11話
僕は彼女との話している言葉を一言一句聞き逃さないように注意しながら、同時に浮かび上がる疑問に対する思考を繰り返していたが、そんな時、彼女の最後にいった“立ち去って”という言葉が聞こえてきて、同時に世界が暗転した。瞬きをゆっくり行うくらいの感覚で意識が戻った時には既にそこは店の外だった。そうして先ほどの店を振り返るとそこには変わらずに先ほどの書店があったが、もうすでにそこからは先ほど感じた遺物の気配は無くなっていた。僕は再びあの店に踏み入れるか迷ったが、その場を離れることにした。
帰路に着く間もずっと先ほどの事を考えていた。まずはあの書店に入ってから彼女と話すまでずっと感じていた違和感の正体だ。僕は彼女を目の前にしたときに思ったのだ、“これは使えない”と、最初はどういうことか自分でもその意味が分からなかったけれど、僕はその感覚を思い出した。それは僕が故郷の村で毎日のように使っていたいくつかの便利な遺物、それを目の前にした時と同じなのだ。遺物を前にするとき、それがどれだけ慣れ親しんだ物であっても、自分の中で緊張感が生まれるのだ。妙な存在感が常にあり、使うときのは、どこからか視線を感じるような感覚になる。
そうして店舗に入った時の感覚と彼女を目の前にした時の感覚と“使えない”という思考は繋がって、初めて僕はつい先日受け取った祝福の事を思い出すことになった。あの祝福の効果の一つ、歪み遣いという能力は遺物に関する内容だったはずだ。それが意味することが今回の彼女とこの家に対する感覚の正体だと気づいたのだ。僕は気づいてからは確信に近い気持ちで彼女を問うことになった。
しかし、その結果は僕の頭で処理できるほど簡単な事では無かった。僕は至極簡単な話と認識していた、遺物は国が厳重に管理しているので扱うのも手に入れるのもかなり厳しい筈だけれど、このような大都市では遺物に店番や接客を行わせるような奇抜なお店もあるのだとそう思ったのだ。
彼女の話を真に受けるとすれば、彼女は僕の事を最初から知っているみたいで、それに加えてあのフルイの村で起きた異常な影の試練についても関係しているようだった。そこまできたらもう今日この場所で、彼女があの書店の中で待ち構えていたのは必然の出来事に感じた。
僕の目的を知っていて、祝福を与える立場の人間で、まるで未来でも読んでいるかのような先回りで僕を待ち受けていた彼女の正体とは?この世界に来てからのいくつかの出来事が点となり繋がりそうな予感を孕んでいたが、それは結局のところ彼女の言うように今、僕が考えるべきことではないのだろう。そんな気がした。僕は次に彼女に出会ったらどうしようか考えた、せっかくなので何食わぬ顔で僕に話しかけようとする彼女に渾身のキメ顔で探偵役として真相の答え合わせでも初めてやろうと思う。そうしたらきっと彼女は笑って僕の素っ頓狂な行いを諫めるのだろう。そうであればいいなと、僕は思ったのだった。
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