も、必要なら使え。足りなければ言え」


「はい」


ロアンは旅袋へ目を向けた。


水袋、薬、火口、縄、革紐、予備の布。どれも街道へ持っていくためのものだった。


「旅袋の中は、勝手に触るな。ただし、必要なものがあれば言え」


「わかりました」


「自分の身体に異常があれば、それも言え」


「異常の範囲を指定してください」


ロアンは顔を上げた。


「動きにくい。今までなかった音がする。裂け目や亀裂が広がった。セルの残りが減った。そういうものだ」


「わかりました」


「作業を続けられるうちは問題ないと判断するな」


リゼは数秒、ロアンを見た。


「わかりました」


商会では、作業を続けられるかぎり使われていた。


右肘が裂けても、仮脚の布が緩んでも、自分から報告しなかった。命じられた仕事を続けられるなら、異常ではないと判断していたのかもしれない。


ロアンは窓へ目を向けた。


白い街灯の光が、鉄戸の隙間から差している。


「窓と扉は、勝手に開けるな。部屋の外へ出るときは、俺に言え」


「はい」


「俺が寝ているあいだは――」


そこで言葉が止まった。


何をさせるべきか分からなかった。椅子へ座らせたままにするのか。異常が起きたときだけ起こさせるのか。


火事や侵入者があれば、リゼの方が先に気づくだろう。


「俺が寝ているあいだは、何をする」


リゼはわずかに間を置いた。


「周囲を確認します。所有者に危険が及ぶ可能性がある場合は、起こします」


「起こすだけか」


「時間に余裕がない場合は、安全を確保するために行動します」


砂海で、サンドワームとの間へ入ったときと同じだった。


命じられるのを待たず、危険へ近い人間を守る。それはリゼに備わった役割の一つだった。


「どこまでを危険と判断する」


「火災、侵入、建物の損壊、武器を持った者の接近、所有者への攻撃が予測される場合です」


「ほかの客が廊下を歩く音は」


「危険とは判断しません」


「扉を叩いた場合は」


「通常の訪問であれば、起こしません」


「開けようとしたら」


「施錠された扉を外部から開けようとする場合は、起こします。急を要すると判断すれば、先に阻止します」


ロアンは扉を見た。


どの程度の力で阻止するのかまでは、聞かない方がよい気がした。


「相手を傷つける必要がなければ、傷つけるな。まず俺を起こせ。間に合わないときだけ動け」


「わかりました」


ロアンは額へ手を当てた。


危険から守れと教える必要はなかった。


何もしなければ、リゼは自分で判断して動く。必要だったのは、何をさせるかではなく、どこまでさせてよいかを決めることだった。


一つ範囲を定めるたびに、その外側が現れる。


命令が足りなければ動かないのではない。曖昧なままなら、リゼは自分に与えられた役割に従って判断する。


その結果について責任を負うのは、いまはロアンだった。


武器や防具も、道具には違いない。


だが、それらが持ち主の身を守るため、自分で状況を判断することはない。許された範囲を問い返すことも、命令の意味を確かめることもなかった。


リゼは道具として売られ、ロアンも金を払って買った。


それでも、部屋の隅へ置いておけば済むものではなかった。


しばらく沈黙が続いた。


リゼは椅子へ座ったまま、両手を膝へ置いていた。視線はロアンの方へ向いている。


「私は、何をすればよいのでしょうか」


ロアンは顔を上げた。


「何もしなくていい」


リゼはすぐには答えなかった。


「何もしないのであれば、私は何のために必要なのでしょうか」


ロアンには答えがなかった。


「必要ではないものに、二百四十クレドを支払ったのですか」


「そうなるのかもしれん」


「理由が分かりません」


「俺もだ」


リゼは膝の上へ置いた両手を見た。


「私は、砂海で右脚を失いました」


「ああ」


「仮脚を取りつけられなければ、あの場所から移動できませんでした。セルの残量がなくなれば停止し、そのあと誰かに発見されなければ、再び動くこともなかったと思います」


声の調子は変わらなかった。


「その場合、私はあの場所に残ったままでした」


ロアンは何も言わなかった。


砂に半ば埋もれ、やがてセルが尽きる。身体はそこで止まり、次に誰かが見つけて新しいセルを入れないかぎり、同じ場所に留まり続ける。


人間の死とは違う。


それでも、リゼはそれを、自分が動かなくなった未来として知っていた。


「あなたが仮脚を取りつけたため、私はベルグラートまで歩きました。倉庫でも作業を続けることができました」


「それでよかったのか」


「分かりません」


リゼは顔を上げた。


「ただ、分解されるまで作業を続けるものだと考えていました」


「分解されるのが嫌だったのか」


リゼは少し間を置いた。


「分かりません」


その答えは、嘘には聞こえなかった。


ロアンは胸当ての黒い染みへ目を落とした。


「商会の判断は、間違っていない」


リゼは彼を見た。


「分解することですか」


「ああ。使えないものを残しておく理由はない。使える部品があるなら外して、ほかへ回す。それが普通だ」


「はい」


リゼも、その判断を当然のものとして受け入れているようだった。


「では、なぜ購入したのですか」


ロアンには答えられなかった。


分解されること自体が気に入らなかったわけではない。壊れた道具を捨て、残った部品を使うことに、憤る理由などなかった。


それでも、それがリゼのことだと知ったとき、そのままにしておくことができなかった。


