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超越お姉さんに愛を伝えたい。  作者: 鳥木野 望


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8話 恐怖の宿屋

大通りには宿屋の数も多く、それこそ城門近くにも一件あったが、僕は大通りを進み続け中央区にある役所前広場に合流する手前の宿を訪ねることにした。

これは僕がこの世界に来る前に蓄えた書物の知識の中に、「巨大都市に於いては出来るだけ城門より離れた場所の宿を探すべし。」という旅のアドバイスの文言があったからで、僕はせっかくなので、その内容が真を得ているか試そうと思ったのだ。どうせ、選ぶ基準も前評判も知らないのだし、いくつかの宿を周り価格帯やサービスから比較検討するほどの熱量も無かった。

極彩亭ハルという看板が掲げられていて、店の外観も含めて東方の様式が見て取れる建物だった。

からんからん、と聞きなれたドアベルが鳴り、正面のフロントカウンターに座っていた女性が立ち上がって、キビキビとした動きで僕のそばまで歩いてきた。

「いらっしゃいませ、ご宿泊ですか?レストランのご利用ですか?」

「あ、はい。あの宿泊を。ふ、二日間。」

僕は少し返答に詰まってしまった。それもこれも、この宿屋の雰囲気がとても洗練していて、僕の事をアテンドしてくれている彼女は所作が流れるように淀みなく、何というか上品な雰囲気を感じて、もしかしたら知らずに高級宿を選んでしまったのかと、内心ドキドキしていたのだ。フロントの空間は木造の建築で年季が入っているが綺麗に磨かれ、艶を出すための樹脂油を定期的に塗ってあるようだった。調度品やランプが置かれたテーブルが等間隔に壁際に設置され、壁には写実的な世界各地の美しい景色の絵画がいくつも飾られている。洗練された空間には言葉を失った。それに、どこからか緩やかなヴァイオリンの音楽が聞こえてきている。これはもちろん誰かがどこかで演奏している訳では無いだろう。きっとそういう遺物関連の道具を使用しているのだろう。

「それでは、受付こちらになります。」

僕は自分でも動きがギクシャクしてしまっているのを理解して、なるべく案内してくれる女性の方を見ないようにしていた。フロントには入ってきたときには居なかった、別の女性が立っていた

「では、受付いたします。当宿の宿泊プランは二種類です。当宿の全十室のお部屋の中から空いている部屋の中で任意の部屋を選択することが出来るプラン。部屋の選択がお客様側では出来ないプランになります。補足ですがどちらもフルサービスの内容となっています。施設内の大浴場のご利用、カフェスペースでの軽食、コーヒーのご利用、三食の提供。全て追加料金なしでご利用できます。どちらのご宿泊プランになさいますか?」

「あ、部屋は適当で大丈夫です。それよりも、一泊おいくらくらいなのでしょうか?」

「はい、かしこまりました。部屋のおまかせのお客様は一泊三千イエンになります。それで、部屋についてなのですが、当ホテルは特殊な形式をとっておりまして、当宿のオーナーがこの芸術都市で活動する画家志望の人達に部屋のデザインを頼んで作ったので、それぞれお部屋によってかなりの個性的なデザインのお部屋が多いんです。なので、当ホテルとしましてはお部屋のタイプをお任せにしていただいたお客様には割引価格でのご提供になっています。そのため。もし部屋を見て泊まれないと感じても、他の部屋に変更することは出来ませんので、キャンセルという形になってしまいます。キャンセルとなったお客様には本日中のご予約、受付、ご宿泊はお断りしております。こちらの注意事項に了解が頂けましたら、こちらの宿泊の確認書面にサインをお願いします。」

なるほど、つまりお部屋を選んで決める形にすると、必ずハズレの部屋、不人気な部屋があって、三食に東方の文化の大浴場の利用までついて、この安宿価格帯の理由とは、十中八九そのハズレの部屋に案内されるからなのだろう。

しかし、僕はそれも又芸術の都らしくて面白いと感じているし、何より他の要素が魅力的すぎる。直ぐにその書面へ目を移してざっと内容を精査してサインをした。

「それでは、お部屋に案内いたします。お荷物お持ちいたします。」

「えっと、これは何をモチーフにしている部屋なのですか?」

一言で表すなら悍ましい部屋だった。想像を絶していた。壁や床、調度品、家具に至るまですべてが真っ黒に塗りつぶされていた。そしてそれよりも恐ろしいのは、その黒く塗られた壁や床に赤と青の血管のようなものが張り巡らされていて、天井には巨大な二つの赤い目が取り付けられていた。そんな今にも脈動をしそうな部屋。その一角にはマネキンが置かれていて、布製の床に面する足から全身に向かって部屋の血管と同じものが巡っていた。どうやら、ベッドはその変な脈の意匠は付けられていないようだが、それ以外は本当に全てに張り巡らされているのが確認できた、ご丁寧に窓には暗い色の色付きガラスをはめ込んであり、そこにも同じ意匠が巡っていた。

これは想像以上だ。正直今すぐにもキャンセルしたい。

「これは、人食い部屋っていう架空の怪物がモチーフですね。そこに居ますマネキンが最初の犠牲者なのかもしれないと、オーナーが考察していました。この部屋を担当した芸術家志望の方は完成と共に連絡が途絶えてしまって、作品としての詳しい説明が出来ないのです。小話ですが、実は完成当初はもっとすごい部屋になっていましたよ。そこにおいてある、取り込まれたマネキンが、他にもトイレに座っている状態のモノそこの椅子に座った状態のモノとか合計で六個も置かれていて、さすがに利用上で支障がでるようなものはどかせてもらったんです。」

これは、どうしようか。僕は少し冷静に考える。僕がこの部屋に宿泊することになるのは二日間だけど、起きている間は、観光とある探し物をする予定で、部屋は殆ど寝るためだけのものとして利用になるだろう。そう考えればそこまで苦ではないだろう。なによりどれだけリアルな悍ましさを有していても作りものの怖さだ、きっと慣れれば怖くなくなるだろう。

僕は改めて案内してくれた従業員に感謝を伝えて部屋の鍵と荷物を受け取り、明日、明後日の朝食の用意を頼んだ。


お読みいただきありがとうございます。


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