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超越お姉さんに愛を伝えたい。  作者: 鳥木野 望


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3話 影の試練

・・・なんだか村の方に近づくにつれて人の声が騒がしくなってきた。なにかやっているのだろうか、僕が今朝見て回った時はまだ村を歩く人も少なかった為、もしかしたら本来のこの村の賑わいというのはこのくらい騒がしい物なのかもしれないが、村に近づくにつれてその人の声の質感に違和感を覚え始める。言葉に表せない違和感、それが胸に残り不安がこみあげてくる。隣を見ると、歩幅を揃えて僕の横を歩いている、ラータマの姿が見えるが、彼女はこの不穏な空気に気づいていないようだった。

村の中に入るとその喧騒の正体が直ぐに判明した。村から入り、真っすぐ奥まで進むと開けた広場がある。そこに、大きな荷台を積んだ馬車が二台広場に止まっていた。

「おお、商人か珍しいかも。フルイの村って辺境だからね。なかなか見られないよ。」

僕達は昼食を後回しにして広場に集まる人たちの方へ向かって歩いた。それというのも、ラータマさんが気になると言い出したことからだった。

広場へ歩いていくと村へ入る前に感じた違和感の正体が分かった。馬車の荷台の部分には恐らく商品の見本だろうか様々な民芸品がぶら下がって、そのどれもが見たことのない品々で興味のそそられるものだった。泊った二台の馬車の前には一人の小太りの商人らしき人物が立っていて、身振り手振りを加えながら客引きの口上を高らかに述べていた。

しかし、広場に集まった人々の多くはそんな馬車と商人を遠巻きから様子を見ているようで、そこかしこから先ほどの人の話声ざわめきが聞こえてきた。なぜ、誰も近づかないのか、なぜそれほど商人を警戒した様子なのか僕には理解できなかったが、それが異常な光景なのは理解できた。これほど辺境の土地で、ラータマ曰く村には商人があまり訪れないらしく、外の名物を手にする貴重な機会のはずだ。僕はラータマに目配せして広場の入り口にある木の陰に身を隠して様子を見ることにした。

「イア君、これってもしかしたらやばいかもよ」

小声でラータマがそんな風に話しかけてきたとき、商人を遠巻きで見ていた人並の中から数人の男が歩み出てきた。

「村長の息子に農家のおじさん。それからレストランの店主にゼン先生もいるね。村長の息子は長剣、農家のおじさんは大きい草刈り鎌、ゼン先生は物干し竿?大丈夫かな?レストランの店主は魚捌く時にいつも使っている長い包丁だね。全員が武装しているよ。」

「おい!そこの行商人。神王国の許可書は持っているのか!」

村長の息子らしい壮年の男が声を張り上げたのが聞こえてきた。その声はとても威圧的でこの穏やかだった村の中で更に現状の違和感を強めていた。しかし、商人は問いかけには一切答える様子が無く、変わらず客引きの口上を鷹揚に述べていた。

「ラータマさん、もしかしてあれは行商人に扮した盗賊っていう事はありませんか?なんだか不穏な感じがします」

僕は先ほどよりも更に声を潜めて彼女に耳打ちした。

「ああ、違うよ。恐らくこれは影の試練だね。私も見るのは初めてだけど、本当に存在したんだね。ほら、よく見て商人の足元に影が無いでしょう?イア君は影の試練って知っているかな?」

確かによく見るとラータマさんの言う通り、商人の足元には影が存在しなかった。それどころか今更になって気づいたが、あれほど大きな馬車にも影らしいものが見当たらなかった。信じられないが本当に影の試練が始まるようだった。試練とは神王様から与えられる祝福を手にするための物で、試練管理局により人生に三度だけ与えられ、その試練の内容は個人でかなり差があり、与えられる祝福もその人の求める内容になる、例えば商人や金銭欲の強い者には算術や目利きなどの祝福が与えられ、冒険者や力を求める者には剣術や疑似魔術などの祝福が与えられる。しかし影の試練は、全ての人が人生で与えられる三度の試練とは別枠の試練だ、これは起きること自体が極稀で、個人に与えられる試練とは違い、遭遇した者の全ての人に試練を受ける資格が与えられる。未開拓地などの怪物が潜む領域で起こる試練だと言われていて、遭遇するのも大抵はそこへ向かう冒険者という職業の者達だけで、このように村の中に入り込み、人の形を取っての試練など聞いたことが無かった。

・・・影の試練の開始を宣告。対象者はこの村中にいる、成人済みの者。範囲は村の全域。現時点での勇者は四人。愚かで醜い被害者は二十人。試練対象外未成年は八人。警告、影の試練で命を奪われた者は影を失う。生き残った勇者には祝福を、生き残った被害者には粗品を与える。対象者は試練終了まで村外に出ることは出来ない。繰り返す・・・。

商人の声ではないどこか平坦な声質の声が聞こえてきた、それと同時に商人の後ろに位置する、馬車の荷台から、ぞろぞろと身なりが粗雑で一見して荒くれ者と分かる、武装をした男どもが降りてきた。そうして、広場に集まっていた人たちが一目散に逃げだしていった。恐らく先ほどのアナウンスで被害者と言われた者達だったのだろう。これから何が起こるのか何となく理解が出来た。影の試練は試練に打ち勝てなければ、対象者全員が死ぬまで続くらしい。そうして、試練終了後、影の試練に負けた人たちは生き返り影を奪われる。影を奪われたからと言って別に実害があるわけでは無い、ただ影が無くなると冒険者の中では敗北者として少し馬鹿にされるような風潮はあるけれど、ただそれだけだ。

「イア君は未成年だよね?三つの試練と違って、影の試練は年齢制限があって、未成年者には与えられないから、多分巻き込まれることはないと思うけど、状況によってはかなりショッキングな光景になるから、どこかの家で匿ってもらうか、しばらく村の外に避難した方がいいかも」