「おまえが分解されると聞いて、買えるか訊いた」


「なぜですか」


「分からん」


「ほかに理由があるのですか」


「あるのかもしれん」


「それは何ですか」


「分からん」


リゼはしばらく黙っていた。


「分からないまま、購入したのですか」


「ああ」


「私は、役に立たなくてもよいのですか」


ロアンはすぐには答えなかった。


役に立たない道具を持ち続ける理由など、本来はなかった。


武器も防具も、旅道具も、用途があるから持つ。壊れて使えなくなれば直し、直す価値がなければ捨てる。


だが、リゼについては、その判断ができなかった。


「少なくとも、いまはそれでいい」


「いま、ですか」


「ああ。先のことは、先で決める」


「それまでは、ここにいてよいのですか」


「そうだ」


リゼはロアンを見た。


表情は変わらなかった。


「わかりました」


それだけを答えた。


ロアンは外套を脱ぎ、寝台の端へ置いた。胸当てと棒剣の位置を確かめ、短刀だけは枕元へ残す。


一階へ降りて夕食を取るつもりだった。


ここで待てと言えばいい。


それだけのことだった。


ロアンは立ち上がった。


「食事へ行く」


「はい」


「ここで待て。部屋から出るな」


「わかりました」


扉へ向かいかけて、足を止める。


「ただし、火が出たら外へ出ろ。建物が崩れそうなときもだ」


「はい」


「戻るまで、ここにいろ」


リゼは彼を見た。


「いつまででしょうか」


「食事を終えて戻るまでだ。そんなに長くはかからない」


「わかりました」


ロアンは部屋を出て階下へ降り、広間の空いた卓へ座った。


夕食を頼むと、女将が煮込みとパンを運んできた。卓へ置いたあと、階段の上を一度見た。


「一人で置いてきたのかい」


「ああ」


「大丈夫なのかい」


「何がだ」


「勝手に動いたりしないのかって聞いてるんだよ」


「部屋にいるよう言った」


女将は納得したような、していないような顔をした。


「ずいぶん汚れていただろう」


「ああ」


「水は足りたかい」


「ああ」


「汚れた水は」


「俺が下ろす」


「ならいい」


女将は厨房へ戻った。


ロアンは食事を始めた。


広間にいた客たちは、機械人形について何も聞かなかった。ただ、ときおり階段へ視線を向ける者はいた。


二階から物音はしない。


角材が床を打つ音もなかった。


食事を終えると、ロアンは部屋へ戻った。


扉を開ける。


リゼは椅子へ座っていた。


ロアンが出たときと同じ姿勢だった。両手を膝へ置き、淡く青白い目を扉へ向けている。


「何かあったか」


「ありません」


「ずっとそのままだったのか」


「はい」


命令どおりだった。


先ほど、ここにいてよいと告げた。


それがリゼにとって何を意味したのか、ロアンには分からない。表情も姿勢も、出ていく前と変わっていなかった。


ロアンは桶を持ち上げた。


濁った水が揺れる。


「もう使わないな、これを捨ててくる」


「わかりました」


桶と布を女将へ返してから、もう一度部屋へ戻った。


リゼは同じ場所に座っていた。


ロアンは扉へ木栓を掛け、窓の鉄戸を少し狭めた。


「夜はそこにいろ」


「はい」


ロアンは寝台へ横になった。


壁際の椅子にはリゼが座っている。


誰かがいる状態で眠ることは、商隊の野営なら珍しくなかった。宿駅でも、護衛同士で部屋を使うことはある。


それでも、今夜は違った。


相手が機械人形だからではない。


明日以降も、そこにいることが決まっているからだった。


短いあいだ同じ場所にいて、期限が来れば別の仕事へ戻る相手ではない。


自分が金を払い、商会から引き取り、この先へ連れていくことを選んだ。


何のためにそうしたのかは、まだ分からなかった。


「灯りは」


リゼが言った。


ロアンは目を開けた。


「何だ」


「消しますか」


卓の上の小さな油灯が、まだ点いている。


「暗くても見えるのか」


「見えます」


「なら消せ」


リゼは椅子から立ち上がった。


左足を出し、仮脚を運んで卓へ近づく。油灯の覆いを閉じると、部屋が暗くなった。


窓から入る街灯の白い光だけが、床と壁の一部を照らしている。


リゼは椅子へ戻った。


仮脚が床へ触れる音が一度した。


そのあと、何も聞こえなくなった。


ロアンは目を閉じた。


休む場所、使ってよい水、触れてよいもの、部屋を出てよい場合、異常を伝えること。危険に対して、どこまで動いてよいか。


決めたのは、それだけだった。


何に使うかも分からないまま買い、自分の部屋へ連れてきた。


商会よりは、ましに扱えると思っていたのかもしれない。


だが、何をもって扱いがよいとするのかは分からなかった。


壊れれば直す。直せなければ捨てる。直せても、掛かる金や労力に見合わなければ捨てる。


それが道具の扱いだった。


リゼも道具なら、商会の判断は間違っていない。


それでも、同じように扱うことができなかった。


理由はまだ、言葉にならなかった。


眠りへ落ちる直前、椅子のある方へ目を向ける。


暗がりの中に、淡く青白い目が二つ見えた。


こちらを見ているのか、ただ前を向いているだけなのかは分からない。


「休め」


ロアンは言った。


リゼは小さく答えた。


「はい」


それが何を意味する言葉なのか、ロアン自身にも分からなかった。

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