既に勇者役に選ばれた四人の村人と十五人ほどの荒くれ者たちの衝突は始まっていた。ラータマさんはこの異常事態にもあまり焦りを見せておらず、逃げ出す者達を尻目に冷静に広場の様子を伺っていた。恐らく、先ほど与えられた勇者の役割の四人が死ねば、次は被害者役の人達の番なのだろう。僕は、ゼン先生や今も家の中で隠れている人たちのことが心配で仕方なかった。しかし、試練は対象外の者の介入を一切認められず、触れる事すら出来ないというのは分かっていたので、僕は戦いの行方を見守ることにした。

「大丈夫です、僕は十五歳です。未成年と言っても、後一か月あまりで成人ですし、それに僕は冒険者を目指しているので、影の試練を見られるのは貴重な機会なので見ておきたいのです。ラータマさんこそ、逃げなくて大丈夫なんですか?僕は対象外ですけど、ラータマさんは被害者ですよね?」

「ん?どうせ、村の外には出られないし、逃げても勇者が負けたら被害者は皆殺しだから意味ないよ。それより隠れて試練長引くと私の今日の予定が狂っちゃうから。」

ラータマさんは、会った時から少し変わった雰囲気の人だったが、ここまで肝の据わった人だとは思わなかった。影の試練の言うところの、愚かで醜い被害者というのは彼女にあたっては、表現が不適切な気がした。

「ほら、イア君。見てみて、凄いよ。村長が帯剣していたから、冒険者の資格を持っているのは分かったけれど、彼、試練の克服者かもしれない。」

ラータマの興奮する理由も分かる。僕も今目の前で起きていることを理解するのには彼女と同じ結論になる。十五人の男たちは油断せずに固まり、四人の勇者と戦っている。それは奇妙な光景だった。人数差も武装も含めて、戦力差は絶望的だったが、勇者役を担った人たちは素晴らしい連携を見せて、多人数を相手に攻撃をいなしながら、お互いがお互いの危機を的確にフォローしながら、致命傷を受けずに戦い続けていた。農家のおじさんは器用に草刈り鎌を振り回して敵の首を刈り取り、レストラン店主は二本の包丁を器用に使い戦い、確実な一撃を与えながら敵を損耗させている。ゼン先生も物干し竿で敵の喉、腹、股間を狙い、風を切るような鋭い突きを放っていた。まるで、噂に聞く一流の冒険者のような動きだ。けれど、彼らの中で恐らく冒険者資格を持ち、試練の克服者として格別の力を有しているのは恐らく村長の息子だ。戦闘態勢に移った直後に彼の身体が一瞬の光を放ち、次の瞬間には四人の勇者の頭上に神王の紋章が現れた。それは試練から得られる祝福の力の一つで、詳しいことは本人にしか分からないが、仲間を奮起させ秘めた力を引き出して戦う。巷ではリーダー系の祝福と言われている部類のものだろうことが分かった。徐々に減っていく影の荒くれ者達、しかし、例の親玉とみられる商人は戦いには参加せずに攻撃の届かない馬車の上に立ち、無表情で戦況を見守っていた。

・・・やがて状況は決した。全ての影の荒くれ者が地に伏して、息のある者は居なくなった。勇者側は既に克服者共に全員が大きな傷は負っていない。しかし彼らの息は上がっていて、疲労が見て取れた。

「勇者の皆様、おめでとうございます。そして、隠れていた被害者の皆様は運がよかったですね。私は今回の影の試練の監視者です。貴方たちの影の試練は終了いたしました。祝福は後程、与えられます。そして申し訳ございませんが、今回の影の試練は特殊な形となります。影の主催者よりもう一度アナウンスがあります。もうしばらくお待ちください。」

監視者を名乗った商人が恭しいお辞儀をして、淡々と告げた。

「なんだ、それは!試練は終わったなら開放しろ。村の住人を巻き込んでの試練はあまりにも横暴なやり方だ!今回の件は試練管理局には詳しい説明を求める」

村長の息子が商人の下まで詰め寄った。その様子は見ているだけで気圧されるほどの気迫があった。

「お気持ちお察し致します。しかし、今回の影の試練は確かに通常通り一度、試験管理局を通しては居りますが、主催者が別にいます。その為、詳しい事はお話出来ません。けれど、これは私の独断で機密情報を漏洩いたしますが、今回の影の試練は勇者役の適性能力値よりも下回るようになっていました。勇者全員が祝福に村民全員に粗品まであります。死亡者ゼロの為、影の接収はゼロ。そこまで激怒なさらなくてもよいのでは?」

これは、異常な光景だった。影の試練に監視者という存在がいるという事実は確認されていないはずだ。それに、そもそも始まりからおかしいことだらけだった本来、影の試練とは困難に立ち向かう人間に対して与えられる。こんな平和な村の中に影の試練を与える必然性はどこにある。僕が身の毛のよだつ悪寒を覚えたその直後だった。村にまたどこからか聞こえてくる平坦な声が響いてきた。

・・・影の試練の開始を宣告。対象者は村外より訪れた者達。勇者はイアルージュ、被害者はラータマ。傍観者は村民全員。告知、傍観者は影の試練の影響を受けない。特殊警告、傍観者はこの広場内に立ち入ることは禁止する。

警告、影の試練で命を奪われた者は影を失う。生き残った勇者には祝福を、生き残った被害者には粗品を、見守った傍観者には粗品を与える。対象者は試練終了まで村外に出ることは出来ない。繰り返す・・・。

「「え?」」


第一章までは毎日更新予定です。続きが気になるなと思ったらブックマークを、そして☆をください! 

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